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「ザ・ムーン」の監督インタビュー

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「ザ・ムーン」
1月16日(金)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国ロードショー
© Dox Productions Limited 2007. All rights reserved.

 今回のお勧めは、アポロ計画を描いたドキュメンタリー映画「ザ・ムーン」。月を歩いたアポロ11号のバズ・オルドリンや、あのアポロ13号のジム・ラヴェル船長など、飛行士たちが登場、これまでのインタビューとかなり違った面を見せてくれているのが興味深い点です。また思い切り笑わせてくれるところもあります -- ほとんどの人が人類で初めて月面に足跡を印したのはニール・アームストロング船長だということはご存じだと思います。では月の上で初めて「用を足した」飛行士はさて一体誰でしょう?(笑)

 もう1つ大きな見所は、一部史上初めて公開されるNASAの映像です。製作者はジョンソン宇宙センターなどで、40年間も冷却保管された映像の中からさまざまな宝物を発掘しました。例えば、アポロ11号飛行時のミッション・コントロール・センターの様子など -- アポロ計画の緊張と興奮が強力に伝わってくる内容です。

 実は先日、この「ザ・ムーン」のデイヴィッド・シントン監督が電話インタビューに応じてくれました。そこで今回はそのハイライトをご紹介したいと思います。

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 質問:この映画の途中で、1969年の月面着陸を祝っている日本人の映像が登場しますが、どこで見つけたんですか?

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デイヴィッド・シントン監督
© Matt Anker

 デイヴィッド・シントン監督:確か、当時作られたドキュメンタリー映画「Space Walk One」に入っていた映像です。NASA自身が出資した作品です。パリや東京など、世界中の人々が月面着陸を見ている映像は全部その「Space Walk One」から取ったんです。

 質問:それが誰なのかご存知なんですか?

 監督:いいえ、知りません...いい質問ですが(笑)。なぜか女の子たちは皆水着を着ているんですよね。

 質問: アポロの飛行士たちには常にインタビューの依頼が殺到していてとても忙しいから、参加してもらうためには「この映画はほかのプロジェクトと違う」と説得しなければいけなかったと、監督はこれまでのインタビューでコメントされています。具体的にはどのように彼らを説得されたんでしょうか?

 監督:彼らが大切だと思う話をする機会を与える、と説明したんです。ナレーションがまったくない、あなたたちの言葉だけになるんだと。飛行士たちにとってはそれが魅力的だったんだと思います。これまで膨大なインタビューの時間を費やしてきたにもかかわらず、結局1つか2つしか使われなかったなんてことがしょっちゅうでしたからね。彼らが感じたことや事実が誤って伝わってしまうような文脈の中で使われたこともあったようです。

 月に行くことが当時の自分にとって一体何を意味していたのか、そして今はそれをどう考えているのか、それを伝えたいんだと説明したんです。さらに大規模な映画を通じてはっきりと考えを述べられるいいチャンスでもあるんだとも言いました。すでに年をとっていることを彼らも認めていましたし、事実だけではなく当時の雰囲気とか気持ちとかも併せて伝えられるいい機会だと思ってくれたようです。

 質問:当時飛行士たちが抱いた感情は長い間隠されてきたと、監督はおっしゃっています。その理由は何だったんでしょうか?

 監督:飛行士たち自身、元は戦闘機のパイロットであり、軍人ですから、自分の感じたことを気持ちを込めて言い表すことに慣れていなかったんでしょう。しかし年を重ねていくと本心をそのまま打ち明けたいと思うようになる。これまでドキュメンタリーを作ってきて、年配の方が一番いいインタビューをしてくれるんです。見栄や見せかけがすべてなくなって、本当に大切なことだけが記憶としてしっかりと留められている。つまり自分にとって本当に大切なことをね。

 それと、私たちが作った環境も効果があったと思います。単にインタビューをしただけではなく、多くの時間を一緒に過ごしたんです。インタビューは本当に長いものでした。8、9時間も続き、2日間にわたってかなりのインタビューを行ったのは事実です。だから奥さんや家族の方たちと一緒に食事に行ったり、準備している間なるべく彼らを知るように努力したんです。

 また、事前に彼らの歩んできた人生を徹底的に調べておきました。ですから事実に対する質問の答えはすでに分かっていました。ジーン・サーナンがインタビューでこんなことを言ってくれました。「普通ならあれこれ説明する必要があるんだけど、今回はただ話すことができるから楽しい」てね。誰が何の任務に参加したのかとか、任務の技術的側面を説明してくれとか、そういうことは必要なかったんです。

