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荒戸源次郎監督「人間失格」来年公開

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撮影に臨む荒戸監督(中央)とスタッフ

「おちた果てに光見つける」

 太宰治生誕100年の今年、その文学世界が次々と映画化されている。死の年である1948年に発表された代表作「人間失格」も撮影中だ。荒戸源次郎監督が描こうとしているのは、「青春と挫折、そして希望」だという。(恩田泰子)

 生田斗真 気負いなし

 映画初出演の生田斗真が演じる主人公、大庭葉蔵は東北の資産家の息子として恵まれた環境に育ちながらも、過剰な自意識から他人となじめず、酒と女におぼれ、おちていく。

 7月から今月末まで2か月の予定で撮影が進められている現場を訪ねた。

 その日最初の場面は、放蕩の中で出会った無垢な女、良子(石原さとみ)との仮祝言。無言で進む儀式はきらびやかなのにどこか寂しく、退廃の香りがする。

 続いて、その葉蔵の中で深まる退廃を描く場面が撮影されていく。自殺未遂による入院。エスカレートするモルヒネ依存。正装して新郎を演じた数時間後に、中毒患者になるという激変ぶりだが、生田はするりとその時々の葉蔵になってみせる。気負いは見えない。

 ただ、原作の発行部数は累計1200万部にものぼる上、太宰自身にもだぶる役柄。「撮影が始まる前はプレッシャーだらけでした」と生田。不安を吹き飛ばしたのは、信頼できる監督、スタッフたちの存在だ。「本当に映画に人生をささげた人たちの集まり。自分は、ひたすらに葉蔵に入り込めば良くて、『それ以外は任せておけ』とどんと構えてくださっている。その中にいられるのが刺激的で、楽しくて」。2か月間どっぷり、役に身をひたす。

 荒戸監督は、製作者として「ツィゴイネルワイゼン」「どついたるねん」などを手がけ、自身による監督作「赤目四十八瀧心中未遂」でも30を超す映画賞を受賞。「人間失格」の監督は、企画した角川歴彦・角川映画会長の依頼で引き受けた。

 「もともと背景となる時代に興味があった」と荒戸監督。原作には〈昭和五、六、七年の東京の風景が主に写されている〉と記されている。「それは、日露戦争が終わり、日本が大陸に進出するまで続いた凪の時代の中。今はその時代に酷似している」。原作に「現代に置き換えても成立する」ものを感じたという。

 「青春と挫折を描いても、後口だけはよくしたい」。開いてしまったパンドラの箱から、「ありとあらゆる陰惨なもの」が噴き出た後、最後に残ったものを「希望」として描くつもりだという。太宰自身、葉蔵の物語と呼応するさまざまな経験を文学へと昇華させた。

 生田も言う。「映画版は、おちて、おちて、おちた果てに光を見つける」。荒戸版「人間失格」は2010年初春公開。

2009年8月21日  読売新聞)


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