米朝、駆け引き激化 核無能力化中断交渉決裂、双方望まず 核プロセス停滞の懸念![]() 北朝鮮が26日、米国のテロ支援国指定解除延期に反発し、寧辺(ヨンビョン)の核施設の無能力化作業中断を発表したことで、核放棄プロセスは再び停滞する懸念が高まった。米朝間の見解の隔たりは依然大きいが、ブッシュ政権の残り任期中になんとか核放棄に向けた手がかりを得たい米国、一刻も早く指定解除という見返りを引き出したい北朝鮮の双方とも核交渉の決裂は望んでおらず、当面ぎりぎりの駆け引きが続く可能性が高い。(ワシントン 宮崎健雄、ソウル 浅野好春) ■解除せず米政府は、北朝鮮が寧辺の核施設の無能力化作業を中断しても、北朝鮮による核計画申告の検証手続きで合意しない限り、テロ支援国指定の解除はしない方針だ。 米国務省のソン・キム6か国協議担当特使は22日、ニューヨークで、指定解除の延期を決めて以来初めて北朝鮮当局者と会談した。ウッド国務省副報道官代理は、会談で「検証に焦点をあて、非常に詳細かつ実質的な議論を行った」としながらも、今後も協議が継続すると表明して、焦点の核検証で合意には依然至っていないことを明らかにした。 米政府は検証手続きに関する草案で、申告に含まれていない核兵器や高濃縮ウランによる核開発、他国への核拡散などの実態も検証することを要求。機材の自由な持ち込みなども盛り込み、北朝鮮の干渉を排除した検証体制を求めている。 ■本音ブッシュ政権は、過去の米朝交渉で、北朝鮮に妥協し、核兵器の申告をしないことなどを容認して内外から批判を浴びただけに、申告の検証では厳しい姿勢を崩していない。6か国協議の米首席代表クリストファー・ヒル国務次官補は「検証手続きは、申告の一部。国際基準に沿ったもので、多くを求めているとは思わない」と強調する。 ただ、複数の消息筋は「来年1月で任期が切れるブッシュ政権は、無能力化を完了し、『(核爆弾の原料となる)プルトニウムがもう増えることはない』とアピールすることで外交成果としたい」とみている。「無能力化作業の中断は当然予想しており、米政府は本音では今すぐテロ支援国指定を解除したいはずだ」との声もある。 ■「折衷案」このため、米国はいずれハードルを下げるとの見方が強い。 韓国の聯合ニュースは26日、外交消息筋の話として、米国が最近、中国と協議して検証手続き草案の「折衷案」を新たに作成し、22日の米朝協議を通じて北朝鮮側に提示した、と報じた。折衷案は、「核物質のサンプル採取、核施設への抜き打ち訪問、未申告施設に対する国際的検証基準の適用」といった米国が主張する基本線を変えないまま、北朝鮮が受け入れやすい「柔軟な」内容とされている模様で、検証の手続きや形式の面で北朝鮮の立場に配慮が示されたという。 一方、米国には北朝鮮もいずれは妥協するとの計算があるとみられる。「北朝鮮は米国が次期政権になる前に、指定解除をすませておきたいはずだ」(ビクター・チャ前米国家安全保障会議日本・朝鮮部長)とみているからだ。米朝双方はブッシュ大統領が退任する来年1月の「締め切り」をにらみながら、当面つばぜり合いを続けることになりそうだ。 北朝鮮 検証手続き「骨抜き」狙いか北朝鮮外務省報道官が26日発表した声明は、テロ支援国指定解除に踏み切らない米国を恫喝(どうかつ)し、検証手続きの中身を「骨抜き」にするなどの譲歩を引き出すことを狙ったものとみられる。今回の声明を機に、北朝鮮が一気に強硬姿勢に転じる可能性も排除できないが、6か国協議を通じた非核化プロセスはこれまで曲折を経ながらも進んできているため、北朝鮮の今後の出方については、なお慎重に見極める必要がありそうだ。 報道官声明は、米国がテロ支援国指定解除を延期したため、「やむを得ず対応措置を取らざるを得なくなった」と主張。当面、「核施設の無能力化作業の即時中断」を行い、「当該機関の強い要請に応じて寧辺の核施設を直ちに元通りに復旧する措置を考慮する」としている。「当該機関」は、核開発を担当する朝鮮人民軍や内閣機関の原子力総局などを指すとみられる。 ただ、北朝鮮は、無能力化について合計11の措置のうち3措置を除いて完了しており、核施設の復旧も「考慮する」としているだけだ。実際に復旧作業に着手するかどうかは、米側の今後の行動を見守る姿勢を示す狙いがうかがえる。 さらに、核施設の検証手続きをめぐっては、「ボールは北朝鮮側にある」(金塾(キムスク)韓国外交通商省朝鮮半島平和交渉本部長)と言われるように、すでに北朝鮮側が回答を示すかどうかに焦点が移っている。このため、現時点で北朝鮮が米国から譲歩を引き出そうとするなら、現実的には、検証手続きに関して米国が北朝鮮に示した厳しい提案の主要部分をそぎ落とす要求にならざるを得ない。 米国が譲歩するかどうかは不明だが、北朝鮮はそこに狙いを集中させていく可能性が高そうだ。 韓国政府当局者は26日、北朝鮮の報道官声明について「緊張を高め、自国に有利な方向に交渉を主導していこうとしているとみられる」と分析、北朝鮮がいずれ交渉に応じるとの見方を示した。 (
2008年8月27日 読売新聞)
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