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★「まる子」誕生

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 9月7日に掲載したさくらももこさんのインタビュー。紙面では紹介し切れなかった特別編をお届けしています。(聞き手・石田汗太)

――『ちびまる子ちゃん』の舞台が1974年ですよね。さくらさんが小学3年生。

 ですね。ええ。

――舞台に74年を選ばれたのはなぜ?

 うーん……。小学3年生の時に教わった先生がものすごく厳しかったんですよ。その先生は「自分は3、4年生しか受け持ちをしないんだ。子供が一番子供らしいのがそのころだから」と言って、1、2年だとまだ小さすぎて、5、6年だと憎たらしいんだって。だから、一番子供が子供らしくって面白い3、4年生を受け持つんだというようなことを言うので、「あ、自分はすごく子供らしいんだ、今この年」と思ったんですね。その先生の言葉がたぶん印象に残ってたんだと思うんです。

――74年と言えば、宇宙や月がすごく近くなった時代でもあったような。

 いや、そんなことないです。もう月見て「遠いなァ」と思ってたほうで(笑)。

――東京と月が同じくらいに遠かった?

 そうそう。同じくらいの感じでしたね(笑)。県外って聞くだけで、ものすごいもう遠いなって。

――清水はどんなところですか。

 普通の町で、海と山に挟まれてる感じですね。

――毎日富士山が見えるわけですね。

 ええ。それだけは、本当に私は、清水はそこのところはいいと思いますね。どこの学校からでも、小学校へ行っても中学へ行っても、いつでも見えましたから。学校の帰りとか歩道橋ちょっと上ったらもう見えたし。

――富士山が成長過程で、何かの心の糧に?

 もし清水から富士山が見えなかったら、何かちょっと違ってたかもしれないですね。いや、毎日見てたら、富士山みたいに立派になろうとくらいは思いますよ、一回や二回は(笑)。立派だよなあーと思って。

――富士山に恥じない仕事をしようと。

 いや、そんな決意はね、まだ子供のころだったんで。でも励まされますよね、綺麗な富士山が見えてると。マラソン大会で走ってても、目の前に富士山があると、「あー、富士山があるから頑張ろう」くらいは思います。

――74年という時代性を何か考えましたか。

 いや、私が「まる子」を描き始めたころは21歳で、86年です。10年くらい前って、べつにそんなに昔っていう感じもしないですよね。だからわざわざそこの時代を選んだという気もしなかったんですよ。でも描いたころから、「すごい懐かしい感じがする」とか、35歳ぐらいの人が描いてるんじゃないかと思われてたんですね。地方性もあったんだと思いますけれど。清水にはまだ紙芝居屋がいたりしてましたからね。

――確かに、「まる子」は最初からかなりノスタルジックではありました。

 そうなんです。ノスタルジー作家と言われて、今40歳になって、やっと実際が追いついたという、なんかよくわからないことになって(笑)。

――清水の方って、みんなさくらさんみたいにシャキシャキしておられるんですか? 次郎長みたいに?

 私は次郎長大好きなんですけど、清水一家の浪曲もすごい好きでよく聴いて、虎造ファンなんですけど、でも、べつに私の齢で虎造のファンもいないですよね(笑)。最近ではもう年寄りでもあんまりいないかもね。いたとしても80過ぎくらいの人かも。

――子供のころから好きだったんですか。

 子供のころ、浪曲とか落語とか好きだったんですよ。お父さんは別にそんなに好きじゃなかったけど、でも、♪しみィーずゥ〜♪って、あの歌くらいはうたってたんです。で、私もそれを覚えて、大人が次郎長の話ししてたら聞いたりとかしてたんですけど、ほかの子供はそんなこと全然なかったんで。私は好きだったというだけで、それで、なんか知らないけど、清水なのに江戸っ子っぽいんですよ。べつに清水の人、そんなんじゃないし。

――さくらさんのご一族はもともと清水なんですか。

 代々清水です。私は、親とも感じが全然違うし、親戚見回しても友だちとも違うし、一人だけ勝手に江戸っ子ふうになってました、みたいな感じですね(笑)。

――お祖父さまは俳句とかは。

 いや、しないですね。あんな友蔵みたいないいお祖父ちゃんじゃなかったんですよ。

――アニメでは、友蔵さんとまる子の交流が印象的ですよね。

 そうですね。本当は学校の先生もすごい厳しくって、漫画で厳しい先生描くなんて、そんなの嫌じゃないですか。私は、やっぱり優しい先生が好きで、お祖父ちゃんだって優しいお祖父ちゃんがいいんですね。だからマンガの中ではいいお祖父ちゃんと優しい先生にしたんですけど。

――ヒロシは?

 ヒロシは、漫画で出てくるよりも、もっとしゃべらないです。

――性格はああいう感じなんですか。

 そうですね。なんかすごい大雑把ですね。全然気にしないんですよね。

――すごい人気ですね。

 私の描き方もいいんですけどね(笑)。あんなお父さんじゃないんですよ、全然(笑)。まあ、のんき者ですけどね。

――エッセーの中のお父さんのほうが近い感じですか。

 そうですね。気の利いたこととかを全然言わない父なんで、ただお酒を飲んでテレビで野球とか見て、で、風呂へ入って寝るという、そういうタイプですね。

2005年10月19日  読売新聞)
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