[評]宝塚BOYS(東宝、東宝芸能)男の汗 切なくも尊く“女の園”である宝塚歌劇団に終戦直後の一時期、男子部があった――。知られざる史実を笑いあり涙ありの青春ドラマに仕上げ、好評を博した舞台が、1年ぶりに再演されている。 帰還兵の上原(柳家花緑=写真右手前)が歌劇団の創始者に直訴したのがきっかけで男子部が創設され、1期生が集まって来た。電器屋の竹内(葛山信吾=同左から3人目)、ダンサーの星野(吉野圭吾=同奥)、歌劇団の元楽団員、太田川(山内圭哉)ら経歴はさまざま。それぞれが華やかな舞台を夢見てレッスンに励むが、男性を奇異に見る目や嫌がらせなど、いろいろな障害が立ちはだかる。 戦争に敗れた青年たちが経験する、さらなる苦難。各自の戦争体験を織り交ぜながら、結局は解散する男子部の命運を「第2の敗戦」として描いた中島淳彦の脚本が巧みだ。秘話の紹介にとどまらず、若者の夢と挫折を描いた普遍的なドラマに昇華させている。 演出の鈴木裕美は、再演にあたっても派手な趣向を加えたりせず、それぞれの人物像をじっくりと掘り下げる。けいこ場と男子寮を行き来するだけの展開は、下手をすると単調になりかねないが、そこをあえて我慢することで、ラストで男子部員たちが繰り広げる幻のレビュー場面が強烈な印象を残す。 大劇場の舞台に立つことのなかった青年たちが、夢の中で繰り広げる1度限りの華やかなステージ。実現しなかったと知っているからこそ、男優たちが流す玉のような汗が、切なくも、尊く感じられる。男子部員の監督役の山路和弘や元タカラジェンヌ役の初風諄らベテランの存在感も舞台を引き締め、再演の理由がうなずける出来栄えとなっている。(多葉田聡) ――31日まで、日比谷・シアタークリエ。 (2008年8月6日 読売新聞)
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