すごい挑戦ライディング・ジャイアンツ (2005) – Riding Giantsいきなりこんなことを言うのはちょっと気が引けますが、この作品はまさに、「バカと天才紙一重」ということを証明する作品です! サーフィンを描いたドキュメンタリー映画で、登場人物たちは毎日のように、わずか10秒ないし20秒の興奮のために命を賭けた危険に身をさらしています。彼らにとって、避難警告が出る日は最高の波に乗るチャンス!いい波がない日は、自分の存在すら見失いかねない、暗く沈んだ時間なのです。 一方、彼らの「天才さ」とは、私たちにはとうてい信じられない強じんな精神と勇気です。波の上で踊っているような彼らの優雅さと喜び、そしてもっと大きな波に乗るために必要な技術への探究心。その姿に「バカと天才紙一重」という言葉を覚えながらも、そうした二つの面は一つの感動に昇華され、私たちを圧倒してくれます。 「ライディング・ジャイアンツ」は、1940年代に誕生した南カリフォルニアのサーフ・カルチャーから、高さ18メートルもの波に乗る現在のサーファーたちまでを紹介しています。まさに息を呑むシーンがいくつも登場します - - 中でもあるサーファーが「ジョーズ」という波に挑戦する場面。確かにあの波はどう見てもただの水とは思えません。エメラルド色の美しい輝きを放ちながらもその名の通り、最高の捕食者、モンスターです。 笑ってしまう場面もかなりあります。1950年代にサーファーたちがオアフ島の北の秘境ノースショアを初めて見つけたとき、ナレーターがこう語ります。「サーフィンの世界にとって、これはコロンブスのアメリカ大陸発見に相当することだった」。思わず、「ええーっ?!(そんな大げさな…)」。さらに、別のサーファーがタヒチの巨大な波を見て「今日は死に日和だ」と思ったそうですが、またまた、「ええーっ?!(そんなアホな…)」。そう、まさにこの「ええーっ?!」が出てしまうようなコメントやシーンが結構あるんです。 ダスト・トゥ・グローリー (2006) – Dust to Glory"バハ 1000" というオフロードレースをご存知でしょうか?このドキュメンタリー映画を見る前まで、私はまったく知りませんでした。実は、伝説のF1ドライバー、マリオ・アンドレッティや、「大脱走」のあのスティーブ・マックィーンも虜にしたイベントです。毎年11月にメキシコで行われ、参加者は1000マイル(1600キロメートル)に及ぶ過酷なスプリントレースに挑みます。「思い切り生きたい」という想いを胸に、肩が脱臼しようが指の骨が折れようが、レーサーはあきらめることなく昼夜を問わず、砂漠と砂浜を走り続けるのです。 ほんの少しの参加費があれば、だれでも走ることができます。乗り物もさまざまです -- 企業スポンサーがついている高額のトラックがあれば、ガタガタになったフォルクスワーゲン・ビートルも登場します(あるチームは途中でダッシュボードをガムテープでとめています)。こんなレースの危険さと、参加者の果敢な挑戦は息を飲むほどの映像で見事に披露されています。例えば、1人オートバイのライダーが夜を走る光景 -- この人に見えるものは、自分のヘッドライトが照らし出す目の前の道路だけです。あとはすべて暗闇に飲み込まれていて、あたかも切り立った崖の隙間をぬって走っているかのようです。 この映画の監督は、「ステップ・イントゥ・リキッド」というまた別のサーフィン・ドキュメンタリー映画も手がけたデイナ・ブラウンで、昨年来日したときに撮影中のハプニングなど、さまざまなことについて話してくれました。特に面白かったのはコースにあふれている silt (微砂)の話です。この映画のためにカメラを借りたとき、「また水の撮影じゃないよね?」とレンタル会社から聞かれました。もちろんNoと答えた監督にレンタル会社は安堵しました。しかし「ほこりだらけの道や、猛スピードで走る車のそばに置くことは言わなかった」とは言わなかったそうです。実際、現場のsilt はあまりに細かく、カメラのレンズの中は言うにおよばず、どこにでも入ってしまいました。結局カメラを掃除する料金として、13,000ドルないし14,000ドル(153万円から164万円)もの請求書がレンタル会社から届いたそうです。 今回のせりふバハ 1000 は、参加者がとても汚れてしまうレースです。そこで今回は dirt (泥、土)を使った表現をご紹介しましょう。 dirt cheapこの表現は「ただみたいに安い」という意味です。泥はどこにでもありますので高い値段はつかない、というようなイメージです。 DVDが当たり前の今、皆さんは最近新作映画をVHS で買ったことはありますか?確かにビデオ屋に行くとVHSはありますが、ほとんど中古の作品ばかりで300円、500円とか非常に安い値段で売られています。英語で言うと、 VHS movies are dirt cheap these days. treat like dirtこれは、できれば使わずにすんでほしい表現です。直訳すると「泥のように扱う」ということで、「相手を侮辱する、ひどく扱う」意味です。 たくさんの人が「アルプスの少女ハイジ」をご存知だと思います。途中ハイジが都会のお金持ちの家で生活することになり、そこの意地の悪い家政婦、ロッテンマイヤーさんにハイジはいつも文句を言われ、辛い時期を過ごします。英語ではつぎのように言えます。 Mrs. Rottenmeier treats Heidi like dirt. pay dirt砂金を採るときに坑夫が土砂をふるいにかけます。pay はこの場合「利益をもたらす」という意味で、pay dirtはもともと「引合う採掘地」を意味しました。しかし、今は「ほり出し物」や「大儲け」という意味で使われています。 「ほり出し物を見つける」や「大儲けする」のは、hit あるいは strike と言います。例えば、2003年に「パイレーツ・オブ・カリブアン」が大ヒットを納め、去年はその続編がアメリカで公開後 10日間で、これまでの最高の2億ドル(約234億円)を突破する記録を樹立しました。 制作会社ディズニーにとってこのシリーズはまさに「金の卵を産んだガチョウ」ですね。もう1つの言い方は、 Disney hit pay dirt with the "Pirates of the Caribbean" movies. もっと身近な例を取り上げてみましょう。先日私は新しい靴を探していましたが、なかなか気に入るデザインが見つかりません。2週間かけてようやく銀座の店で見つけました。英語では、 Finally, I struck pay dirt at a Ginza shop. give a dirty look「人をにらみつける」ことです。相手に怒った場合やあきれた場合に使います。 数年前、ある俳優の来日記者会見でこの表現にぴったりのハプニングがありました。通訳者が質問の訳を間違えたため、「あなたはもう老けている、年だ」というような英語になってしまったのです。さすがに俳優もこれには腹を立てたようで、質問をした若い女性記者をにらみつけていました。英語では、 The actor gave the reporter a really dirty look. dirty trick「卑劣な欺き、汚いまね」という意味です。サッカー選手たちはしょっちゅうダイビングして審判をだまそうとしてます。私はどうしてもあれが嫌いでたまりません。 I hate it when soccer players use dirty tricks to fool the ref. The Watergate scandal involved a lot of dirty tricks. dirty joke という表現もありますが、これは「いやらしい冗談」を意味します。実は、私の父はこんな冗談を言うのが大好きなのです。
(2007年11月30日 読売新聞)
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