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映画評

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「接吻」 (ランブルフィッシュ)

凶悪犯への愛 印象強烈

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ヒロイン・京子(小池栄子)は、愛の究極へと突き進む

 孤独な人間が愛の究極へと突き進む様子を描いた圧倒的な映画である。

 ヒロインの京子(小池栄子)が思いを寄せるのは、不可解な凶悪犯罪を犯した坂口(豊川悦司)という男。一面識もない。だが、テレビで坂口を見た瞬間から夢中になる。彼が自分と同じように、誰からも顧みられず、孤独を生きてきた同類だと見てとったから。

 最初はあっけにとられるだろう。彼女は何をしているのかと。が、彼女は、獄中の坂口との距離を確実に縮め、恋する女の気配をまとい出す。何を言われようと、その存在感は最強。何人も寄せ付けぬ愛の世界を築き、傍観者だった弁護士・長谷川(仲村トオル)も巻き込んでいく。

 今の社会は、理解しがたい事件を、心の闇のひと言で説明してしまいがちだ。その風潮は物語世界をも侵食している。だが、万田邦敏監督と夫人の万田珠実による脚本は、闇などないと言うかのように、人間の内面へと深く静かに分け入る。そして出来たのが、極上の恋愛映画にしてサスペンスでもあるこの作品。

 孤独と愛のうつし身を演じた、小池の素晴らしい姿は必見。そして、表題にもなっている接吻(せっぷん)の場面からみなぎる生の咆哮(ほうこう)を感じてほしい。人間という生き物を描くことに成功した、昨今まれな一本だ。1時間48分。渋谷・ユーロスペース。(恩田泰子)

2008年3月7日  読売新聞)
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