向田邦子賞を受賞する脚本家 大森 美香(おおもり みか)生きのいい 人間の本音を![]() 「これからが勝負、頑張ってもらいたいと言われたようなもの。責任を感じます」 優れたテレビドラマの脚本に贈られる向田邦子賞に輝いた。受賞作は、1〜3月に放送された「不機嫌なジーン」(フジ系)。「オスとは浮気をする生き物」という生物学の俗説を学び、男性不信に陥りながらも、恋に仕事に奮闘する女性研究者(竹内結子)の姿を描いた。「清潔でリズミカルなセリフ」「科学の世界にドラマを求めた画期的な試み」などと評価された。 「例えば虫でも複雑な感情があるのではと思わせる行動をとり、それは全部遺伝子を残すためという。遺伝子に影響されながらも、それだけじゃない人間の本音を、おもしろおかしく書ければと思った」 その上で、「昨今の恋愛ドラマにありがちな、人が死んだり、不治の病にかかったりというのではなく、ちょっとした心の触れ合いやすれ違いで起こるドラマを追求した」と続ける。 初めて自分自身で企画から立案し、昨年4月から準備を始め、夏には小学生向けの昆虫の自由研究講座にも通って書き上げた。「多くのドラマが、放送局の意向で慌ただしく制作される中、一から作れたのは幸せ」と振り返る。 脚本を作り上げるのは「骨を決め、それに血を通わせていく作業」と言い、「生きがよく、説明調のセリフにならないよう」、パソコンに向かい、セリフをしゃべりながら書く。「セリフが長くて私がむせると、脚本の登場人物もむせるという設定にするんです」と笑う。 福岡県出身。短大を卒業後、地方局東京支社の事務職に就いたが、制作を志し、フジテレビの契約社員に転職、ドラマの制作を現場で一から学んだ。自分で演出してみたい一心で、深夜ドラマの脚本を試行錯誤で書き上げたのがきっかけで、脚本家への道を歩みだした。脚本補助などを経て、「カバチタレ!」(フジ)、「きみはペット」(TBS)などの話題作を執筆。昨年から「インストール」など、映画にも進出した。10月からのNHKテレビ小説「風のハルカ」にも抜てきされ、現在はその執筆に追われている。33歳。 「テレビドラマのいいところは、見ようと思えばすぐに見られる気軽さと、チャンネルを変えていて、つい手を止めて見てしまう偶然性。そんな運命的な出会いから、視聴者を引きつけ、さらに役者さんの魅力を引き出すような、いい設計図となる脚本を作りたい」と意気込む。 ドラマ界は低迷中。原作ものやリメークものなど、「視聴率の取れる安全な作品」が横行する。「閉塞(へいそく)感を感じています。今回の受賞でオリジナルの企画がやりやすくなればいい」 目標は「今度は何をやるのか」と期待される脚本家。「結婚、出産など人生経験を積んで細く長く、ドラマを作っていきたい」と力を込めた。(津久井 美奈) (2005年5月16日 読売新聞)
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