「ゲド戦記」ライブ間近 カルロス・ヌニェスに聞くカルロス・ヌニェスさん
――「ゲド戦記」に参加した理由は。 カルロス 昨年、コンサートで日本に来ていた時に、レコード会社のスタッフから、「宮崎吾朗という若い映画監督が映画を作っていて、ぜひ演奏してほしいと言っている」と話がありました。最初は「どうして僕に?」と思いましたが、スタジオジブリで映像を見てすぐに納得しました。そこに描かれていたのは、自分の故郷と同じ景色だったのです。特に、海に日が沈む絵が印象的で、思わず「This is my home!」と叫んだほど。 さらに、寺嶋民哉さんが作曲したスコアを見て、もっと驚きました。自分が取り組んでいるのと同じ「ケルト音楽の坩堝(るつぼ)」――つまり、アイルランド、フランスのブルターニュ地方、スコットランド、そして故郷のガリシアを合わせたものに、日本らしさが加わっていて、ケルト音楽の未来を感じました。 ――日本らしさとは。 カルロス 伝統的な要素を生かしつつ、現代的な雰囲気をうまく取り入れているということです。ただ、録音時間が満足に取れなかったため、もっと多くの楽器で演奏したいと、スペインに戻って追加で録音しました。 ――これまでジブリ作品を見たことは? カルロス ヨーロッパで高い評価を受けていることもあり、興味を持って見ていました。自然に対する考え方や、生と死に対するイメージは、ケルト文化とも共通項があり、共感できます。ガリシアは、ヨーロッパの西端にあるため、アジアの東端にある日本とは、文化的な面も含めて「鏡」のような関係にあるのではないかと感じています。 ――吾朗監督の印象は。 カルロス 寺嶋さんもそうですが、とても謙虚。名声を手に入れた人は、とかく偉そうな態度を取りがちですが、彼らには、そういうところがないですね。 ――吾朗監督と寺嶋さんは、演奏している姿がとてもカッコよかったと言っています。 カルロス それはすごく嬉しい。僕は、芸術というものは単に音や絵だけではなく、いくつもの要素が互いに関連しあって成立していると考えています。映画がいい例でしょう。同じように、生活も芸術であると思います。
カルロス 「ゲド戦記」の音楽をもっと広げたいと、寺嶋さんやジブリのスタッフにガリシアまで来てもらい、約半年かけてじっくり作りました。映画版では、シンフォニックな編曲に自分の笛などを乗せるイメージでしたが、このアルバムでは、パーカッション奏者である弟のショルシュに参加してもらったことで、リズムが強調され、ケルト音楽らしさがより強く出ていますね。 ――コンサートでは、映画で挿入歌を歌った歌手の手嶌葵さんと、以前、ジブリ作品に参加した経験があるシンガーソングライターの矢野顕子さんがゲストで参加します。 カルロス 手嶌さんには、若い子にありがちな傲慢さがない。普通なら「ポップスターになるんだ!」ってガツガツしてしまうのに。歌声も同様で、独特の静かで深いメッセージ性を感じさせます。 矢野さんとは、アイルランドのバンド「ザ・チーフタンズ」のライブで共演したことがあり、再び一緒に演奏できるのはとても楽しみ。彼女はニューヨークに住んでいながら、日本人ならではの繊細さを失わないのが面白い。たとえば先日、久しぶりに電話で話して「人生はどう?」と聞いたら、「そんな深い質問、簡単に答えられないわ」と答えるのです。アメリカ人なら、適当に「調子いいよ」って返すのに(笑)。彼女のそういう魅力は、音楽にも出ていますね。 ――どんなコンサートにしたいですか。 カルロス さまざまなインスピレーションが混ざり合って、シンフォニーのようになれば素敵だと思います。目に見えない感情や育った場所は違っても脈々と続いてきている文化、そういうものを皆で分かち合いたいですね。
(2007年4月24日 読売新聞)
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