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    東電本店、吉田所長に「なんか知恵ないの?」

     東京電力が6日に公開した福島第一原子力発電所事故直後のテレビ会議映像には、2、3号機の初期注水の失敗に至った過程が生々しく描き出されていた。

     政府の事故調査・検証委員会が指摘した、後手後手に回った対応が詳細に浮かび上がった。(肩書は当時)

     ◆3号機

     大津波の襲来後ほとんど注水できず、昨年3月12日に水素爆発を起こした1号機と異なり、3号機は13日まで外部電源がなくても稼働する高圧の注水系(HPCI)で原子炉を冷やしていた。そのためビデオ映像からは緊迫感は伝わらない。

     設備損傷の恐れがあったため、現場の当直が同日午前2時42分にHPCIを手動停止し、その約1時間後に吉田昌郎第一原発所長が本店に報告。原子炉の生命線である注水が途切れる緊急事態だったが、本店は「いったん停止、了解」など淡々とした対応に終始した。第一原発、本店ともに積極的に対応策を議論した形跡はなかった。

     現場に緊張が走ったのは同5時58分。既に1時間半以上前に燃料が露出し始めていたという試算結果に、吉田所長が「えっ、そんなに前なの?」と驚いた。さらに、炉内の圧力が高すぎて消防車では注水できないことを認識するなど、対応は後手に回った。そして、減圧に必要な弁を開くために必要なバッテリーを作業員の車からかき集めようとしたが、敷地内の放射線量が上がり、防護マスクが足りず車にさえ近づけなかった。政府事故調が問題視する約6時間半の「注水の空白」の実態がうかがえた。

     ◆2号機

     2号機のかろうじて動いていた高圧の代替注水系(RCIC)の異変は14日昼頃に見え始める。吉田所長は同日午後1時過ぎに原子炉の水位低下を確認し、計器類の点検などを指示した。「(1、3号機と)同じ思いをしたくない」との気持ちがあった。しかし、現場の連絡体制は混乱。海水注入の準備状況がつかめない事態に、吉田所長が「ドアホ。ったく。訳のわかんないのに聞くな」と、罵声を響かせる場面もあった。ただ、現場は「焦るような状態じゃない」と楽観視する雰囲気も漂っていた。

     午後4時34分、事態の深刻化が決定的になる。

     3号機と同様に、消防車による注水に不可欠である原子炉の減圧作業に入るが、「圧力の低下が見られません」との報告が現場から上がる。吉田所長は「もっと真剣に対応してくれよ」といらだちを募らせた。減圧できない状況は想定しておらず、本店の高橋明男フェローが「なんか、知恵ないの?」と発言。八方ふさがりの行き詰まった状況が浮かび上がる。同8時過ぎに「5分くらい前から水が入り始めたようです」と吉田所長は話したが、すでに炉心損傷は深刻で、同9時18分には圧力容器の損傷に至ったとされる。

    2012年08月07日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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