映画「ゴッド・ディーバ」エンキ・ビラル監督に聞く
4年をかけて映像化した作品は、1980年代に発表した自身のコミックを原作にしている。「(複雑な世界観を表現できるほど)CGは発展した。むしろ自分が使いこなせるかが心配だった」という。 2095年のニューヨーク上空に巨大なピラミッドが出現する。そこから出てきたのは、人の体に猛きん類の頭を持つ神ホルス。神々の世界で反逆罪に問われたホルスは死を宣告された。しかし、1週間の猶予をもらい、青い髪を持ち、青い涙を流す女を探し始めるという謎めいた物語だ。 CGで描かれる21世紀末は、人間とミュータントが共存する異様な世界で、巨大な都市は薄汚れている。映画「ブレードランナー」などの世界にも通じるが、もちろんマネではない。むしろ、そうした一連のSF映画こそ、ビラルらフランス語圏のコミックから影響を受けているのだ。 「1400カットのうち、9割はCGを使った。だが、CG映画を作るのが目的ではない。やはり、僕の映画には人間の演技が必要だし、それが映画的魅力を作り出す」と言う通り、青い髪の女(リンダ・アルディ)や女医(シャーロット・ランプリング)が魅力的だ。 「女性は美しい。その涙、その知性。すべてが男性に勝っている。僕の作品では、愚かなのは大体、男と決まっているんだよ」
映画「ティコ・ムーン」で臓器移植やクローンを描いて見せたように、異世界を描きながらも、いつも現実の世界を直視した問題を提起する。 「人間性の喪失を問題にしたかった。限りなく進む遺伝子工学と、それを商売として扱う巨大企業がある。これらの企業の肥大化によって、いつか人間性が踏みにじられることはないだろうか、と」 「人間性の喪失」――。それは図らずも、公開中の押井守監督作品「イノセンス」と同じテーマだ。 「つまり、アーティストは、政治家たちの危機感よりはるかに研ぎ澄まされた感性で、問題に気づきだしたということだ。今こそ、アーティストの提起する問題を論議すべき時だ。そして僕らは、作品を通じて人々の感性に訴えるだけでなく、何か行動を起こすべき時かも知れない」(原田康久) (2004年5月11日 読売新聞)
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