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文楽鑑賞教室で「沼津の段」

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師の得意演目に挑む竹本文字久大夫(左)と、三味線の竹沢宗助

親子の運命描く 大人の演目

 東京・三宅坂の国立劇場で毎年12月に行われている「文楽鑑賞教室」。近年は学生客が減る一方、大人の観客が増えている。

 あす4日から16日までの公演では、そうした傾向も意識し、大人向けの演目も用意されている。(多葉田聡)

 ◆文字久大夫 師匠の十八番に挑戦

 同教室は、主に中高生の団体客を対象に、1969年に始まった。だが、少子化の影響もあって、学生客が減ってきたため、3年前から一般向けのPRを開始。文楽人気の高まりも手伝って、大人の観客が増えてきた。

 今月上演する「伊賀越道中双六(すごろく) 沼津の段」は、剣豪の荒木又右衛門が義弟に助太刀した「伊賀上野の仇(あだ)討ち」を題材にした作品。呉服屋十兵衛は偶然、実父と再会する。ところがその娘は、十兵衛ゆかりの沢井股五郎を敵として狙う男の妻だった。父は自分の命を投げうってまでして、十兵衛から股五郎の行方を聞き出そうとする。

 親子の皮肉な運命や、敵討ちの陰で犠牲になる庶民の悲しみが胸に迫る名作。だが、前半に出演する竹本文字久大夫(もじひさだゆう)によれば、「侍も、お姫様も出てこないし、道行きもない。最高に地味な出し物」。そのため中高生にはなじみにくく、鑑賞教室での上演は珍しい。文字久大夫とコンビを組む三味線の竹沢宗助も、「旋律がある曲は旋律が助けてくれるが、(三味線の)手数が少ないだけに難しい。渋い演目です」と続ける。

 文字久大夫にとっては、師匠である人間国宝、竹本住大夫の「十八番中の十八番」に初めて挑むチャンスでもある。ふだんは演じる機会のない大曲に挑戦できるのも、中堅や若手中心の鑑賞教室ならではだ。

 「師匠の『沼津』を聞くのは好きですが、自分がやらせていただくなんて、あり得ないと思っていた。やると決まった時は真っ青になった」と文字久大夫。「現代に置き換えれば、十兵衛は、敵方にもらしてはいけない秘密を握ったバリバリの企業戦士。しかし、情に負けて、本当の父に明かしてしまう。会社員の方も泣けると思う」

 宗助は、高校時代に鑑賞教室を見たことが、国立劇場の研修生となり、文楽の世界に入るきっかけになった。

 「学生客の中に文楽を見慣れたお客さんがいると、『文楽はこう見るんだ』と教えるように、いつもより大きな拍手をしてくれたりする。僕みたいに、文楽に興味を持つきっかけになればうれしい」と話す。

 実演付きの解説も、初心者には親切だ。文字久大夫は「一般の方でも、文楽をご存じない方は多い。江戸時代の大衆芸能ですから、難しいと考えないで見てほしい」と話している。

 「沼津の段」前半は豊竹呂勢大夫、鶴沢清二郎のコンビとの交互出演。「寿柱立万歳(ことぶきはしらだてまんざい)」も上演。(電)0570・07・9900。

2007年12月3日  読売新聞)
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