「テルーと猫とベートーヴェン」とは? 谷山浩子さんに聞く谷山 浩子(たにやま ひろこ)さん
――不思議なタイトルですね。 谷山 理由は単純で、「テルーの唄」を歌った手嶌葵さんのデビューアルバム「ゲド戦記歌集」に書いた曲と、音楽劇「アタゴオルは猫の森」のための曲、そして英国のテレビシリーズ「モンティ・パイソン」の挿入歌で、ベートーヴェンのことを歌った「偉大なる作曲家」を収録したからなんです。 ――「テルーの唄」を通じて「ゲド戦記」に参加することになった経緯は。 谷山 実は、いつの間にかそうなっていたというのが真相です(笑)。レコード会社のコンテストで賞を取った新人の曲を作るんだということぐらいしか分かっていませんでした。だから、最初は「ゲド戦記」のための曲だと知らなかったくらい(笑)。 ――手嶌さんに会った際の印象は。 谷山 今時の18歳と違うなぁと感じました。周囲に関心を持ってもらおうと自分をアピールしたくなる年頃のはずが、「聞いて」と押し付けがましいところがない。その代わり「歌が好きだ」ということはしっかり伝わってくる。面白い子ですよね。 ――「テルーの唄」を書く際にイメージしたことは。 谷山 手嶌さんの声。彼女の声を思い浮かべたら、自然に出てきました。だから、出来上がるまであっという間。長く曲を書き続けてきましたが、こういう経験は少ないですね。 ――セルフカバーにあたり、どういうアプローチで臨んだのですか。 谷山 最初から手嶌さんを意識して作ったものだったので、自分で歌う時のことはあまり考えていませんでした。彼女は決して声を張らないので、その歌い方が「テルーの唄」の孤独な詞と合っていたと思いますが、私としては、曲を作る際、孤独な感じを救ってあげたいと思っていた部分もあったので、自分で歌う際には、そこを強調したつもりです。聞いた人からは「明るい歌になりましたね」ってよく言われます。 ――「ゲド戦記」を見た感想は。 谷山 「サービスする気まったくないでしょう」って思うくらい、すごく生真面目に作った映画だと思いました。(宮崎)駿監督の作品では、登場人物が持っている「志の高さ」に胸を打たれますが、吾朗監督は、徹底的に普通の人々を描こうしているように見える。お父さんと比較されることが分かっていながら、ちゃんと「自分は自分」という考え方で映画に取り組んでいるのでしょうね。 ――「テルーの唄」は作品の中盤、とても大切な場面で流れます。 谷山 こんなに長く使っていただいていいのかなとドキドキして、試写の時は落ち着いて見ていられなかった。一方で、音楽を担当している寺島民哉さんが手がけたシングルバージョンのアレンジが好きだったので、2番に入る前にシンセサイザーの音が入ってくるところまで入るとうれしいなぁと思ったりしていました(笑)。 ――谷山さんといえば、NHK「みんなのうた」への楽曲提供をはじめ、イマジネーション豊かな作品が多いですが、その源泉は? 谷山 小さいころに度を越した量の本を読み漁っていたことが大きいと思いますね。当時はまだ実際の世界について多くを知らなかったため、本の世界と現実が混沌としていたのですが、自分にとっては全部リアルなものでした。だから、大人になってから不条理と言われるベケットや別役実さんの戯曲を読んた時も、難解という感じはなく、素直に面白いと感じました。 ――12月からはソロツアーが始まりますね。 谷山 12月8日の札幌を皮切りに、全国を周る予定です。通常のホールでないところにも出かけていきますので、皆さんといろんな場所で会えたら嬉しいですね。
(2006年11月11日 読売新聞)
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