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[評]星の結び目(時間堂)

写真・松本幸夫

 激動の昭和が幕を閉じて20年以上が経過し、記憶は日々薄らいでいく。描かれるのは、太平洋戦争の前後を主な時間軸とした、ある商家の家族の変容。それは、明治維新以来、今なお日本人のアイデンティティーを揺さぶる近代社会を見つめ直す試みとみた。作者の射程は遠く、東日本大震災に接した人々への信頼や愛情が、せりふから伝わる。

 東京で氷屋を営む一家。夫を亡くして実家を切り盛りする静子(木下祐子)、心に未熟さの残る当主と妻、南洋熱に浮かされる弟、社会的成功者との縁談を嫌う妹、仕事の革新を目指すインテリの番頭、女性従業員、職人……。多様な人々が向かい合う内面の嵐が、時代状況の中で表現される。敗戦後、没落しても静子は生き続ける。戦後の、そして震災後の多くの日本人と同じく、「それでも」生きていく。純粋な生の希求が胸を打つ。

 吉田小夏の脚本は静けさに満ち、まるで一編の叙情詩。終盤、狂気が人々を駆り立てる場も含め、日常の営みを丹念に描く。劇団主宰の黒澤世莉(くろさわせり)の演出は、劇中人物に命を与えるため、静と動をうまく組み合わせ、詩を物語に変換した。だが、後半に入って一部の俳優の奇矯な言動で、劇場の空気が壊れたことを惜しむ。

 ともあれ、作中の文学的香気は心地よく、味わい深い。能舞台に橋がかり、間狂言のような独白と、細かな工夫も凝らす。劇団の伸びしろはまだ十分にある。(塩崎淳一郎)

 ――1月2日まで、こまばアゴラ劇場。

2011年12月28日  読売新聞)

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