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ジブリをいっぱい

アニメーションと実写 垣根消える?

 アニメーションの技術を駆使した実写映画や、実写映画でよく使われる手法で作られたアニメーション映画が、次々と公開されている。アニメーションと実写の垣根はやがてなくなるのか。また、世界に誇る日本のアニメーション技術は、実写映画の新たな地平を切り開くのか。現状を取材した。(原田康久)


佐藤江梨子主演の「キューティーハニー」は、アニメーションの技術が生かされた実写作品
 ピンクのコスチュームに身を包んだセクシーな戦士が、空中を乱舞しながら、敵の攻撃をかわしていく。見たことのない新鮮で迫力ある映像が、スクリーンいっぱいに広がった――。

 永井豪の漫画を映画化した「キューティーハニー」の一場面だ。佐藤江梨子演じる美少女人造人間のハニーが、謎の秘密結社パンサークローと戦うという話。個性あふれる敵キャラクターや、おっちょこちょいのハニーの造形など、アニメーション映画を見るような楽しさがある。

 内容もさることながら、役者が演じるこの実写映画には、アニメーションの技術がふんだんに生かされている。冒頭の映像は、通常の映画なら役者をワイヤでつるして撮影したり、役者をコンピューター・グラフィックス(CG)で描き直したりするところだろう。

 しかし、庵野秀明監督は「ワイヤアクションには新味がない。CGは人間の表情をうまく出せない。生身の人間が汗をかいている感じや、歯を食いしばっている表情をどうしても出したかった」と語る。

 そこで、「新世紀エヴァンゲリオン」など数多くのアニメーション作品を手掛けてきた庵野監督は、アニメーションの技術を応用。「ハニメーション」と名付けた技術で、迫力ある戦闘場面を作った。

 まず、通常のアニメーション作品のように、アニメーターがハニーの連続した動きを描いた原画を作成。次にハニー役の佐藤が、絵の通りにポーズをつけて、ひとコマずつ撮影する。1秒間の映像用に12コマ分の撮影を行った。

 これにより、アニメーションのキャラクターのように、ハニーは自由に動くことができた。庵野監督も「大変な撮影なので短いシーンとなったが、それでも際立って新鮮な映像に仕上がった」と満足そうだ。

 一方、今春公開された「アップルシード」(荒牧伸志監督)は、アニメーターを使わずに出来上がった、「絵を描いていないアニメーション作品」と呼ばれている。

 まず、実際の人間の動きを撮影。これをコンピューターに取り込み、登場人物にその動きを当てはめた。SF映画などでおなじみのモーション・キャプチャーと呼ばれる技術だ。

 同作品を製作した「ミコット・エンド・バサラ」の三宅澄二社長は「日本には原作や才能など、アニメーション関係の資産がたくさんある。この分野で挑戦したかった」と話す。


ハニー役の佐藤(左)に演技指導する庵野秀明監督
 庵野監督も指摘したように、CG映画の問題点は、登場人物に感情移入しにくいこと。そこで三宅社長は、CGを使いながらも、まるでセル画で描いたような人物を生み出す技術を知り、新作に採用した。

 新しい技術だけに、製作途中でどんどん発展。「最初と最後の場面では、見違えるようだった」という。しかも、アニメーターが手作業で描く従来のアニメーションと違い、製作スピードが速いのが特徴。従来のアニメーション映画は4年以上の製作期間を要することもあるが、「アップルシード」は1年半で完成した。このスピードがあれば、世間で関心の高い話題をすぐに作品に取り込むことも可能になる。

 争奪戦の末に世界配給が決まったほか、続編の製作も決定。アニメーションに詳しい評論家の小野耕生氏は「革新的な作品。この映画がアニメーションの未来を変えるかも知れない」とまで予言する。

 このほか、現在製作が進んでいる実写映画「デビルマン」も、アニメーションの技術が使われているという。果たして、アニメーションと実写の垣根はなくなるのか――。

 「今後は日本の優秀なアニメーターにも加わってもらい、彼らの感性を導入して、従来のCGにもアニメーションにもない新しい表現を生み出したい」と、三宅社長。また、庵野監督は「道具が違うだけで、最初から僕自身の中に両者の垣根はない」と言い切る。

 少なくとも、日本のアニメーション業界にひしめく多くの才能が、新しい表現を切り開きつつあることは確かなようだ。


2004年5月25日  読売新聞)
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