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人形浄瑠璃文楽「日本振袖始」

大蛇で立ち回りの面白さ

「公演の成功祈願で出雲の現地を訪れ、神話の生まれる空気を吸った。演奏に膨らみがでると思う」と語る鶴沢清治(左)と桐竹勘十郎

 今年は古事記編さん1300年。素戔嗚尊(すさのおのみこと)八岐(やまたの)大蛇(おろち)の戦いが題材の人形浄瑠璃文楽「日本振袖始(ふりそではじめ)」が、2月4日から20日まで東京・三宅坂の国立劇場で上演される。三味線の人間国宝、鶴沢清治が近松門左衛門の原作を補い、曲を付けた作品で、人形遣いの桐竹勘十郎らが出演する。(塩崎淳一郎)

 原作の初演は1718年。1883年(明治16年)の上演を最後に本興行の上演は絶えていた。一方、作品の評価は高く、清治は「師匠の竹沢弥七が演奏会で録音したテープで聴いても迫力があり、共に演奏する鼓との絶妙な間合いは特に素晴らしい。名曲と呼ぶにふさわしい」と絶賛する。

 物語の舞台は出雲。いけにえとなる稲田(いなだ)姫のもとに悪女の岩長(いわなが)姫が現れ、大蛇となってのみ込もうとするが、酒を見つけて飲み干す。実は岩長姫を退治するための毒酒。毒が回った大蛇と素戔嗚尊が激しい戦いを繰り広げ、最後は稲田姫も助かる。劇中、勘十郎は岩長姫の人形を遣う。

 2年前、大阪の国立文楽劇場で復活上演。「物語を分かりやすくするため、近松の台本の前後を補い、素戔嗚尊と稲田姫が結ばれていること、そしていったんは大蛇にのみ込まれた姫が体内から出てきて助かる、という詞章を加え、音楽を付けた。立ち回りの面白さも出たと思う」と清治。今回は東京初演となる。

 勘十郎は「東京での公演に合わせ、人形のかしらと衣装を替えて、新たな気持ちで臨む。衣装を替えたり、角が出て口が裂け、目の色が変わるかしらで、視覚的に喜ばせたい」と語る。

 人形の所作の振り付けは、日本舞踊家の尾上墨雪(ぼくせつ)に依頼。墨雪が実際に踊ってみせる姿を参考に人形の動きを組み立てた。「一から考えるのはエネルギーが必要で、本音をいえば大変だが、こうした積み重ねが文楽の演目を増やすことにつながる」と、未来を見据える。

 人形を動かす技術だけでは観客に作品の魅力を伝えられない、というのが勘十郎の信条だ。「人形の役の気持ちを作り、役者になったつもりで遣わないと、単なる技術屋に陥る」。本番を前に心を引き締める。

 上演に尽力してきた清治は、「名曲を残すため再演を重ね、作品を練り上げたい。人気のある古典も大事だが、観客に飽きられないよう新しい作品を送り出したい」と意欲的だ。2月公演はほかに、「義経千本桜」「菅原伝授手習鑑(てならいかがみ)」など。(電)0570・07・9900。

2012年1月30日  読売新聞)

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