現実と虚構を描く“押井ワールド”
若いころの押井監督は、「タイムボカンシリーズ」などテレビアニメの演出を手掛けていました。「ゼンダマン」で悪役3人組がやられる時に登場した「オシイ星人」は、押井監督がモデルになっています。 初めてテレビシリーズ全体の監督を務めたのは、高橋留美子の人気漫画をアニメ化した「うる星やつら」。途中で交代しますが、最後に監督した劇場版第2作「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(東宝、6300円)は、娯楽性と芸術性を備えた傑作です。高校の文化祭の準備に忙しい主人公のあたるたちが、来る日も来る日も「文化祭前日」のドタバタを繰り返していることに気付いた時から、登場人物が一人、また一人と消えていきます。 いま自分が認識している世界は本当に現実なのか。全員が同じ夢を見ていれば、それは夢ではなくて現実なのではないか――。押井監督の原点がこの作品にあると言っても良いでしょう。「うる星やつら」の設定を借りて“押井ワールド”を繰り広げたとも言え、原作ファンからは批判も受けました。 その後も押井監督は「機動警察パトレイバー」「御先祖様万々歳!」など多数の作品を生み出していますが、一貫して現実と虚構との関係性をテーマにしています。 昨年劇場公開された最新作「イノセンス」(ブエナ・ビスタ、スタンダード版3990円)も、その延長線上にあると言えるでしょう。人間の機械化が当たり前になった近未来を舞台に、暴走したロボットの殺傷事件を捜査するバトーら刑事たちの活躍を描きます。美麗なCGによる密度の高い映像には、ただただ圧倒されます。内容はやや難しいかもしれませんが、一度は見ておきたい作品です。(福田淳) (2005年6月28日 読売新聞)
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