 おかげで私が最も興味を抱いていたこと、つまり彼らがなぜこの計画に参加したのか、どんな気持ちだったのか、そういうことに集中することができました。一人の人間として最も印象に残った瞬間は?友情とは?畏敬の念を抱いた瞬間は?等々。これまでアポロ計画や飛行士たちを描いた多くの作品は、多かれ少なかれ「危険と恐怖」を主なテーマにしています。「未知なる危険...それゆえに飛行士は己の恐怖心を克服しなければいけなかった...」という具合にね。おかしなことにある映画の中で、ナレーションは危険と恐怖を語っているのに、登場する飛行士はそれとは対照的に平然と話をしてる...。

 厳しい訓練を受けた戦闘機パイロットである彼らは、すでに自分の恐怖心をコントロールできるようになっていたようです。バズ・オルドリンが映画の中で「なぜロケットに乗ったことがない人は皆、『怖くなかった?』と聞くんだろう」と言っています。またマイク・コリンズは「恐怖はなかった、少し不安だっただけ。最初から最後まで少しだけ不安だった」と言っています。しかし、「少しだけ不安」なんていう感情表現は映画には使えません。例えば、007映画でボンドの上司のMが「この状況はちょっと不安だ」なんて言ったらどうです?(笑)。だからたくさんのフィルムメーカーは「そんなんじゃ物足りない。もっとテンションを上げろ」と言うのはむしろ当然です。

 しかし、彼らが恐怖を感じていなかったからと言って、何も感じなかったというわけではありません。畏敬の念や喜び、予期しなかった非常に深い感情をいろいろ抱いていました。当時地球上の私たちは、「了解」とか「ありがとう、ヒューストン」などという、とてもドライで簡潔なやりとりを聞いたものです。しかしそのチャンネルは技術的情報を送信するためのものでした。ほかの目的のために使われることはめったになかったんです。

 ところが、飛行士同士の会話を録音した機内レコーダーを聞くと、「すごい!あれを見ろよ」など、自然な人間感情にあふれているんです。飛行士たちに対して、私たちはどこかロボットのようイメージを持っています。キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」に登場する飛行士もそんな風に描写されています。あの中で一番「人間らしい」登場人物はコンピューターのハルだと言われているくらいです。確かに感情を見せるのはハルだけですから。

 これまで飛行士をインタビューした仲間のフィルムメーカーから「がんばれよ。飛行士ってのは世界一つまんない輩だからな」と言われたことがあります。でも私は「そんなはずはない。別の星に行った人たちが面白くないわけがない」とずっと信じてきました。つまらなくしてるのは私たちの勝手な先入観で、それを持たずにインタビューをしてみると、彼らの人間としての様々な面が面白く見えてくるんです。

 質問:この映画を作りながら、アポロ計画の時代からアメリカがどのように変わってきたかを感じたとコメントされていますが。

 監督:興味深いことですよね。この映画を作ってからアメリカはまた変わったのです。一般公開を控え、2007年にアメリカ中の映画祭を回りました。多分50回ほどこの映画を上映し、終わったあと観客と質疑応答を行いました。そのとき、多くの人がケネディー大統領の話をしたんです。映画を作りながら私はケネディーにとても興味を持ち、彼の演説を2つ映画に出しました。彼が話術、言語の力を活かして人間の歴史を形作ることができました。国の行動を方向づけることができました。

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© Matt Anker

 質疑応答の中で、「現在のアメリカ政界でケネディーほど話術をマスターしている人はいない」と言っていたら、だれかが「オバマというヤツがいる」と言ったんです。イギリス人なので当時まだほとんど彼のことを知りませんでしたが、インターネットで彼の演説を聞いてみて「なるほど!」と思いました。ケネディーやチャーチルほどじゃないかもしれませんが、とても興味深い人物だと感じました。

 アメリカを回りながら感じたのは、この映画はアメリカ人にとって懐かしいだけではなく、寂しい映画でもあるということでした。ずっと泣いている人もいました。「どうして私たちは変わったの?どうしてあの頃のアメリカでいられないの?」というような気持ちがあったようです。明るい未来を楽観できた当時に、多くのアメリカ人は強い憧れと郷愁を感じていたようです。

 オバマの選挙運動と、それに対する国民の反応にもこの傾向は見られました。人々が再び国や社会に奉仕したいと願っているような感じを受けました。ケネディーと同じように、オバマが国に尽くすように呼びかけるチャンスがあります。これほど話術によって国民を奮い立たせることができた人は、ケネディー以来でしょう。政治はやっぱり対話ですね。

 ある意味でこの映画はアメリカにとって「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のような作品です。アメリカは再び1960年代の雰囲気を取り戻したいのです。思わぬ反応でした。

 いや、本当に「思わぬ」だったんですかね。映画というのは、必ず自分の時代の中で作るものですから。確かに編集しながら「アメリカについて語っているな」と思っていました。2006年、イラク戦争の真っ最中にこの映画を編集してたんです。

 質問:確かに、現在と類似していることは否めませんね。

 監督:その通りです。ベトナム戦争の映像を見ると「またか」と思います。途中でジーン・サーナンがとても感動的なコメントをしています。「ベトナム戦争で戦わなかったことに対して罪悪感があったけど、戦場に行った仲間から『いや、国としてわれわれが唯一誇りに思えることを君はやっているんだ』と言われた」と。

 質問:私が泣いたのはそのシーンでした。

 監督:たくさんの人がそう反応しました。私が行った多くの試写会で、観客がその瞬間で息を飲んでいました。編集しているときに多少意識していましたが、これほどの反応があるとは試写会をやるまで分かりませんでした。

 質問:国によって反応は違いますか?

