「能楽囃子体系」CDで復刻
36年ぶり、人間国宝もずらり
能楽太鼓方金春流の宗家、金春惣右衛門らが監修し、芸術祭大賞を受賞したレコード全集「能楽囃子体系」(1973年発売)が、CD全集として復刻された。
録音した演奏者34人中14人が人間国宝という豪華な顔ぶれ。惣右衛門は「名人の演奏を後世に伝えたい」と語る。(塩崎淳一郎)
この全集は、LPレコード6枚組み。発売翌年に2枚組みの「補遺編」も出た。惣右衛門は「当時も幾つか囃子のレコードはあったが系統的なものはなく、『体系』ほど音質が良いものも他になかった」と振り返る。
スタジオ録音ではなく、能楽堂での収録にこだわり、普段の舞台と同じ位置で演奏。天井や舞台脇のマイクで録音した。「演奏者から『舞台を勤める感覚で、録音している気がしないのがいい』と言われた」と惣右衛門。
小鼓の幸祥光、大鼓の瀬尾乃武(いずれも人間国宝で故人)を始め、今なお名人と語り継がれる囃子方の重鎮が参加した。「昭和の名人が一番集中していた時代で、みな快く録音に応じてくれた。今のように公演が過密ではなく、集まりやすかった。忙しすぎる現在では無理だろう。当時の名人の演奏を録音しておいて良かった、とつくづく思う」
惣右衛門は自身の演奏だけではなく、囃子を五線譜に直したり、楽器の図面を描いたりして、詳しい解説本も手がけた。「流派によって秘密主義の強い時代だったが、枠を超えてどんどん公にした。能の『朝長』の小書(演出)にある『懺法』のように、秘曲とされた曲の演奏には一部抵抗があったのも事実」と明かす。
復刻版は、狂言関係の囃子を数多く収めた「補遺編」も加え、能狂言の囃子全体を俯瞰できる構成だ。解説書の加筆訂正も行い、より充実させた。
発売元の日本伝統文化振興財団(東京)の大野寿子常務理事は「購入者のすそ野が広がっている。初回限定500セットに、過去の名人の謡などを収めた特典CDを付けているが、6月末の発売以降、売れ行きが好調。500セットを超えても特典CDを付けたい」と語る。
84歳の惣右衛門も人間国宝で芸術院会員。「後世に残したい演奏法は多い。後に伝えることが、伝統芸能の芸術性を守ること」と話している。(電)03・5414・5591。
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