「崖の上のポニョ」制作過程のDVD完成 宮崎監督 手描きが原点
宮崎監督の密着取材は2006年4月にスタート。前年末、NHKのドキュメンタリー番組をきっかけに、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと知り合った同局の荒川格ディレクターが撮影を始めた。 その際、鈴木氏が提示した条件は、手持ちカメラ1台での撮影と「宮崎の取材相手としてでなく、話し相手のつもりで現場に通ってほしい」という2点だった。 その意図を、鈴木氏は「宮崎は一人で閉じこもって作業をするのでなく、誰かに自分の思っていることを話しながら、まとめていくタイプ。『自分はこう考えるんだけど、どう思う?』と聞いて、反応を見ながら、考えを増幅させていく。だから、カメラを意識せずに話す宮崎を撮れば、彼の思考過程が分かるはず」と説明する。
「準備編」では、主人公、ポニョのキャラクターなどを描きながら、「とぼとぼと描き始めたけどまだだめですね。手が動くんだけど、頭の中で描いているものとは違う」と迷ったり、ポニョが生き物と化した波に乗って現れるイメージを描き終えて、「やっと本質の絵が描けた。これが映画の最初の1枚」と話したりする場面を収録。 ありふれたストーリー展開を「脳みその表面にある方程式にあてはめただけ」と拒み、「混沌(こんとん)とした脳みその中から新たなアイデアがひっかかるよう、釣り糸をたらしている」と宮崎監督。自身が語るように、イメージが具体的な絵コンテとなるまで、試行錯誤が繰り返される様子が興味深い。 2006年7月、海を舞台にした作品の発想の原点となった、広島県福山市の景勝地・鞆(とも)の浦を訪ねる場面では、ポンポン船が通る瀬戸内の海をながめ、構想を広げていく姿が映される。先月の鞆の浦の埋め立て・架橋事業を巡る裁判の判決に合わせて、読売新聞のインタビューに「僕が住んでいる埼玉県所沢市よりも、お年寄りが住みやすい町だ」と語っているが、お年寄りと親しげに「東京よりこっちの方が暮らしやすい」と話す姿から、監督の思いの深さが伝わってくる。 「絵コンテ編」では、作画作業と並行して、監督自身が絵コンテを完成させていく作業風景が、アニメーターや荒川ディレクターと監督との対話を通して、紹介される。特に、「アニメーションが苦手としてきた」海を手描きでどう描いていくかが見どころ。デジタル技術が追求する絵の精密さでなく、1枚1枚の絵を動かすことで海を表現しようと、「線は少なく、枚数を多く」とアニメーターに徹底させる姿勢に、宮崎監督の原点が垣間見られる。 映画とDVDのプロデューサーを兼ねた鈴木氏は、「宮崎が絵を描く姿は映像に撮ることはできるけど、その時に彼が頭の中で何を考えているかは、外から眺めているだけでは映像化できない。今回は、なんでもしゃべっている宮崎の姿を通して、それが可能になった」と語っている。 「ポニョはこうして生まれた。」は12月8日、DVDとブルーレイで発売。ブルーレイ「崖の上のポニョ」も同時発売。 (2009年11月25日 読売新聞)
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