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ジブリをいっぱい

【PIXARの秘密】活気引き出す広い社屋


カリフォルニアの広大な敷地に建つピクサー本社
 宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーと個人的な親交が深いピクサー副社長のジョン・ラセターは、来日すると必ず東京・小金井のスタジオジブリを訪れる。敬愛するスタジオの感想を聞かれたラセターはかつて、こう話したことがある。

 「こんなに小さな工房で、あの素晴らしい作品の数々が作られてきたのかと思うと、驚きだ」

 緑深い武蔵野の一角に位置するスタジオジブリは、日本人の目には決して「小さな工房」には見えない。職場環境も他のアニメスタジオと比べて恵まれている。

 だが、ラセターの言った言葉の意味は、ピクサーの本社を訪れると分かる。

 サンフランシスコの中心部から高速道路を飛ばすこと数十分。カリフォルニア州エメリービルにある約6万平方メートルという広大な敷地に本社はある。入所者を厳重にチェックするゲートをくぐると、その先が夢の工房である。

 余裕のある敷地は緑の芝生と木々で覆われ、まるで公園のようだ。従業員用のバレーコートやサッカー練習場もある。記者が訪れたのは2月末だったが、屋外の温水プールでは泳いでいる人もいる。

 この敷地の中央に、レンガと鉄骨にガラス張りの巨大なスタジオがある。正面玄関をくぐると、2階まで吹き抜けの広大なロビー。ガラス越しに陽光がさんさんと降り注ぎ、同社の映画に登場する人気キャラクターの巨大な人形が来訪者を迎えてくれる。

 ロビーの両サイドに食堂、郵便受け、娯楽室などがあり、このロビーを中心に左の棟に技術者の、右の棟にアニメーターのオフィスがそれぞれ配置されている。

 だが、この社屋の構造に込められた社員への細やかな配慮に気づく人はまれだろう。

 ピクサーがこの地に巨大なスタジオを建設、移転したのは2000年。当時、「トイ・ストーリー2」が爆発的なヒットを飛ばしていた。建設に際して、スティーブ・ジョブズ会長ら首脳陣が気を配ったのは、職場環境だった。

 「我が社にとって、財産は人材。それ以外では決してありえない」と、エドウィン・キャットムル社長は断言する。

 コンピューターを扱う技術セクションと、アニメーターの芸術セクションは、取り扱う器具の違いもあって別の棟にいるが、「それらの人々が部屋にこもらず、始終顔を合わせることができるように、会議室も食堂も中央に集めた」という。トイレもロビーに設置する徹底ぶりだ。

 観察していると、社員があちこちで話し込んでいる姿が見受けられる。昼時ともなると、本格的な釜でピザを焼く食堂に大勢の社員が集まり、上下関係の分け隔てのない、にぎやかな食事が始まる。

 若手アニメーターは、「ほかのチームに助言を求めることもよくあるし、会社が活気づいているよ」と話した。

 この本社施設の隣には「ピクサー大学」があり、社員を対象に3か月の講習を行う。キャットムル社長もここでキャラクターデザインと彫刻の授業を受けているが、「アニメーターを目指すには遅すぎた」と笑う。

 こうした環境は有能な社員をつなぎ留めるのに有効だろうが、「もちろんそれだけではない」と社長は話す。「給料も他のスタジオとさして変わらない。有能な人材は、いい作品にかかわりたいと思うものだ。結局は良質の作品を作り続けることが、一番の環境なんだ」(原田康久)


2004年4月20日  読売新聞)
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