「椿三十郎」に主演 織田裕二命の重さ感じる殺陣に黒沢明監督の台本をそのまま使って森田芳光監督がリメークした「椿三十郎」が公開中だ。三船敏郎が演じた大役に挑んだのは織田裕二。デビュー20周年で初挑戦となった時代劇で、現代のヒーロー像を構築した。(津久井美奈) 浪人・椿三十郎が、お家騒動に巻き込まれた若侍たちを助けて不正を暴くという名作中の名作への挑戦。プレッシャーは大きかったのかと思えば、「森田監督に、お前じゃなきゃやらないといわれて、単純にうれしかったので引き受けた」と織田。それもそのはず、「恥ずかしながら『椿――』を知らなかった」。 慌てて前作を見て驚いた。「おもしろいんですよ。黒沢作品というと、後期の難しいイメージだったけれど、僕らがやっているエンターテインメントと変わらない。しかも一つ一つを真剣にやっているのもうれしかった」と興奮を隠さない。 さらに、前作と一切変えずに撮影することになった台本を読んで「今だ」と感じた。「45年前に書かれているのに、45年前とも、時代劇とも思えない。今の現実のよう。いじめ、不正、汚職……。今だからやるべきだと思った」 撮影が近づくにつれ、重みを感じて不安にもなったという。そんな時、CM撮影で訪れた黒沢監督ゆかりのスタジオのスタッフから「頑張って」と紙袋いっぱいの特製タオルを渡され、励まされた。撮影に入ってからは、ただならぬ緊張感が漂い、常に万全な現場の雰囲気から、「スタッフも相当な覚悟で臨んでいる」と痛感。使命感が燃え始めた。 努めたのは現代的時代劇ヒーロー像の造形。森田監督の要請は「クリーンアップで一発逆転サヨナラホームランを打つ4番バッターではなく、イチローのような1番バッターのヒーロー」。重厚感あふれた三船の椿とは異なり、「さっと現れて風を起こす」「しなやかさ」があり、「若侍らにも考えを押し付けるのではなく、個々の意思を尊重する」リーダーを目指した。 その上で心掛けたのは声の出し方。「台本という歌詞は変えなくても、メロディー、テンポ、間のとり方で意味を変えられる」と低い声と明瞭(めいりょう)なセリフ回しを心がけ、「地に足の着いた軽さを出すようにした」。 有名な21人斬(ぎ)りなどの殺陣も自ら演じきった。「ワイヤやCGを使った、かっこいい殺陣ではない。だから演じた。前作は血がどれだけ出るとか、斬る速さがどうのと言われたが、今回は斬りたくない殺陣。命の重さを感じるもの。単なるヒーローじゃない、尊敬できる人物にしたかった」とこだわりを見せる織田。「若い女性など、時代劇というと見ない人たちに見てほしい」と話している。 (2007年12月7日 読売新聞)
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