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拝啓、人形に興味のない皆様 人形作家・恋月姫に聞く

恋月姫(こいつきひめ)さん


恋月姫(こいつきひめ)

人形作家。1955年生まれ。80年頃から独学で人形制作を始める。人形屋佐吉主催人形展や海外美術展などに作品出展。作品集に「人形姫」「震える眼蓋」など

 自分が「興味がない」と思っている大半は、実は、単に「出会っていない」だけなのかも知れない――。映画「イノセンス」の公開を記念し、東京都現代美術館で開催中の「球体関節人形展」の会場を歩きながら、そう思った。

 球体関節人形とは、腕、足などの関節に球体を入れてつないだ人形で、自由なポーズを組むことができる。展覧会では、これまであまり知られることのなかった日本の球体関節人形の世界を一望することで、人形の本質について検証を試みている。監修は押井守。

 人形とは、果たして一部の興味がある人だけのものなのか。四谷シモンに続き、同展に出品している人形作家・恋月姫に聞いた。(依田謙一)

――数ある人形の中で、球体関節人形に興味を持ったきっかけは。

恋月姫 確か20年ほど前だったと思いますが、アンティークドールと呼ばれる球体関節人形に出会って、いっぺんに引き込まれました。これこそ人形だと。

――アンティークドールとは。


球体関節人形展に出品されている恋月姫の作品より「Das Seele」
恋月姫 古い人形全般を指す場合もありますが、私が言っているのは、19世紀後半に作られたビスクを使った球体関節人形です。ビスクとは「二度焼き」という意味で、素焼きした磁器を彩色した上で再度焼き、人肌のような質感を出す工法です。19世紀末にパリで活躍した「ジュモー工房」によるものなどが有名です。それまで、世の中に溢れていたセルロイド製の人形によって、人形とは玩具だと思ってきたのが、このアンティークドールとの出会いでイメージが一変しました。

――アンティークドールは西洋人形のイメージが強いですが、恋月姫さんの作品には、和人形も多いですね。

恋月姫 和人形に憧れていたんです。私の出身は北海道ですが、周囲にアメリカ風なものはあっても、純和風なものがほとんどなかった。ですから、繊細に見えて実は大胆だという日本的表現には、敏感だったのかも知れません。だって、日本家屋にさりげなく入っている赤色の使い方なんて、強烈ですよ。

――人形に憧れるというだけなら、購入という方法もありますが、自ら作ろうとした理由は。

恋月姫 単純なことです。アンティークドールが高価だったからです。最初は、絵を描いて代用していましたが、次第に、実物を作りたいと思い始めました。

――作り方はどのように学んだのですか。

恋月姫 独学です。絵画と一緒で、こうすればプロになれるという方法はありません。この世界は、一人でやってきた作家が多いですよ。今回の展覧会に出品されている作家も面識のなかった方ばかりです。

――四谷シモンさんによると、今回の展覧会によって、日本の人形作家が激しいものを作る傾向があるということが分かったということですが。

恋月姫 海外の作家にはないフェチシズムがあるのは確かでしょうね。シモンさんのおっしゃっている「激しい」と合うかどうか分かりませんが、熱いものを作りたいというのはある。実際、人形同士が並んだときのエネルギーはすさまじいですよ。(次ページへ続く)


2004年3月9日  読売新聞)
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