「イノセンス」は、20年目の“宿題” 鈴木プロデューサーに聞く鈴木 敏夫(すずき としお)さん
その鈴木が現在知り組んでいるのが、来春公開予定の押井監督の新作「イノセンス」。鈴木プロデューサーに聞いた。(依田謙一) ――鈴木さんが「イノセンス」のプロデューサーを引き受けたのは、なぜですか。 鈴木 石川さんに騙されたんです(笑)。「プロダクション I.Gを変えたい。この作品を期に、会社として脱皮したい」と言われましてね。力を注いで作っている分お金がかかるんで、出資会社を探してくれないかと。「じゃあ出資会社を探すところまでは力になるよ」ということになり、何とか紹介できた。この時点で僕はお役御免のはずでしたが、それじゃおさまらなくなりまして。出資会社の中には「鈴木さんが続けないなら降りるよ」なんてところも出てきてしまった。そういう時に、石川さんは喋らない。目で訴えてくる(笑)。 ――思い切りあてにされていた。 鈴木 嬉しいことですが、これは悩みました。来年は「ハウルの動く城」(宮崎駿監督)も控えていますから。ただ、押井さんとの間には、20年前からひっかかっていることがありまして。 ――ひっかかっていること?
――押井監督を、娯楽路線に引き戻すということですね。 鈴木 あの人は、もともとそっちの方が得意なんです。ところが、顔合わせで、押井さんに開口一番「敏ちゃん(=鈴木プロデューサー)が参加するには、条件が一つだけある。それは、作品に口を出さないことだ」と言われた。 ――喧嘩を売られた。 鈴木 売られれば燃える方ですからね。僕はこう言いました。「中身に口を出すつもりはない。ただし、一つだけ気に入らないことがある。このタイトルはよくない」と。当初は「攻殻機動隊2」というタイトルだったんです。海外でいくら評価が高くても、日本で12万人しか動員していない作品の続編が、売れるはずがないんです。僕は、代わり「イノセンス」というタイトルを提案しました。 ――押井監督の反応は。
――再びゴングが鳴った。 鈴木 それで僕は「イノセンス」に合うんじゃないかと、ジャズシンガーの伊藤君子さんの歌う「フォロー・ミー」という曲を聴いてもらうことにしたんです。押井さんは「気に入らなかったら、途中でも席を立つ」って。頑固な人なんですよ。ところが、彼はじっと最後まで聴き入ってくれました。 ――2連勝ですか。 鈴木 いや、正確には3連勝です。台詞も一つ変えてくれって頼みましたから。押井さんは「来た来た」って言っていましたけど(笑)。これは、内容に口を出したんじゃありませんよ。間違っている部分を正したんです。(次ページへ続く) (2003年11月4日 読売新聞)
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