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ジブリをいっぱい

「Mr.インクレディブル」ブラッド・バード監督に聞く

ブラッド・バードさん

 立て続けにヒット作を送り出している米国のアニメーションスタジオ、ピクサーの新作「Mr.インクレディブル」が、来月4日から公開される。来日したブラッド・バード監督に話を聞いた。(原田康久)


「温めている企画には実写物もある」と語るバード監督
 「トイ・ストーリー」ではおもちゃ、「バグズ・ライフ」で虫、「モンスターズ・インク」でお化け、そして「ファインディング・ニモ」で魚の世界を描いたピクサーが、新作で描いたのは人間だ。3D(立体)CGで人間を描くのは、「最後の難関」と呼ばれるほど難しいとされる。

 主人公は、法律の改正で引退を余儀なくされ、一般市民に戻った元スーパーヒーローの夫妻。定職にも就き、子供にも恵まれたが、夫は在りし日の栄光が忘れられない。そこへ、思いがけない事件が起こる――。

 「もちろん、失敗の可能性は多分にあった。でも、物語もいい、キャラクターも魅力的。ならば問題は解決できると思った」と、バード監督は振り返る。1999年の秀作「アイアン・ジャイアント」の監督として知られる。ピクサーの副社長で「トイ・ストーリー」の監督でもあるジョン・ラセターは古い友人。「一緒にやろう」と、以前から誘われていたという。

 自分で温めていた「元ヒーロー」の企画を映像化する場を、そのピクサーに選んだのは技術力への信頼もある。今回は「ニモ」時代の6倍の処理能力を持つ1800台の高性能コンピューターをフル稼働した。「しかし、最も信頼した理由は彼らの姿勢だ。アニメーションを作るという明確な信念を持つスタジオは、そんなにはないんだ。もうかるからという程度の理由で作っている会社も多いから」

 「トイ・ストーリー2」の時は出来上がったストーリーを破棄し、作り直した経験があるほど、ピクサーは「物語」にこだわる。脚本を磨き上げる過程を、バード監督も経験した。


引退した元スーパーヒーローの一家が活躍する「Mr.インクレディブル」(c)DISNEY/PIXAR
 「『出だしは元ヒーローの設定を隠しては』とラセターが言い、『どうせ前宣伝でばれるんだから』と僕。『出だしをもっとドラマチックに』という意見で変えてみたり、やっぱり戻したり、僕のアイデアになかった悪役を作ったり……」

 その過程で、「とても気に入っていた場面を一つ削った」と打ち明ける。「全体の流れのためには、不必要な場面だった。愛する者を消さなければいけないという状況だった」

 ピクサーでの仕事は、大きなプレッシャーを抱えることでもある。「大ヒットした『ニモ』まで、前の打者5人が全員ホームランだろ。それを考えるとつぶされそう。だから、『自分にとって最高の作品』だけを目指したよ」

 結果は――。日本より一足早く公開された米国では、公開後3日間で「ニモ」の記録を上回り、興行ランキングで初登場1位に。「1塁には届いたかな。次はラセターの作品が公開される番だよ」

 ほっとした顔で笑った。


2004年11月30日  読売新聞)
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