 監督:イギリスではあまり反応がないだろうと予想していました。でもアメリカとほぼ同じでした。彼らも誇り、ノスタルジア、そして現状との類似点を感じていました。オーストラリアでもそうでした。やはりアポロ計画は世界現象だったということを証明しています。

 アメリカがやり遂げたのですが、世界中の人々と共に経験したということです。ビキニ姿の日本人女性たちを含めて、皆参加していました。飛行士たちは月にアメリカ国旗を立てましたが、その旗に「全人類の代表としてきた」というメッセージが書いてあります。

 マイク・コリンズが映画の中で言います。地球に帰って世界を回ったとき、「あなたたちアメリカ人がやった」とはだれも言わなかった。皆「われわれ人間がやった」と言ったのです。私にとってこれが映画の中で一番感動的、そして一番寂しい瞬間です。「私たち」という言葉がそれほど強調されるのを初めて聞いた、とコリンズは言っています。ほんの一瞬だったけど、素晴らしい時間だったのです。わずか5分の間、人間たちが共通の人間性を腹の底で感じたんです。「皆ひとつの家族だ」と分かったのです。残念ながら、そのあとすぐそれは忘れられていきました。

 私たち人間たちの問題はすべて「私たち」という言葉の使い方から生まれる、とも言えるのかもしれません。確かあるアフリカの言語では、「私たち」という意味の言葉は9つぐらいあります。「あなたと私」、「妻と私」、「自分の部族」などという「私たち」がそれぞれあります。「君以外、ここにいる人皆」という意味のもあります。

 私たちも複数の意味で使って、そこからすべての問題が生まれてきます。「われわれプロテスタントは」とか「われわれイギリス人は」とか。あるいは「われわれ男たちは」とか「私たち教養を受けている人間は」とか…。コリンズが使った意味、「われわれ人間」という意味でもっと使えばかなりの問題が解決されるように思うのです。

この映画の英語

 アポロ計画を描いた映画といえば、1983年の「ライト・スタッフ」という作品があります。この「ザ・ムーン」を見てからこの映画を見てみるとまた違った印象を受けるかもしれません。そこで今回は rightstuff を使った表現をご紹介してみましょう。

serve someone right

ある人にとって「当然の報い」、「いい気味だ」という意味です。例えば、金融機関で不正をした人を想像してみましょう。結局捕まり、服役することになります。その報道をテレビで見た人は「当然だ、人の金を盗みやがって」と思います。英語でと言うと、

Serves him right for stealing people's money.
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それほど深刻じゃないこと、しかも自分についても使うことができます。例えば、ある日雨に降られ、スエードの靴がめちゃくちゃになってしまいました。「出かける前に天気予報を見なかったから、自業自得」というのは、

Serves me right for not checking the weather report.
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right off the bat

「最初からすぐ」、「始めてからすぐ」という意味です。例えば、人と知り合ってからすぐ個人的な質問をしてしまう女性は、周りから「失礼ね、いきなりそんなこと聞いてくるんなんて」と思われるでしょう。英語で言うと、

She shouldn't ask personal questions right off the bat.
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また、知り合ってすぐ気があった2人については次の英語が使えます。

They liked each other right off the bat.
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if I remember right

「私の記憶が正しければ」という意味です。例えば、「彼女はたしか、ヨーロッパに引っ越していった」というのは英語で

If I remember right, she moved to Europe.
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right-side up

箱などの「トップがちゃんと上になっている」という意味です。例えば、レジ袋の中で生もののパックが動いて中身が漏れてしまうことがありますね。「ちゃんと上になっていることを確認して」というのは、

Make sure the box is right-side up.
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know one's stuff

「自分の仕事に精通している」、「抜かりがない」という意味です。例えば、コンピューターにトラブルがあったと想定して見ましょう。友だちが「ジョンに聞いてみて。彼はコンピューターに精通しているから」とアドバイスをします。英語で言うと、

Ask John. He really knows his stuff about computers.
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knock the stuffing out of

試合などで相手を「やっつける」、「完敗させる」という意味でよく使われます。例えば、ある野球チームが15対0で試合に勝ったら、

It was 15 to 0. They knocked the stuffing out of them.
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また同じ意味で kick the stuffing out of とも言えます。

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2009年1月9日  読売新聞)
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