「崖の上のポニョ」主題歌を歌う「藤岡藤巻と大橋のぞみ」に聞く藤岡藤巻と大橋のぞみ
――主題歌を歌うことになったきっかけは。 藤巻 もともとはのぞみちゃんが一人で歌う予定で、デモテープを録音したそうですが、それを聴いた宮崎さんが「お父さんと娘が一緒に歌っているようにしたい」と思いつき、仕事でスタジオジブリと関わりのある僕らに仮歌を歌ってみないかというお話があったんです。あくまで仮だからということで気楽にやったら、宮崎さんと鈴木敏夫プロデューサーが「このままでいいんじゃないか」と言い出した。 ――驚いたでしょう。 藤巻 「もう少し真剣に考えたほうがいい」と言ったら、2人とも「上手くないからいいんだ」と力説していました。プロの歌手も探してみたそうですが、聴いた人が自分でも口ずさみたいと思うには、僕らぐらいがちょうどいいということでした。実は昨年の夏休み、アニメーションが好きなうちの娘に「憧れる仕事をしている人にインタビューする」と宿題があって、宮崎さんにお願いしたことがあったんです。30分ぐらいの予定が2時間ぐらい話してもらえて、最後に僕が「ほらね、人間には努力が必要なんだよ」と言ったら、宮崎さんは「藤巻さんはジブリでは怠け者で通っているのに、よく言うよ」と大笑い。でも、その時に、僕でも娘の前ではお父さんの顔があるんだってしみじみ思ったそうなんですね。どうやらそれを思い出して依頼しようと考えたようです。 ――それで2人も納得した。 藤岡 自分たちが歌うのでなければ、意表をついた面白いアイデアだと思いましたよ。でも、自分たちがやるとなると、やっぱり不安でした。今でもたまに「本当によかったのかなぁ」と思います(笑)。 ――そもそも「藤岡藤巻」を結成した経緯は。 藤岡 藤巻と大学の時に「まりちゃんズ」というバンドを組んだのが最初。好き勝手にいい加減な歌ばかり歌っていたので、それでやっていこう気もなく、卒業後は僕がレコード会社に、藤巻は広告会社に就職した。以来、ほとんど活動していなかったのですが、ある時、知り合いのライブハウスのオーナーが「まりちゃんズ」を覚えていてくれて、久しぶりにやらないかと声をかけてくれた。それで一回やってみたら面白かったので、なんとなく続けているという状態です。大きな目標はないんですよ。――恋や愛の歌が多い音楽シーンのなかでは、異色の存在ですね。 藤岡 この年になって何が歌えるかなってを考えたら、やっぱり中年サラリーマンの愚痴になる。実際、飲んでも愚痴ってばかりですから(笑)。歌っていることも実話ばかり。こういう歌は、思いついても売れないので誰もやりたがらなったのでしょう。僕らも決して売れているわけじゃありません。でも、ライブでは意外と20代、30代の女性のお客さんも多い。何を気に入っていただいているのか分かりませんが(笑)。 藤巻 背伸びしたところでボロが出るだけですから、等身大の歌しか歌えないですよ。それに、これで食っていこうと思っているわけではなく、あくまで趣味の延長。サラリーマンがゴルフやったり麻雀やったりするのと変わりません。 ――解散の危機などありえないバンドですね。 藤岡 それが、しょっちゅう解散したくなる。原因は藤巻の怠慢(笑)。ライブなのに歌詞を覚えないし、間違えるし、反省しないし。 藤巻 仕方ないよ、よくてリハーサル一回ぐらいしかやらないバンドなんだから。 藤岡 ほら、この通り(笑)。ちゃんとした録音も今回が初めてだったので、緊張しました。普段は一回録って「ハイ、終了」ですからね。テレビの収録も緊張します。カメラに向かってニコニコしながら歌うって、こんなに大変なんだと思い知らされました。 ――のぞみさんから見た2人の印象は? 大橋 とても優しそうだと思いました。1人だけだと寂しいから、一緒に歌ってくれる人ができると聞いた時は嬉しかったです。曲もかわいいくて、大好きです。お父さんも喜んでいました。 ――「藤岡藤巻」は家ではどんなお父さんですか。 藤岡 家事をよくやりますよ。お互いにゴミを出すのは、旦那の役目。 藤巻 ゴミは自動的になくなると思っているみたいだから、出張すると大変。意地で残っている(笑)。 藤岡 若い人に言いたいけど、夫婦関係というのは、最初にどういう仕組みを作るかが大切です。新婚時に優しさを見せて「ゴミは俺が出しておくよ」なんてやると、一生続くことを覚悟しなければならない。相手もしばらくは「悪いわね」と言ってくれますが、そのうち「何で行かないの!」に変わってきます。 ――こんな2人にのぞみさんからリクエストは? 大橋 うーん……。よく間違えるので、間違えないで歌ってほしい。 藤巻 はい、頑張ります(笑)。僕も藤岡も娘がいますが、もう大きくなってしまったので、一緒にいると、のぞみちゃんぐらいの年齢の頃を思い出しますね。「昔は僕にも優しかったなぁ」って(笑)。 藤岡 ぜひ、親子で歌ってほしい。娘と一緒に歌える歌があるって素晴らしいことですよ。僕も娘が小さい頃は「とんでったバナナ」とかを一緒に歌っていましたから。そういう歌になれたら、嬉しいですね。
(2008年1月16日 読売新聞)
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