楳図かずおインタビュー!!オムニバス映画「楳図かずお恐怖劇場」がいよいよDVDで発売されます!恐怖漫画の第一人者、楳図かずおの短編漫画を映画化したもので、3弾に分けて発売されます。 10月29日(土)より「蟲(むし)たちの家」と「絶食」、11月26日(土)より「まだらの少女」と「ねがい」が発売されます。12月22日(木)よりは「プレゼント」と「DEATH MAKE」が登場します。 この中で私は「絶食」を特にお勧めしたいと思います。高校生の女の子が突然、何の理由もなく太ってしまう物語で、ゾッとするようなホラーの中で、たくさんの女性が抱えている「自分の容姿に対する劣等感」を感動的に描いてくれます。 DVD発売に先立ち楳図先生がインタビューに応じ、これから出てくる「新しい恐怖」や、先生自身の外国語の勉強まで、さまざまなテーマについて話してくださいました。 ----------------------------------------------------- 質問:映画化される作品の選定に関わられたそうですね。どうしてこの6つのストーリーにしようと思ったのですか? 楳図かずお:もともと出ていた本「楳図かずお恐怖劇場」をそのまま映画化しようという話が来ましたが、僕から見るとまとめたのが昔の作品ばかりだったので、それ以外のわりと新しい作品も入れました。また「多分今回きっと成功するだろうから、この作品はのけておいてそれでほかのシリーズを作れるな」と、いろいろ考えて集めました。 質問:6月の読売新聞の記事に「それぞれのストーリーに特色がある」とコメントされていますが。 楳図:出てくるキャラクターの年齢が小学生から少しずつ上っていきます。上が「蟲たちの家」に出てくる若い夫婦。あと残酷な話もあるし、心理的なものもあるし、悲しい話もあります。 同じバリエーションの問題で、必ず映像化しやすいものばかりではなくて、「これを映像化できるかな」というのも入れたいと思って「絶食」を選びました。もともと6ページというすごく短い話で、脚本家が自分でアレンジしたのです。だから、どんなふうになっているか、ちょっと怖くて見ていないのです。(笑) 質問:原作に込めたメッセージをメモにして、スタッフに託したと聞いていますが。 楳図:本当に簡単に、例えば「まだらの少女」だったら、テーマが「憎しみ」に「インターネット」。そういうのを入れてほしいということでした。「蟲たちの家」は考え方によってものの見方がどんなふうにもなります。だから、どっちが悪いとか、どっちが良いというのは分かりません。そのような簡単なメッセージでした。 それ以外の指示は出さない方がいいと思いました。あまりたくさん出すと、どれが本当のコンセプトなのが分からなくなってしまいますから、一番大事なところだけを出しておいて、あとは映像を作る方の感性で作るしかないわけです。あまり細かいところまで口を出すと逆に嫌われる、反発されると思いました。 質問:「蟲たちの家」と「Death Make」に虫のような怪物が登場しますが、虫に対してはどのような思いをお持ちですか? 楳図:虫が大好きです。すごい気持ち悪いですけど、気持ち悪いやつが一番面白いと思います。ヘビもそうです。話の中でインパクトを持って、何もしゃべれませんけど、いろんなメッセージを出すことができます。 例えば、僕が虫だとしたら「僕のことって、ちゃんと分かる?分からないでしょう」というふうに、虫の方から謎々を皆に投げかけているような気がします。何でそんな格好なのか、何を考えているか、全然分からないところがすごく興味を惹かれますよね。 質問:先生は小さいころに昔の伝説を聞かされ、想像を刺激力するような場所で生活されていました。今の日本の子供はいかがでしょうか? 楳図:今は便利な世界でしょう。「安全のお城」に住んでいる生活なので、怖さに対する感覚がどんどんなくなっていると思います。同じように怖さに対する子供の感覚が麻痺している状態は、進化の原動力をなくしていると思います。 (大昔、生物が)無機質から有機質に変わった、つまり生命を持った瞬間から食べられるという恐怖感が生まれて進化していったと思います。どうやったら逃げようとか、どうやったら相手を倒そうかとか。 怖いという感覚は知性と感情の始まりだと思います。そういうふうに考えると、僕は恐怖に興味を持っていることは大変正しいことだと自分で思っています(笑)。 それと、自分を守るというアンテナもどんどん弱くなっていって非常に危ない状態だと思います。自分が危ないということが分からないということは、ほかの人が危ないと思うという感覚がないわけですから、平気でほかの人を傷つけたり、殺したりするようになるのではないでしょうかね。 質問:ストーリー・テリングに対する影響は? 楳図:新しいタイプの恐怖になっていきますよ。今までの怖さはだいたいDNAの中にきちんと組み込まれていました。それが今回「恐怖劇場」の中に出てくる怖さです。暗やみを見ると怖いとか、稲妻があると怖いとか。そんなものは説明しなくても、だれだって怖いと思いますね。 これまでの怖さは自然界から起きましたが、これから出るのは人工的な怖さです。放射能とか、ダイオキシンとか。目に見ても分からない怖さです。 質問:「人によって同じ出来事の解釈がだいぶ違う」というテーマは特に面白いと思います。 楳図:昔私は曽爾村(そにむら)という村に住んだことがあって、「まだらの少女」に出るヘビの伝説はその村の伝説です。そこにいた頃は、毎日絵ばかりを描いていました。いつも紙と鉛筆をもってスケッチをしていた子供でした。 最近、テレビで小学生と一緒に曽爾村を訪ねることがありました。