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故郷への思い描く「茄子 アンダルシアの夏」

高坂 希太郎(こうさか きたろう)さん


高坂 希太郎(こうさか きたろう)

1962年生まれ。高校時代からアニメーション業界に飛び込む。原画として「王立宇宙軍オネアミスの翼」「AKIRA」、作画監督として「耳をすませば」「もののけ姫」などに参加。「茄子 アンダルシアの夏」で初の劇場映画監督に挑戦

 都会は田舎者の集まりだと言われる。そんな多くの田舎者にとって、故郷への思いは複雑だ。

 「千と千尋の神隠し」(2001年)などに作画監督として参加していた高坂希太郎が監督した「茄子 アンダルシアの夏」(7月26日公開)は、世界三大自転車レースのひとつであるスペインの「ブエルタ・ア・エスパーニャ」を舞台にした47分の作品。レーサーである主人公ペペが、思い出を乗り越えながら故郷の地を走り抜ける。高坂監督に聞いた。(依田謙一)

――原作との出会いは。

高坂 「千と千尋」に作画監督として参加していた頃、宮崎駿監督に「読めっ」と渡されたのが、黒田硫黄さんの漫画「茄子」だったんです。自転車レースを扱った漫画は他にもありますが、黒田さんは、自転車レースの「クールなのに熱い」という面白さを描いていて、ひかれました。以前は、「自転車ものを作っても誰も観ないだろう」と思っていましたが、この作品なら皆が楽しめるはず、とアニメーション化を思い立ちました。

――主人公の故郷の道路に書かれた「VENGA PePe」(行け! ペペ!)という文字が印象的です。


高坂 映画化にあたって、原作の根底にある「反発していた故郷を受け入れる」というーマを掘り下げました。「VENGA PePe」は原作にありませんが、主人公と故郷の関係を際立たせるために加えました。故郷の象徴である茄子のアサディジョ漬けに関する描写を増やしたのもそのためです。

――スペインの風景を細かく描写されていますね。

高坂 アンダルシアを実際に訪れたことで、作品に厚みが増したと思います。自転車レースを観戦することもできましたし、土俵のように大きなフライパンでパエリヤを作る場面は、実際にクレーン車でフライパンを降ろすところを目撃したおかげで、生き生きとした場面になりました。

――声優陣を選んだ基準は。


高坂 主人公ペペ役の大泉洋さんは、北海道を中心に活躍されている俳優さんですから、故郷をテーマにした作品にはぴったりだと思っていました。ペペの兄であるアンヘル役の筧利夫さんは、ハッキリとした物言いと声に以前から好感を持っていました。また、カルメン役の小池栄子さんは、「男気がある人」だと感じていたので、筋の通った女性であるカルメンの声は彼女しかいないと。

――すがすがしい映画で、仕事帰りのサラリーマンが観るのに最適では?

高坂 サラリーマンに限らず、たくさんの人に観てほしい作品です。生きていく上で辛い場面に遭遇することは誰でもありますが、そこで諦めずに「もう少し頑張ってみよう」と思ってもらえる助けになれば嬉しいですね。(次ページへ続く)


2003年7月14日  読売新聞)
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