[評]開放弦(パルコ、リコモーション)切ない恋 巧みに描く不条理劇を思わせる奇抜な設定、少ない状況説明、乾いた笑い……。小劇場で注目される若手作家、倉持裕(ゆたか)が、初めてパルコ劇場に新作を書き下ろした。 交際していたことさえ周囲に知らせず、突然結婚した遠山(丸山智己=写真右)と恵子(水野美紀=同左)。何か事情があるらしい。遠山のバンド仲間、依代(京野ことみ)は、同じ仲間で理由を知っていそうな門田(大倉孝二)に探りを入れる。そこへ、都会からやって来た漫画家夫婦(河原雅彦、犬山イヌコ)が絡み、ちょっと不思議で切ない恋愛模様を繰り広げる。 倉持はこれまで、登場人物の背景をほとんど観客に知らせず、人物が置かれた状況の奇妙さや面白さで勝負してきた。それに比べると、今回は農村という設定や各人の職業などが丁寧に書き込まれ、芝居の情報量はかなり多い。 初めて見る観客には取っつきにくい印象もある倉持作品としては、かなり間口の広い作りと言える。見知らぬ世界に引きずり込まれる快感は乏しいが、それぞれの人物像が過不足なく掘り下げられ、ドラマに奥行きが出た。 もちろん、会話における微妙な間や勘違いによる笑い、なぜか登場人物が度々車にひかれてしまうという設定の不条理さなど、倉持らしさも随所に顔をのぞかせる。ただ、普通の芝居に一歩近づいた分、演技の腕や俳優同士の呼吸が舞台の成否を決める上でより重要になる。2日目に見た印象では、やや生硬な部分も垣間見られた。 手にけがをした遠山が恵子に手伝ってもらって弾いたギターを、ラストで恵子が一人で弾く場面が悲しく、切ない。倉持がこの種のラブストーリーでも、巧みな書き手であることを実感した。演出はG2。(多葉田聡) ――30日まで、渋谷・パルコ劇場。 (2006年7月19日 読売新聞)
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