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ベネチアを振り返って【上】充実の作品群に大盛況

 第61回ベネチア国際映画祭が、1日から11日まで、イタリアのベネチアで開催された。コンペ部門は順当な結果に終わったが、ハリウッドの話題作の特別上映や、相次ぐスター俳優の会場入りもあり、お祭りとしては大盛況だった。(田中誠 )


観光名所、サン・マルコ広場で初めて行われた「シャークテイル」野外上映会。
 今年のコンペ部門は、宮崎駿監督のほか、ヴィム・ヴェンダース、侯孝賢(ホウシャオシェン)ら、過去に3大映画祭で最高賞を受賞したことのある名監督の作品が並び、「カンヌに匹敵する充実したラインアップ」と評価する声もあった。コンペの意味を明確にするために、先鋭的な作品を対象にした「オリゾンティ」や、「デジタルシネマ」といった新設部門は、最優秀の作品だけを表彰した。

 そんな中で、最高賞の金獅子賞に輝いたのは、英国のマイク・リー監督の「ベラ・ドレイク」だった。1950年代のロンドンを舞台に、ひそかに中絶を手がけていた主婦を主人公にした物語で、善意の行為が法律で有罪とされるまでをドラマチックに描いて、批評家から絶賛された。主婦役のイメルダ・スタントンは最優秀女優賞を手にした。

 もともと今年のカンヌに出品予定だったが、選考から外れたという経緯もあり、マイク・リー監督は授賞式で「低予算でシリアスなヨーロッパ映画にこんな賞をくれるとは。カンヌ、この映画を拒絶してくれてありがとう」と、皮肉を付け加えるのも忘れなかった。

 審査員大賞(銀獅子賞)を獲得したスペインのアレハンドロ・アメナバール監督の「ザ・シー・インサイド」は、四肢が不自由になった男性が、自殺を認めてもらおうと裁判所に訴えるドラマ。表情一つで心の機微を表現したハビエル・バルデムは、当初から最優秀男優賞の有力候補として名前が挙がっていた。

 金、銀の二つの作品に共通しているのは、社会が個人に押しつけるルールを主題にしたこと。微妙な問題だけに結末には賛否があったが、メッセージ性と共に物語としての面白さを兼ね備えていることが高い評価につながった。

 制作のスタジオジブリが技術貢献賞を受賞した「ハウルの動く城」も、最後まで賞レースの一角を担ったが、本命の2作品が主要賞を分け合うことに、あまり異論は出なかった。

 監督賞(銀獅子賞)に輝いた韓国のキム・ギドク監督「3番アイアン」は、完成したばかりで“サプライズ作品”とし追加出品された。こぢんまりしたラブ・ストーリーだが、見る者をうならせる鮮やかな演出で銀をさらった。キム監督は今年のベルリン国際映画祭でも「サマリア」で銀熊賞(監督賞)を受賞しており、3大映画祭で2つの監督賞を獲得するという快挙を成し遂げた。

 コンペ部門22作品のうち、東アジアの作品は5本。「3番アイアン」と「ハウルの動く城」が賞に絡み、アジア映画の底力を見せつけた。

 人気の高いハリウッド映画を集めて観客を呼ぶのが最近の国際映画祭の傾向だが、今年のベネチアもそれを劇的に推し進めた。

 期間中は、トム・ハンクス、トム・クルーズ、デンゼル・ワシントン、メリル・ストリープ、アル・パチーノ、ジョニー・デップ、ニコール・キッドマン、ロバート・デ・ニーロといったハリウッドスターが連日のようにベネチア入り。

 地元イタリアの批評家からは、「アート映画を顕彰するのがベネチアではなかったのか」という批判もあったが、おかげで映画祭は大盛況。公式上映で空席が目立つコンペ作品もある中、一般の観客がチケットを求めて長い列を作った。

 10日には、ベネチアの観光名所、サン・マルコ広場を特設会場として、ドリームワークス社の新作CGアニメ「シャークテイル」が上映された。5億5000万ドルをかけた一大イベントは、約5000人の観客を熱狂させた。

 一方、イタリアのB級映画を集めた特集上映も評判で、クエンティン・タランティーノ監督らが会場入りして、話題作りに一役買った。上映作品は、この後、ヨーロッパを巡回し、最終的にDVD化される予定。埋もれた映画を発掘し、修復もするという好企画で、来年は、アジアのB級映画を集めた同様の企画が検討されているという。

 充実したラインアップの一方で、運営には問題も多かった。そもそも上映間隔が10―20分と短い上、観客の入れ替えがスムーズに行われず、上映の遅れは日常茶飯事。上映開始が未明という作品もあった。また、特別招待作「ベニスの商人」の公式上映では、チケットを400席近く二重販売するという不手際もあった。

《主な受賞結果》

金獅子賞=「ベラ・ドレイク」(マイク・リー監督)
審査員大賞(銀獅子賞)=「ザ・シー・インサイド」(アレハンドロ・アメナバール監督)
監督賞(同)=「3番アイアン」(キム・ギドク監督)
最優秀男優賞=ハビエル・バルデム(「ザ・シー・インサイド」)
同女優賞=イメルダ・スタントン(「ベラ・ドレイク」)
技術貢献賞=スタジオジブリ(「ハウルの動く城」)
新人賞=マルコ・ルイージ、トマソ・ラメンギ(「ワーキング・スローリー〈ラジオ・アリス〉」)
生涯の業績に対する金獅子賞=スタンリー・ドーネン監督、マノエル・デ・オリベイラ監督

2004年9月22日  読売新聞)

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