――鈴木プロデューサーは「コンテンツ」という言葉が嫌いだそうですが、土屋さんは? 土屋 便利だから共通語として使っていますが、ビジネスの匂いが強くて嫌ですね。いい作品を作るんだという心が見えない。僕のもっとも嫌いな言葉は「キラーコンテンツ」です。それを置いておけば人が寄って来るだろうというのは、株価を上げたりする材料、つまり「餌」ですよ。IT業界では口に出しづらいことをカタカナにする傾向があるのかな。「スキーム」と同じくらい嫌な言葉(笑)。要するに新しい事業のことでしょう? 何が「新しいスキーム」だと思う。ちゃんと、どうやって事業を成立させるか、採算性を考えるかと言えばいいのに。 ――カタカナ用語を駆使するIT業界の象徴「ヒルズ族」をどう思っていますか。土屋 自分でリスクをとって挑んでいるという意味では、好きですよ。 ――意外ですね。 土屋 以前、ソフトバンクの孫正義社長が大号令をかけて駅前でADSL用モデムの入った赤い袋を配ったのを見て、最初は「何やってるんだろう」と思っていましたが、人件費も含めてとんでもないお金をかけていると分かったら、感心した。あれがなければブロードバンドの普及もなかったわけでしょう。すごい意気込みですよ。
――でも、一部企業から見ればテレビ局は買収対象でもある。 土屋 うーん……。でも、個人的には好きです。会社的には分かりませんけど。ただ、彼らはテレビ局にいるタイプの人たちじゃない。やっぱりビジネスマンだと思う。僕らはドラマがやりたいとか報道がやりたいとか、本当に「それだけ」で会社に入ってきたわけで、「これからはインターネットだからそこで事業をやろう」とかいう精神はないですよ。その代わり、彼らがソフト産業に入ってくるなら、お互いに分からないことは話し合おうじゃないのという思いはあります。 ――土屋さんなりに「放送と通信の融合」について考えがある? 土屋 実はないんですよ。テレビのこれからはテレビの現場の人が考えればいいことだと思っていますから。第一、僕はもうテレビの現場の人じゃないんです。ネットの人です。でも、テレビのことは若干知っているし、少し無理も言えるから、それは活かしていこうと。その程度です。 ――当面の課題はやはり会員数増ですか。 土屋 実はあまり会員数を増やしたくない。むしろ、どういうお客さんがいるサービスか知ることの方が大切。ただ、「深く」を追求するためには、たくさんの人に実際に使ってもらわなければ駄目だと思っています。おかげさまで認知度は上がってきたようですが、まだ使ったことがないという人も多い。おそらく、番組視聴にいちいちお金がかかると思われていることが原因でしょう。そこでこの年末年始に、すべての番組視聴を無料にするキャンペーンをやったら反応は予想以上だった。今後もこういう機会は増やしていきたいと思っています。 ――必ずしも有料にはこだわらない? 土屋 広告を入れた無料番組もやりたい。スポンサーに「第2日テレ」ならではの媒体価値というものをきちんと提供できればいいんです。50歳の女性にしか観せない番組があってもいいし、そういうターゲットに訴えたいスポンサーだっているはず。大切なのは有料か無料かということではなく、視聴者が「この番組を観るためには対価が必要なんだ」ということを明確に認識できているかどうか。 ――「第2日テレ」の未来は。 土屋 どこかで会員数を区切って、それなりの規模で運営できればいいです。雑誌みたいなもので、他のことをやりたくなったら、今度は「第3日テレ」を作ればいい。でないと、商店街の店舗がどんどん「皆が喜ぶもの」になってしまう。それはテレビで十分。僕はテレビの現場を離れた以上、「アンチテレビ」をやりたいんです。
(2006年1月11日 読売新聞)
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