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新藤兼人監督「石内尋常高等小学校花は散れども」

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新藤兼人監督(右)は車いすから立ち上がり、孫の風(中央)に体を支えてもらいながら、身ぶり手ぶりで教え子役の豊川悦司(左)に演技指導した

恩師に応える「平凡な人生」

 新藤兼人監督の新作映画「石内尋常高等小学校 花は散れども」の撮影が終了した。95歳の名匠が撮ったのは、自身の人生に影響を与えた小学校教師がモデルの人間ドラマ。監督の生まれ故郷、広島県の撮影現場を訪ねた。(近藤孝)

 広島県尾道市にある老舗旅館の大広間で、主人公の市川先生の退職を祝う場面が撮影された。車いすに座った新藤監督は、モニターを通して、市川先生役の柄本明らの演技に見入っていたが、立ち上がって注文をつけることも。旅館の主人役の上田耕一には、「『先生おめでとうございます』と言ったら、すぐ引っ込んで下さいね」と話した。

 孫で映画監督の新藤風(かぜ)を通して、撮影スタッフとのやりとりが繰り返された。新藤監督が脚本を執筆した「陸(おか)に上った軍艦」の山本保博監督が助監督を務めていることもあり、「オーバーラップにするかもしれないので、少し長めに撮りましょう」という山本の指示も、新藤監督にスムーズに伝えられた。

 「気力は十分だと思っている。22歳で映画界に入った時のような気分です」。撮影の合間、年齢を感じさせない熱のこもった言葉で、新藤監督は映画への意欲を語った。

 理想の教師像を追求した作品は、原爆をテーマにした映画とともに、念願の企画だった。

 「子供が家庭を出て、最初に飛び込む社会が学校です。その時に、親や兄弟とは違う存在として、教師と出会う。映画のモデルとなった恩師は、『人間はみな出世して、偉くなるわけではない。正しく生きるのが一番だ』と語ってくれた。平凡だが、素晴らしい一生を過ごした先生の生き方は、私の人生に強い影響を与えた」

 映画では、恩師の生き方を、30年後に再会した教え子たちの目でとらえ直す。戦争や様々な人生経験を経て、平凡な人生の意味が明らかになる。「子供は、教えられたことの意味なんて理解できないし、考えていない。でも、後で考えると、いかにその存在が大きかったかが分かるはず」

 この日の撮影には、柄本のほかに、教え子役の、豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政らが顔をそろえた。真剣な表情で、新藤監督の話に耳を傾け、演技に臨む姿は、映画の中の師弟の関係に重なって見える。

 大竹が「新藤監督の人生の一部を切り取ったような映画。生き抜いてきて、95歳に至るまでの通過点を、私たちが演じていると思うと緊張します」と気を引き締めて語れば、柄本も「映画の歴史のような方。その人の前に立てることは幸せ」と話していた。

 「花は散れども」は来年秋公開予定。

2007年12月8日  読売新聞)
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