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ジブリをいっぱい

【ジブリの挑戦】原作者と監督 センス共鳴


大好きなたばこを手にインタビューに答えるジョーンズさん
 遠い日本に住む宮崎駿監督と自分との共通点を、英国の児童文学作家、ダイアナ・ウィン・ジョーンズは感じている。「ハウルの動く城」の原作者は、「まず2人ともたばこが好きだということね」と言って、紫煙をゆっくりとくゆらせた。

 疾走感と浮遊感――。原作となった「魔法使いハウルと火の悪魔」には、長距離を一気に駆け抜ける魔法の靴が登場する。こんなスピード感は、宮崎作品でたびたびお目にかかれる。

 ユーモア――。「自分で読んで、笑い転げてソファから転げ落ちたことがあった。映画にもユーモアは引き継いで欲しいわ」

 これも、宮崎作品になくてはならない要素だろう。ベネチア国際映画祭で、多くの観客が映画に笑い転げた事実を伝えると、ジョーンズは満足そうな笑みを見せた。

 女の子が活躍する物語が多いのも両者に共通する。ジョーンズが女の主人公を造形するのに、児童文学を取り巻く偏見と闘ったことは、先週紹介した通り。「まだまだ偏見は目に見えない形で残っている」と言うが、今や、老女をヒロインにした物語が描かれるまでになった。

 「若いソフィーが年を取ったのは不幸だけど、不幸中の幸いもある。若い女の子だったらできない大胆なことも、ソフィーにはできるようになります。彼女は年を取って、解放されたのよ」

 ジブリのアニメーターが、ソフィーを、かわいらしいおばあさんに描こうとして、監督が「容赦なく、年寄りにして欲しい」と注文したことがあったと聞く。「それこそ、監督がこの物語の本質を完全に理解している証拠だわ」

 広大なユーラシア大陸を挟む島国で生まれ育った想像力豊かな2人が、深い場所で共振している。宮崎監督の新作に、この原作が選ばれた理由が分かったような気がした。

 映画化に当たり、原作者として出した要望を覚えていないというが、「確か、ハウルの性格は変えないようお願いしたと思う」

 わがままで見えっ張りで、すね屋の弱虫。そして、優しい美青年。その魅力を一言で表現するのは難しい。「しいて言えば、モデルはうちの末っ子。ずっと髪をとかしているような子だったもの」

 ソフィーの役割は、美男子のハウルに「あなたは利己的だ」と指摘することにあったと筆者は言う。ところが、ハウルの魅力は筆者の予想を超え、若い女性読者のハートをたちまちつかんだ。

 「ハウルと結婚したいという声がとても多いの。きっと苦労すると思うのに……」

 映画と原作では、大きく違う点もある。まずは動く城の形。「私は石炭みたいにブロックでできたイメージだったの。監督は足をつけたのね。きっと城を動かすために必要だったのね。それも、鶏みたいな。とてもいいわ。素晴らしいアイデア」

 彼女が想像した、動く城の原型は、原作本のカバーにも見える。

 ソフィーの住む世界には、少しずつ戦争の暗い影が忍び寄っている。だが、映画では「戦火の恋」がより強烈に描かれている。

 「戦争の存在を忘れないでいてくれたのはうれしいわ。原作ではひそかに戦争の気配を感じさせる程度に抑えました。宮崎さんも私も、戦争のひどさを知る世代だと思う。ただ、それをどう表現するかで違うだけ。私は、どちらかというと、戦争を封印しているんです」

 共通点と違いがあって、初めて映画と原作は、それぞれが芸術的に自立した作品として並び立つ。

 そう言えば、原作者が指摘する共通点がもう1つ。原作に、ある場面で「緑色のネバネバ」した物質が登場する。「ネバネバ」と言えばむしろ宮崎作品でおなじみの表現ではないか。

 それが、映画で描かれるかどうかは、見てのお楽しみ。こんな小さなところでも2人のセンスは共鳴している。(原田康久)


 ◆「ハウル」原作者 ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんに聞く―後編
 ◆「ハウル」原作者 ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんに聞く―前編


2004年10月8日  読売新聞)
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