「ポストマン」 (ナガシマ企画、ザナドゥーほか)家族愛も配達も熱くこの時期に、なぜ郵便局員を主人公に?と思ったが、映画を見たら、疑問は氷解した。自転車を懸命にこぎ、手紙に込めた人々の思いを伝える“ポストマン”の熱っぽい存在は、クールなネット社会と対極にある。手軽さに違和感を抱く人々を勇気づける、数少ない職業の一つなのだろう。 房総半島の町の郵便局員、龍兵は赤い自転車での配達にこだわる堅物。合理的に物事を進めようとする同僚と反目しあうこともあるが、実直な人柄、正確な仕事ぶりで、周囲の信頼は厚い。龍兵を演じるのは長嶋一茂。素のキャラクターを生かし、自然にぼくとつさを醸し出す。にじみ出る無骨さに好感が持てる。 龍兵は家庭でも頑固さを貫く。妻(大塚寧々)に先立たれ、二人の子供を一人で育てるが、娘(北乃きい)が寮のある高校への進学を希望する。家族のきずなを大事にする龍兵は当然反対。この家族のやり取りに、龍兵と亡き妻の秘話が絡み、物語は膨らんでいく。 しかし、何より印象深いのは、長嶋の自転車のこぎっぷり。狭い路地を走りぬけ、トラックや列車と競り合う。手を抜かず、必死にこぐ。だから、終幕に用意されているあっと驚く展開にも、思わず納得させられる。一途(いちず)であることの貴重さを、体を張って伝える心意気を買いたい。1時間51分。新宿・シネマスクエアとうきゅうなど。(近藤孝) (2008年3月21日 読売新聞)
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