対談 百瀬義行×中田ヤスタカ 「ポータブル空港」はこうして生まれた百瀬義行(ももせ よしゆき)さん
中田ヤスタカ(なかた やすたか)さん
SF小説全盛期の1960年代に人々が思い描いていた未来を舞台にしたミュージッククリップで、9日に発売されるcapsuleのニューアルバム「S.F. sound furniture」に収録されている同名曲を、百瀬監督が映像化した。 両者は、今年はじめに放映されたハウス食品CM「おうちで食べよう。」シリーズで好評を博した名コンビ。新作に取り組むことになった経緯を語ってもらった。(依田謙一) 中田 「ポータブル空港」は歌がメインの曲ではないので、よくあるプロモーションビデオと違うものにしたいと思っていました。ただ、頭に浮かんでいる絵はあるけど、どうやって映像化したらいいか分からない。悩んでいたら、百瀬監督に「やろうか」と言っていただいて。 百瀬 人から聞いていましてね。中田君が困っているらしいって。ところが、申し出たのはいいんだけど、プロモーションビデオって作ったことないから、どういう打ち合わせをしたらいいか分からない。とりあえず、2人が考えている「未来感」のようなものを話したよね。 中田 僕からは、SF的ではあるんだけど、メカニックでなくあくまでシンプルできれいなイメージだとを伝えて。
――今も映画や小説で未来は描かれ続けていますが、60年代のものとどう違うのでしょう。 百瀬 当時は未来といえばワクワクするもので、こうなったらいいなという理想や夢があった。それがある時期、特に「ブレードランナー」(82年)あたりから描き方が変わってきたと思うんです。「こうしたい」より「こうなってしまうぞ」という要素が強まって、どんどんシリアスになってきた。 中田 60年代にあった未来像のいいところって、つじつま合わせをちゃんとしていないところだと思うんです。「こうしたい」が全面に出て、あとはまぁ、何となくという(笑)。でも、その大胆さやシンプルさが面白い。 百瀬 これは「おうちで食べよう。」でも意識したことなんだけど、単に懐かしむのはやめようと思ったんだよね。もちろん、描くのは「かつてあったもの」なんだけど、それを通じて見えてくる普遍性がちゃんとあるわけで、再現だけしても仕方ない。そうでないと、単に知っている、知らないということしか残らない。
百瀬 曲中で空港の仕組みについて説明が入るけど、細かいわけじゃない。でも、それを使っている人間の姿を想像したら、つかめてきたんです。気をつけたのは、中田君にあまりイメージを聞き過ぎないこと。話ばっかり弾んでいろいろ思いついても、流れによっては削らなきゃいけなくなる。そうやって「実現できなかったもの」が残るのって寂しいでしょ。 中田 そうしてもらってよかったと思います。自分の頭の中に忠実じゃない部分があるのがいい。そもそも、空港を細かく再現すればそれが面白いかというと怪しいでしょうし、僕の頭にあるのって世界観のほんの一部ですから。登場する女の子のワンピースの柄については注文しましたけど(笑)。(次ページへ続く)
(2004年6月8日 読売新聞)
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