連載「雪の女王」インタビュー バイオリン奏者・宮本笑里さんに聞く宮本 笑里(みやもと えみり)さん
――アンデルセンの原作を読んだことは? 宮本 「人魚姫」や「パンをふんだ娘」は読んだことがありましたが、「雪の女王」はこの映画を通じて初めて知りました。とても50年前の作品とは思えないくらい、滑らかに動きが表現されていて驚きました。まるでバレエを踊っているようでした。 ――宮崎監督も「バレエの素養のある子の動きからライブアクション(実写を撮影してアニメーション化)を採用したのではないか」と指摘したそうです。 宮本 指先まで細かく描写されていて、繊細な仕草が作品の雰囲気と合っていますよね。ドロップを口に含んだまま話しているような、優しいロシア語の響きも素敵。冷たい世界が描かれているはずなのに、言葉の響きとバレエのような動きのおかげで、フワフワした浮遊感を感じながら見ることができました。 ――音楽(アイヴァジャン)の印象は? 宮本 絵の雰囲気とぴったり。疾走する主人公・ゲルダの気持ちが、素直に伝わってきました。一度聴いたら忘れられないフレーズで、頭の中をぐるぐる回っています(笑)。ロシアの作曲家では、プロコフィエフが好きですが、線が細いのに意思をはっきり感じ取れるという点では、通じる部分があるように感じました。 ――印象的だったキャラクターは? 宮本 やっぱりゲルダ。気持ちがとても強くて、皆が自然に彼女の味方になっていく様子が忘れられない。現実はもっと厳しいという意見もあるかもしれませんが、心の底から「こうしたいんだ」という意思を感じたら、誰もが力になってあげたいと思うのではないでしょうか。私も、決して一人で立っているわけではなく、いろんな人の支えがあって、今がある。これからも階段を上っていくためには、もっと頑張っていることを周りに知ってもらわないといけないと感じました。 ――宮本さんが周囲の支えを実感するのはどんな時? 宮本 自分に対して意見を言ってもらえた時ですね。一人で突っ走っている時の方が不安なんですよ。私が演奏家としてやっていこうと決意したのは中学生の時ですが、演奏を気にしてくださる人がいると分かったことで、自分よりも周りの人のために弾きたいと思えました。 ――ゲルダが走り続けるのは、カイへの「想い」のためですが、宮本さんが演奏する際に、貫きたいと考えている「想い」は? 宮本 聴いた瞬間に、私の音だと感じてもらえる演奏をしたいということ。上手だとか下手だとか、そういうところを飛び越えて、自分らしい音をもっと追求していきたい。そのためには、楽しく弾いていたいです。演奏していると、どうしても「難所」と向かい合わなければなりませんが、できるだけ笑顔を忘れたくない。それが、自分が追求している音に繋がると信じています。 ――ゲルダは宮崎監督が描き続けているヒロイン像の原点だと言われていますが、宮本さんが憧れる宮崎作品のヒロインは? 宮本 自分とは対照的ですが、「もののけ姫」のサンが好きですね。野性的で乱暴なんだけど、純粋な部分が根っこにある。私は演奏をする際、映像をイメージすることが多いのですが、燃えるような激しい曲を演奏する時は、よくサンの姿を思い浮かべます。久石さんが手がけている宮崎監督の作品の曲は、どれも大好きです。いつか演奏できたら嬉しいですね。
(2007年11月27日 読売新聞)
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