現在位置は です

本文です

[評]金閣寺(パルコ)

痛み伝わる森田の身体表現

 三島由紀夫の代表作の舞台版だ。昨年、神奈川芸術劇場のこけら落としで初演された後、ニューヨークの舞台芸術祭に招聘(しょうへい)された。 

 吃音(きつおん)に負い目を持つ青年僧・溝口(森田剛=写真中央)は心を閉ざしがちで金閣寺の美を絶対視していた。だが、まぶしいような明るさの鶴川(大東駿介)、脚に障害を抱えるが不敵に生きる柏木(高岡蒼佑)と交流するうちに、理想と現実の間で悩み、自身を見下すように輝く金閣寺に憎悪を抱く。

 台本は伊藤ちひろと演出もした宮本亜門。3人の若者の関係性に焦点を当てて象徴的なエピソードを抽出して短い場面にまとめ、矢継ぎ早に見せた。

 ただし、単純なせりふ劇ではない。奇怪なボイス表現の山川冬樹、こまごました動きで場面を作る振付家の小野寺修二、猥雑(わいざつ)さと官能を醸す舞踏の大駱駝(らくだ)艦、映像の掛川康典と栗山聡之ら多彩なアーティストが参加している。彼らの表現を重ね合わせ、広大な舞台の様々な場所に、寺の庭、山門の上、歓楽街など詩的で鮮烈な情景を作った。

 特筆すべきは森田の果敢な演技だ。人気グループ・V6の一員が頭を丸め、罵倒されてオロオロし、上目使いで見上げる。壮絶な身体表現から痛みが伝わってきた。また、金閣寺を擬人化して山川に演じさせた。溝口が苦悩すると山川が肉体を誇示し、この世のものと思えない声で迫る。主人公を破壊にかき立てる美の正体が実感出来た。

 言葉、肉体、情景、光、音響が奔放に絡み合い、感覚を刺激する舞台だ。(祐成秀樹)

 ――2月12日まで、赤坂ACTシアター。

2012年2月1日  読売新聞)

 ピックアップ

トップ


現在位置は です