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    再生願い、南相馬の菜の花せっけんに…全国発売

    • 菜の花の生育状況を確認する杉内さん(4日、福島県南相馬市で)
      菜の花の生育状況を確認する杉内さん(4日、福島県南相馬市で)
    • ラッシュ郡山駅店で販売されている「つながるオモイ」(20日、福島県郡山市で)
      ラッシュ郡山駅店で販売されている「つながるオモイ」(20日、福島県郡山市で)

     福島県南相馬市の農地で栽培された菜の花の油を使ったせっけんを自然化粧品会社「ラッシュジャパン」(神奈川県)が作り、今月から全国で販売を始めた。

     東日本大震災の津波や東京電力福島第一原発事故の影響を受けた農地での農業復活に取り組む「南相馬農地再生協議会」が作った菜種油で、代表の杉内清繁さん(65)は「自信を持って安心・安全なものを作っていることを全国に伝えたい」と期待している。

     杉内さんは同市原町区で代々続く農家の7代目。震災前はコメを作り、有機栽培のトマトや春菊、チンゲンサイなどを出荷していたが、原発事故で農業ができなくなった。家族と避難し、2011年5月、知り合いを頼って栃木県下野市に移り住んだ。

     菜の花は土壌の放射性セシウムを吸着すると聞き、農地再生を願って栽培を始めた。月1回、栃木県から南相馬市までの約250キロ・メートルを車で通い、10月から0・7ヘクタールで育てた。菜種は栃木県の搾油所で搾って濾過ろかし、放射性物質が検出されないことを確認。14年に「油菜ゆなちゃん」の名前で売り出し、地域ブランド化を進めている。

     ラッシュジャパンは、福島の復興支援を検討する中で、この有機栽培された高品質の菜種油に注目した。15年夏、同社の担当者が協議会の事務所を訪れ、「せっけんの材料に使わせてほしい」と要請。安全性と品質を全国にPRできると考えた杉内さんらは快諾した。

     同社は約800キロ・グラムの菜種油を使ってせっけんを作り、全国約140店やインターネットで3月から数量限定で販売している。商品は、福島の再生を願う人々の思いから「つながるオモイ」と名付けた。

     20日、同社の郡山駅店を夫婦で訪れた福島市大森の男性(24)は「南相馬市の復興を支援するため買いに来た。店頭で試したら、泡が気持ち良く、しっとりした」という。店長の相原振子さん(41)は「菜の花に込められた生産者の思いも伝わるように説明している」と話した。同店では当初仕入れた分は20日に売り切れ、入荷待ちという。

     杉内さんは昨年末、南相馬市の自宅に戻った。協議会は今年、栽培面積を40ヘクタールに拡大し、同市内に搾油所を造る予定だ。「原発事故の風評被害で南相馬の農業は厳しい状況だが、かつてのように農産物を出荷したいという思いがある。菜種油で安全性を消費者に理解してもらい、地域の再生に向けた一歩にしたい」と力を込めた。

    2016年03月22日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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