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[評]ベン・フォールズ公演

甘く、激しく1時間半の物語

 米国の人気シンガー・ソングライター兼ピアニストが来日した。自ら率いるトリオ「ベン・フォールズ・ファイヴ」で成功を収めた後、ソロに転じ、2001年の初アルバムでギター・サウンドに挑んだり、自身一人だけのツアーに臨んだりと、柔軟な姿勢で活動してきた。

 そして、4月に出した新作と今回のツアーは、ピアノ・トリオに回帰。東京での公演を聴いて、やはりこの人には、このスタイルが一番似合うと実感した。

 彼のピアノは叙情性と、並のギタリスト顔負けの攻撃性を併せ持ち、緩急を自在に行き来する。強いタッチを駆使し、打楽器的な和音の連打で、ギターのようにひずませたベースや、手数の多いドラムスと掛け合い、ロックならではの豪快さを演出する。

 さらに、伴奏の2人による美しいコーラスが効果的に織り込まれ、小編成のハンデを感じさせない豊かな音を聴かせる。ピアノ・トリオというロックでは珍しい編成を、見事に機能させていた。

 多くの曲は、周囲と同化できない心情を、時に戯画化し、時に感傷的に描き出す。それが心くすぐる甘酸っぱい旋律や、憂いを帯びた歌声に乗る。フォールズのおたく青年風の外見も手伝って、その世界観は説得力があり、心にしみる。

 それだけに、時折爆発させる怒りの感情が、実に壮快なのだ。最後を飾った「ワン・アングリー・ドワーフ・アンド・トゥーハンドレッド・サラム・フェイセス」は、成功した男が、かつて自分を疎外した連中に悪態をつくという内容。鍵盤(けんばん)をひじ打ちし、パワフルに歌う姿が会場を熱狂させる。約1時間半のライブは、起伏に富む物語を感じさせてくれた。(西田浩)

 ――9月28日、中野サンプラザ。

2005年10月13日  読売新聞)
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