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若手が飛躍、中堅は充実

 若手が着実に成長し、中堅も実力を発揮、ベテランは健在ぶりをアピールしたこの1年。新劇場のオープンが相次いだ一方、新劇集団の解散など、変化も浮き彫りになった。(多葉田聡)

■せりふ劇

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野田秀樹(中央)が作・演出も手がけた「THE BEE」の英語版(撮影・谷古宇正彦)

 1月の岸田國士戯曲賞選考会で最終候補となった作家たちを中心に、飛躍を遂げた若手が多かった。

 青木豪は「Get Back!」で集団が内側から崩壊する過程を丁寧に描き、「佐賀のがばいばあちゃん」で喜劇の才も示した。中島淳彦は「殿のちょんまげを切る女」で新橋演舞場に、本谷有希子は「偏路」で紀伊国屋ホールに進出した。

 赤堀雅秋は簡素な装置を使った「その夜の侍」、蓬莱竜太は過去と現在が交錯する「回転する夜」で新境地に挑戦。前田司郎は登場人物全員が死んでしまう、「生きてるものはいないのか」で異才ぶりを発揮した。タニノクロウはイプセンの「野鴨」で重厚な演出手腕も見せた。

 中堅の充実ぶりも目立った。野田秀樹は「THE BEE」の日本語版と英語版を連続上演。暴力と報復の連鎖をスピード感たっぷりに描いた。三谷幸喜の「コンフィダント・絆(きずな)」は画家たちの友情と嫉妬(しっと)を笑いを交えて活写。松本修は「審判」「失踪者」の同時上演でカフカの中・長編の舞台化を完成させた。

 坂手洋二の「ワールド・トレード・センター」は同時テロを独自の視点で描き、岩松了は「シェイクスピア・ソナタ」でシェークスピアの四大悲劇を巧みに料理。狂言師の野村萬斎は「国盗人」で、より現代劇に近い手法でシェークスピア作品に迫った。

 マキノノゾミは文学座の「殿様と私」で上質なユーモアを発揮し、白井晃は「三文オペラ」で階層社会を巧みに視覚化。ケラリーノ・サンドロヴィッチも、チェーホフの「三人姉妹」を連想させる「わが闇」で新たな領域を開拓した。

 ベテランも元気だ。井上ひさしの「ロマンス」はチェーホフの生涯をボードビル形式で描いた。別役実は「犬が西むきゃ尾は東」で総作品数130本に到達。蜷川幸雄も「ひばり」などで力強い手腕を見せた。

 俳優では森光子が中村勘三郎と共演した「寝坊な豆腐屋」が話題を集めたほか、「実験」の橋爪功、「殿様と私」の加藤武らベテランが気を吐いた。若手では「カリギュラ」の小栗旬が体当たりの熱演を見せた。

 新国立劇場芸術監督を7年間務めた栗山民也は、「氷屋来たる」の演出で任期のラストを飾った。後任の鵜山仁が企画したギリシャ悲劇を題材にした三部作は意欲的な試みだったが、集客などに課題を残した。

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劇団四季の「ウィキッド」(撮影・荒井健)

ブロードウェー「日本語版」加速

■ミュージカル

 ブロードウェー作品の日本版制作が、ますますスピードアップしている。現地でロングラン中の「ウィキッド」を劇団四季が上演開始。2005年のトニー賞6部門に輝いた「ライト イン ザ ピアッツァ」も早々と上演された。05年米国初演の「ウーマン・イン・ホワイト」では、笹本玲奈が輝きを見せた。

 いのうえひでのりが「TOMMY」、松尾スズキが「キャバレー」で翻訳ミュージカルの演出に挑戦。大竹しのぶは「スウィーニー・トッド」でミュージカルに初主演した。この作品でソニンが伸びやかな歌声を聞かせたほか、松岡充、西川貴教ら人気歌手のミュージカル挑戦も目立った。多くの俳優を育てた東宝の「レ・ミゼラブル」は日本初演から20周年を迎えた。

 宝塚歌劇団では、星組の安蘭けい、雪組の水夏希、宙(そら)組の大和悠河が、それぞれトップとなり、お披露目公演が行われた。同時期に3人が交代したのは5年ぶり。一方、花組の春野寿美礼は「アデュー・マルセイユ」を最後に退団する。

■海外交流・新劇場

 三谷幸喜の「笑の大学」のロンドン版「THE LAST LAUGH」の来日公演が行われるなど、海外との交流が盛んな1年だった。東宝のミュージカル「マリー・アントワネット」のドイツ版が2009年、現地で上演されることが決定。新国立劇場の「下周村」は日中共同で制作された。

 東京・日比谷の芸術座跡に東宝の「シアタークリエ」が開場=写真=。東池袋の「あうるすぽっと」など、新劇場のオープンが相次いだ。一方、演出家の木村光一が主宰する「地人会」が解散。経営悪化が原因で、新劇を取り巻く状況の厳しさを象徴する出来事となった。

■物故者

 新劇では、文学座の北村和夫、劇団文化座の鈴木光枝、劇団民芸の南風洋子らベテランが相次いで死去。沈黙劇で知られた劇作家の太田省吾も亡くなった。

2007年12月19日  読売新聞)
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