下宿をしていた渡辺さんという方がお元気だったので、僕が「自分は子供のころ絵ばかりを描いていましたね」というインタビューをしようと思って行きました。 しかし、監督が聞くと「いいえ、毎日釣りばかりをしていました」と渡辺さんが答えました。監督があわててしまって、「本人が絵ばかりを描いていたと言っているから、そういうふうに言ってあげてください」と。「自分が思っている自分」と、「周りが見ている自分」が違うんだなと、そのときに気づきました。 僕と渡辺さん、2人だったらそれだけで済みますけど、いっぱい人の中にいる1人だったら、その人がどうかということは、周りの見方によってもっと違いますね。この人は「いい人」と言うかもしれませんが、「いや、悪い人です」、「怠け者」とか。人間がたくさんいると、そういう怖さが起きます。 そういうハッキリしない部分は人間の社会の中にあるので、それ自体がある意味でホラーですからね。ホラーは何だと突き詰めていくと、人間の心理だと思います。 質問:今外国語を勉強なさっていますね。英語、ドイツ語などの5ヶ国語も。その中で特に惹かれた言語はありますか? 楳図:楽しいのはイタリア語ですね。発音がくっきりしていて音楽的です。オペラがイタリアで生まれたのはよく分かります。歌って遠くまで飛べる発音の仕方ですよね。 外国語を聞いていると、生活がなんとなく見えてきます。イタリア語だったら、イタリアの人って10メートル先の人と会話しているなとかね。フランス人は横に座りながらしゃべっている感じです。ドイツ語を聞いていると、お父さんとお母さんが暖炉の前に座って火をくべながらしゃべっている大人の会話というふうに聞こえます。スペイン語はもうちょっと荒ら々しい感じですよね。 英語が世界でたくさん使われているのは、なるほどと思います。一番癖がない感じがします。 talk人をインタビューするとその人と話を交わしますので、今回は talk(話)を使った表現をご紹介します。 all talkこの表現が当てはまる人は口先ばかりで、自分の約束や脅しを実現させない人です。 例えば「バレエ・カンパニー」という映画の中で、バレエ団の芸術監督が「君のために新しいバレエを作る」と1人のバレリーナに約束します。夢のような話ですが、結局監督はその約束を果たすための努力を、ほとんどしません。英語で言うと、 He promises to create a ballet for her, but it's all talk.
空虚な自慢をする人についても使えます。例えば「ワインに詳しい」と胸を張っていても本当はあまり知らない人は次のように言われるかもしれません。 He claims to be a wine expert, but he's all talk. 同じ意味で just talk と言うこともあります。例えば、ある人が「上司に言いつけて君をクビにしてもらうぞ」と同僚を脅かしますが、結局こけおどしです。上司には何も言いません。英語では、 He threatened to have her fired, but it was just talk. all bark and no bite と言うこともありますが、これは約束や自慢ではなく、怒りや脅かしだけに当てはまります。犬にたとえた表現で、「ほえるけど実際には噛まない」というようなイメージです。 しょっちゅう部下に怒鳴りつけますが、実際には罰さない上司を想像してみましょう。新人社員がその上司に怒られて心配していたら、同じオフィスの人が英語で次のように慰めるかもしれません(もちろん上司の前では言いません!)。 Don't worry. He's all bark and no bite. bark is worse than one's bite というバリエーションも同じ意味で使えます。 Don't worry. His bark is worse than his bite. talk down tolook down on は日本語で「見下す」ことで、talk down to は言葉で似たような態度を示すことです。相手の知的レベルや地位が自分より低いかのように、横柄な態度で話す場合に使います。 例えば、アイビーリーグの大学を出たことを自慢していつも周りの人々に対して偉そうにしゃべっている人については、次のようなことが言えます。 He always talks down to people, just because he went to an Ivy League college.
人だけでなく、小説や映画についても使えます。例えば、私が「となりのトトロ」を気に入っている一番の理由は子供をバカにしないからです。深いテーマを、すぐれたセリフで伝えてくれます。英語では、 I like "My Neighbor Totoro" because it doesn't talk down to children. talk into「何かをするように、話して相手を説得する」ことです。例えば、同僚が「落ち込んでいるから今夜のパーティに行かない」と言ったと想像してみましょう。「少しでもいいから。気分転換になるわよ」と、行くように説得した場合、英語では次のように言えます。 I talked him into going to the party. 一方、talk out of は「何々をやめる、しないように説得する」ことです。例えば、友だちがどう見ても高すぎるブランドのドレスを買おうとしたら、私は考え直すように説得するかもしれません。「少なくとも今年の予算をもう1度調べてから買ったら」とか。 英語で言うと、
(2005年10月21日 読売新聞)
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