「バウンディン」を知ってるかい? バド・ラッキー監督らに聞くバド・ラッキーさん
オスナット・シューラーさん
そんな時は、「バウンディン」を観ればいい。物語はこうだ。フサフサの白い毛が自慢の羊がある日、人間に毛をすべて刈られてしまう。途方に暮れる羊の前に、不思議な動物が現れ……。 同作は「ファインディング・ニモ」(2003年)などで知られる米アニメーション制作会社ピクサーの最新短編。東京の「三鷹の森ジブリ美術館」で、開催中の「ピクサー展」に合わせ上映されている。監督のバド・ラッキーとプロデューサーのオスナット・シューラーに聞いた。(依田謙一) ――「バウンディン」を作ったきっかけは。 ラッキー 5年ほど前、ピクサー社内で短編のアイデアを公募していたので応募したんだ。モンタナ州に住んでいた小さい頃、羊が毛を刈られて車に乗せられていくのを見て驚いた経験がもとになっている。羊の毛を刈るなんて、子どもの僕には想像もできないことだったからね。 ――主人公の顔のモデルもラッキー監督ですか。 ラッキー そうかもね。キャラクターというのは、作った人間の要素が少しずつ入っているものさ。 ――毛を刈られた羊は、大切だと思っていたものを奪われた人間のようです。
――そこへ“賢者”ジャケロープが現れる。 ラッキー 彼をヒーローにしたくはなかった。僕らの日常だって、困った時にヒーローが現れて一件落着ってわけにはいかないからね。ジャケロープはあくまでヒントを与えるだけで、答えを出すのは羊自身なんだ。ピクサーは親子が楽しめる作品を社是としているので、最初はちょっと幼稚になるかなと心配したけど、最終的には大人にも楽しんでもらえるものになったと思うよ。 ――元気を取り戻した羊が何度も飛び跳ねる姿は快活ですね。 ラッキー 飛び跳ねる描写というのは、アニメーターにとって最も基本的で、面白いものなんだ。僕らは地面に付く、縮む、伸びるといったボールの動きから、たくさんの技術を学ぶ。 ――ピクサー作品が重視してきた写実的な描写に加え、よりアニメーション的でユーモラスな動きの追求がなされているように感じました。
シューラー もちろん、これまでの作品と同様に、丹念に観察することも忘れていません。何しろ実際に皆で羊の毛を刈ることから始めたんですから! その体験によって、毛を刈られたばかりの羊は、顔の周りに日焼けの跡が残っているということも分かりました。 ――「バウンディン」は12月に公開予定の長編「Mr.インクレディブル」の同時上映作品ですが、先行公開することに障害はありませんでしたか。 シューラー 信頼するスタジオジブリからの依頼ですから、何も問題はありませんでした。むしろ光栄なことだと思っています。 ラッキー 僕たちはジブリ作品をとても尊敬しているんだ。例えば「となりのトトロ」(英題「My Neighbor Totoro」)はまるで美しい一遍の詩のようで、古典だと思った。葛飾北斎の絵を見た時ぐらい驚いたよ。(次ページへ続く)
(2004年8月17日 読売新聞)
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