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ジブリをいっぱい

「ハウル展」制作現場に潜入!

 宮崎駿監督の新作「ハウルの動く城」の公開を前に、東京・中央区の日本橋三越本店7階ギャラリーで、21日から「ハウルの動く城展」(主催「ハウルの動く城」製作委員会/読売新聞東京本社)が開催される。

 物語の舞台となる「ハウル城」の立体造型物を作成。実際に城の内部に入ることができるというユニークな展覧会だ。

 制作を手掛けたのは、人形作家の中村園さんが代表を務めるデザイン・造型集団「アレグロ」。これまでも数多くのスタジオジブリ作品を立体化しており、昨年は「ジブリがいっぱい スタジオジブリ立体造型物展」も手掛けた。制作が佳境を迎えたアレグロを訪ねた。


◆テーマは「お宅訪問」

 「平均年齢は26歳です。私を除けば」


「ハウル城の足は実物大をイメージした」と中村さん
 中村さんが豪快に笑う。猛暑のなか、東京・豊島区のアトリエでは、汗を垂らしながら若いスタッフたちが黙々と作業を続けていた。

 現在、アレグロは20人を抱える。取りまとめる中村さんを、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーは「千と千尋の神隠し」に登場する「湯婆婆」に例える。かつて寿司店で女将(おかみ)さんをしていたという気風のよさと、「立体造型は“筋肉芸術”。体力がなければ完成しません」と語る姿は、確かに「湯屋」を束ねる湯婆婆のように頼もしい。

 イベントなどで使うキャラクター人形の第一人者。ジブリ作品の宣伝イベントには欠かせない人物だ。

 デビューは37歳。離婚を機に、粘土で有名人のそっくりさん人形を作るようになったのがこの世界に入るきっかけ。「寂しくて家の中に友だちがほしかったんです」。それまで日本には少なかった作風が話題を呼び、個展、創作展入賞とステップを駆け上った。

 ベールに包まれた「ハウル」の世界に公開前に触れることができる貴重な機会を、どう見せるか。中村さんは、テーマを「ハウルさんのお宅訪問」とした。「魔法使いであるハウルが住んでいる部屋ってどんなところだろう」と思ったのがきっかけだった。

 スタッフ全員で絵コンテを熟読。何を食べているか、どんな匂いがするかといった生活を想像する中で、次第にハウルの住む部屋が見えてきた。

 映画の世界にどこまで忠実にするか悩んだが、宮崎監督に「好きなようにやって下さい」と言われたことで、自分たちなりの解釈を大切した。

 あるキャラクターは、ピカソの「泣く女」をモチーフにした立体画で表現し、鈴木プロデュサーを驚かせた。「鈴木さんは『うわー』って言った後に『いいよ』と喜んでくれた。他のアニメの仕事では似ているかどうかのみを重視されることが多いが、ジブリは違う。自分たちの挑戦を歓迎してくれる」


衣装も一着ずつ縫っていく
 一番苦労したのは主人公・ソフィー。90歳のお婆さんである彼女をどうにか可愛く見せたいと思った。「絵をそのまま立体化するとグロテスクになってしまうので、『こうありたい』というイメージを重視した。大切なのは、対象を好きになること。人が見て気持ちいいと思えるものを作りたい」

 展覧会のために、30体あまりの人形を制作した。毎晩、遅くまで続いた作業は、ひたすら人形と相撲を取り続けているような感覚だった。「でも、情熱を注いだ分、出来上がった人形は愛しい」


数々の「仕掛け」を担当した平田智明さん
 中村さんにとって、立体造型物は「周りの誰かに似ているかを楽しむもの」だ。「それ以上の存在である必要はありません。しょせん人形ですから、人間を越えてはならないというのが信念です。……ってこんなこと言っているから人形作家の仲間に入れてもらえないのかな」。笑いながらも、中村さんの眼差しは真剣だ。

 人形も含め、すべての造型物を一つ一つ手作業で作った。FRP(繊維強化プラスチック)に頼らず、皮革、ワラ、トタンなど、多様な素材を用いた。19世紀のヨーロッパという設定を考慮し、衣装にも気を使った。

 ハウル城の「足」が実物大で動くなど、仕掛けも多い。担当した平田智明さんは、「昨年の立体造型物展では受け身だったが、今回はこちらから積極的に提案した」と語る。

 展覧会には、まだ発表されていないキャラクターも多数登場する。公開前に目にすることで、映画を観た際、「会ったことがある」という不思議な体験ができる場になりそうだ。

 期間は8月1日まで。終了後、全国主要都市を回る予定。入場料は一般・大学生500円、高校・中学生300円。(依田謙一)


中村 園(なかむら その)》
 1947年、北海道生まれ。84年デビュー。91年、工房「アレグロ」設立。著書に「パロディーねんど」など。


2004年7月13日  読売新聞)

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