新垣結衣×百瀬ヨシユキ 幸福な偶然を生んだ「piece」
――コラボレーションすることになったきっかけは? 百瀬 映像自体は1年ほど前に使い道を考えずに作ってあったものです。「ハオハオ(好々)」という点と点を結ぶことで予想のつかない美しい線が描けるという3DCGプログラムがあって、それを人間の心情に見立ててアニメーション化しようと実験した作品です。そうしたら、NHKで放映されたジブリの音楽番組のナビゲーターを新垣さんが務めたのが縁で、新曲のミュージックビデオを制作してほしいという依頼をいただいたので、「こんな映像があるよ」って紹介したんですよ。そうしたら新垣さんが気に入ってくれて、試しに曲に重ねてみたら、なんとぴったり合った。主人公も新垣さんのように見えてきたので驚きましたね。 新垣 歌詞にある「いつも何かが足りない 未完成なパズルみたい」という部分が、日常の些細なことで悩む映像の主人公と重なりました。特に、人とのつながりを大切にして生きながらも、最後のピースを埋めるのは自分なんだというテーマはまさに一緒だと思いました。 百瀬 映像では「ハオハオ」で描いた虹のような線を「Loveline(愛の帯)」と名づけ、人間から流れていように表現したのですが、最初は主人公だけ流れていないんですね。つまりそれは、見れば他の人は皆、楽しそうに見えるということなんです。日常に行き詰まり、気分転換しようと大好きな靴を買ってもかかとが欠けてしまったり、なかなかうまくいかない。それが裸足でも構わないと開き直ってポジティブな気持ちを持つことで、彼女にも「Loveline」が流れるようになる。このあたりが「ピースを埋める」という歌のテーマとうまく合いましたね。 ――音楽に触発されて作り直した部分はありますか? 百瀬 それがまったくないんです。もちろん最初は編集したり、新しく作ったりする必要が出てくるだろうと思っていましたが、不思議なことに音楽の進行ともぴったり合った。新垣さんの一生懸命に歌おうとする声のおげで一人称の作品だということが際立ったし、何より主人公の心情に寄り添って聴こえる。そういう根っこの部分が共通していたことが大きいですね。
新垣 「piece」は一年前ぐらいに、いろいろな曲を試しに歌わせていただいていたうちの一つでしたが、この映像と出会ったことで、歌の持っているメッセージがより深く理解できました。本当にありがとうございます。 百瀬 いえいえ、こちらこそ。それにしても不思議な偶然だよね。僕も新垣さんも同じタイミングで作っていたことになるんだ。 ――実際に会ってみての印象は。 百瀬 新垣さんは20歳なったばかりだそうですが、とてもしっかりしていますね。大したもんだなぁ。 新垣 そんなことないですよ(笑)。大好きな「魔女の宅急便」をはじめ、ジブリ作品は小さい頃から観ていましたが、ものづくりに厳しいスタジオだというイメージがあったので、百瀬さんも怖い方だと思っていました。でも、お会いしたらとても優しい方だったのでほっとしましたし、何度かスタジオにもお邪魔するうちに、いつかジブリ作品に出演できたらなぁという思いが強くなりました。 ――続きが観たくなる作品ですね。 百瀬 そう言っていただけると嬉しいですね。実は考えているんですよ。 新垣 えー! 本当ですか。もし実現できたら嬉しいです! 百瀬 あくまでアイデアですけどね。主人公の女の子のその後とか、いろいろ考えています。働きながら周囲の女性の何気な会話を聞いていると、心にとまるエピソードってあるんですよ。そういうものがきっかけで作ってみたくなる。新垣さんが「心(しん)ちゃん」という名前の爬虫類(ヒョウモントカゲモドキ)を飼っている話とか(笑)。まぁ、爬虫類の話にするかはともかく、これがきっかけで次につながっていくと楽しそうですね。
(2009年2月17日 読売新聞)
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