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つぐない (イギリス)

罪を「つぐなう」とはどういうことなのか

 原作は英国のブッカー賞受賞作家イアン・マキューアンのベストセラー小説「贖罪」、監督は「プライドと偏見」で注目されたジョー・ライト、そして主演に今が旬のキーラ・ナイトレイ。これだけ“役者”がそろえば期待しないわけにはいかない。ある事件の偽証をきっかけに窮地に追い込まれる男女の悲恋物語というワクにとどまらない、作家が自分の作品を通して「つぐない」をする意味を問いかける、奥の深い佳作に仕上がっている。

 最初の舞台は1935年の英国。政府高官の屋敷で、長女のセシーリア(ナイトレイ)と使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)の情事を目撃するセシーリアの妹ブライオニー(シアーシャ・ローナン)。ロビーに対する彼女の屈折した感情が、ほどなく自分のいとこの暴行事件の目撃証言となって現れ、その結果逮捕されたロビーは戦場へ。

 ひとことで言えば、将来、作家となる多感な少女の偽証によって離れ離れにされた男女の悲恋物語なのだが、その偽証の罪に対する「つぐない」をめぐって後半の物語は二転三転する。果たしてブライオニーはセシーリアとロビーに再会して自分の罪の「つぐない」の言葉を発したのか?

 ここで改めて想像力豊かな「作家」ブライオニーの存在がクローズアップされてくる。これまで語られてきたセシーリアとロビーの物語はすべて真実だったのか、それともブライオニーの想像力のたまものだったのか。

 そういえば、映画には冒頭から2つの視線が交錯していた。セシーリアとロビーの視線と、作家のブライオニーの視線と。この二重構造を保ちつつ終幕に用意された老ブライオニー(バネッサ・レッドグレーヴ)の告白へと至るのだから、相当手が込んでいる。そこで語られるセシーリアとロビーの悲惨な真実の姿は、ブライオニーの小説が描く2人とはあまりにもかけ離れていたとしたら……。

 罪を「つぐなう」とはどういうことか。作家が想像力を駆使して「2人の幸福なその後」を作り出すことが「つぐない」に値するのか。罪をつぐなうことの意味を厳しく問いかける苦い結末である。2時間3分。

 ――東京・新宿のテアトルタイムズスクエアほかで公開中。

(映画評論家 土屋好生/読売ウイークリー2008年4月27日号より

お薦め度 5点満点中4.0点

2008年4月14日  読売新聞)
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プロフィール
土屋 好生  Yoshio Tuchiya
映画評論家
 71年読売新聞入社。文化部で映画記者暦23年。「カンヌ国際映画祭」「モントリオール国際映画祭」など海外での取材経験も豊富。キネマ旬報、スクリーンのベスト10選考委員も務める。

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