――監督は特にどの点を気に入って使いたいと思ったのでしょう。
谷川 でも、それが宮崎さんのいいところだと思いますよ。僕は彼の作品に興味を持つようになったのは「もののけ姫」(1997年)あたりからなんだけど、あれだって、ちっとも説明的じゃない。 ――「もののけ姫」は、それまで宮崎監督が得意としていた明快な起承転結を崩し始めた作品でした。 谷川 宮崎さんの作品で表現されているのは彼の意識下のものだと思うんです。僕は詩をやっているからどうしても自分の方に引き寄せて考えてしまいますが、優れた詩、特に現代詩は意識とか理性から出てくるんじゃなくて、意識下の世界から出てくる。その代わり分かりにくいけど、無意識に引かれるし、親近感を覚える。 木村 なるほど。 谷川 この点は宮沢賢治に通じると思います。彼の書いた「農民芸術概論綱要」に「無意識即から溢れるものでなければ多く無力か詐偽である」という言葉が出てくるように、宮沢賢治も意識下を重視していた。やっぱり、人は頭で感動するんじゃない。「ハウル」だってそうでしょう。 木村 確かに「よかった」ということは覚えているけど、細かいストーリーは思い出せません。 谷川 そうなんだよ。でも、それぞれの場面は覚えているから不思議だよね。 ――映画版「世界の約束」の印象は。
谷川 映画のために作った曲じゃないことで、かえってうまくいっていますよね。僕はね、主題歌というものは、内容に寄り添いつつも、そこからは離れた部分がないといけないと思っています。そのことによって第三のものが生まれるようでないと面白くない。絵本の言葉を考える時と一緒ですね。説明すればいいってもんじゃない。物語だけでは説明できないものと歌だけでは説明できないものがうまく重ならないと。最近はそういう主題歌って少ないですけどね。 ――今後はどんな曲を一緒に作っていきたいですか。 木村 口ずさむことで生きていくことの励ましになるような曲を作れれば嬉しいですね。 谷川 そうだね。僕も心からそう思う。「ハウル」で感心したことの一つに、おばあさんを主人公にした映画ということがあるけど、おばあさんが幸せである世界を考えるということは、今とても大切なテーマなんじゃないかな。そうだ、僕らも今度、老人のための歌を作ろうよ。 木村 いいですね、それ。ぜひ、やりましょう。
(2005年1月25日 読売新聞)
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