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ジブリをいっぱい

――I.Gにとって、「イノセンス」はどんな作品ですか。


石川 はっきり言えるのは、やれるだけのことは全部やったということ。僕は単に代弁者でしかありませんが、携わった一人一人が、本気になって取り組んで、これだと思う作品を今という時代に叩きつけることができた。もし、不安があるとすれば、今後、これだけのものを作れるだろうかということ。アニメーターだって、決してやりたくてやった作品ではないんです。デジタルを多用したことで、彼らのような“職人”には、辛い場面も多かった。普通に考えたら、完成前に崩壊していてもおかしくないですよ。

――崩壊しなかったのは、なぜでしょう。

石川 二つの理由があると思います。一つは、押井監督の人間性。あんまり、人間性って言葉が似合う人じゃないけど(笑)。面倒臭がりに見えて、自分の考えていることを相手に伝える労力は惜しまない人なんです。それがちゃんとスタッフに伝わった。もう一つは、やっぱりI.Gで作ったからだと言いたい。これまでの仕事によって、根が張ったスタジオとなり、しんどい場面でもバラバラにならずに、サポートできる人材が育った。いくら笛を吹いても、縁の下の力持ちがきちんと仕事をしなかったら、監督は光りませんから。

――そんなI.Gを、今後どう舵取りしていきますか。

石川 配置転換して、一度リセットしたい。「イノセンス」の主要スタッフも出向という形で一度外に出そうと思ってます。業績を上げた人間を何で出してしまうのかと思われるかも知れませんが、そうしないといつまでもその人間に頼ってしまうんです。あとは、企画力、物語を作る力をもっと養わなくてはならないと思っています。時間とお金をかければ質は保てる。でも、一方でお金と時間がなくても、面白いものが作れる人材を育てていきたいですね。

――「攻殻3」はありますか。鈴木プロデューサーは、石川社長と押井監督次第だと。


「イノセンス」より(c) 2004 士郎正宗/講談社・IG, ITNDDTD
石川 押井監督には、ガス抜きが必要だと思っています。作品を作らないということじゃなくてね。一度、好きなようにやってもらった方がいい。押井監督が本気でやりたいようにやったら、きっとヒットしないだろうけど、それでもいいかなって(笑)。準備は始めていますよ。監督作としては、「攻殻」から9年も空いたけど、今度はそんなに空かないでしょう。

――さて、公開前のインタビューでは、「話せないことが多い」ということでしたが。

石川 あの時は、公開すればいろいろと落ち着いて話せると思っていたけど、実は今も話せないことが多い(笑)。というのも、「イノセンス」の今後について、いろいろと“仕込み”をしている最中なんです。

――カンヌ映画祭へ出品との噂もありますが。

石川 それも合わせて、今、まさにいろいろと努力しているところなんです。「イノセンス」は年内にDVDも出したいと思っているし、公開されたからといって一段落したわけじゃない。戦いは続いていて、ちっとも終わっていないんです。むしろ始まったばかりですよ。

 インタビュー後、石川光久個人にとって「イノセンス」はどんな作品だったかを聞くと、照れながらこんな話をしてくれた。「完成試写後、数人のスタッフが残っていた時に、日本テレビの奥田(誠治=製作委員長)さんが、突然、万歳三唱をしてくれたんです。それがすごく嬉しくて、顔には出さなかったけど、心の中でワンワン泣いた。ずっと張り詰めていたものが、その一瞬、切れたのかも知れません。でも、同時に、まだまだやってやると思えました」

 “熱い男”石川光久の映画作りは、まだまだ続く。


「イノセンス」押井守監督作品

イノセンス それは、いのち。
 現実と虚構の境目を鋭く描く押井守監督の最新作。
 主人公バトーは、生きた人形(サイボーグ)。腕も脚も、その身体のすべてが造り物で、残されているのはわずかな脳と、ひとりの女性の記憶だけ。人間と機械の境界線が限りなく曖昧になった時代、ヒトは、人であることを忘れた。それでも、自分が人間でありたいと求めた男の、孤独な“魂(ゴースト)の乱交”を押井守が描く。

(c) 2004 士郎正宗/講談社・IG, ITNDDTD
2004年4月20日  読売新聞)
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