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【核の脅威】[第7部] テロ指定解除 (5)不拡散体制 ゆがむ

 「北朝鮮の核放棄を目指す6か国協議は虚構に過ぎない。まずは、その事実を認めることだ」

 米中央情報局(CIA)の元アジア部長、アーサー・ブラウン氏が言い切った。

 「パキスタンに交渉で核放棄を認めさせることが可能だろうか。パキスタンも北朝鮮も核兵器保有に国家の存亡を託しているのだ」

 インド、パキスタン、そして北朝鮮。米英露中仏の5か国にのみ核保有を認める核拡散防止条約(NPT)体制を無視し、核保有に踏み切ったこれらの国々にどう核放棄させるのか。米国は方策を講じあぐねている。それどころか、これらの国との関係強化が米国の利益につながると見なせば、核技術を第三国に拡散させないとの条件で核保有を追認する姿勢さえ打ち出した。

 NPT非加盟のインドは、1998年に地下核実験を実施し、当時のクリントン政権から経済制裁を受けた。しかしブッシュ政権は、中国がアジア唯一の核保有大国として台頭するのをけん制する思惑もあり、インドが民生用原子炉について国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れるのと引き換えに、米企業がインドに核燃料や原子炉を輸出することを可能にする米印原子力協力協定を結び、インドを事実上の核保有国として認知した。

 米国がインドとの核技術協力を例外的に認めたのは、インドが核不拡散の実績では「優等生」と見なされているためだ。しかし、インドを「特別扱い」したことは、一部の国がNPTの枠外で核開発を推進することへの歯止めを失わせ、既存の核管理体制を空洞化させかねない。

 米国は「核の闇市場」を通じ核技術を「ならず者国家」に拡散させたパキスタンに対しては、インドと同様の扱いは認めない方針だ。だが、パキスタンが核開発をあきらめる気配はない。米民間研究機関「軍備管理・不拡散センター」のレオノール・トメロ核不拡散部長は、「パキスタンが友好国の中国から核協力を取り付け、核軍拡競争に突き進みかねない」と警告する。

 一方、北朝鮮の核拡散疑惑も依然払拭(ふっしょく)されていない。米政府は、2007年9月にイスラエルが空爆したシリア北東部の現場で、北朝鮮の支援で寧辺の黒鉛炉に酷似した原子炉が完成間近だったと主張している。

 しかし、米国は、拡散問題の検証は事実上棚上げし、テロ支援国指定を解除した。6か国協議を通じて北朝鮮の核廃棄を目指す米政府の姿勢に変わりはないが、北朝鮮が将来、何らかの「特別扱い」を受ける可能性も否定できない。米政府内部では、協議プロセスの崩壊を視野に、「核保有国としての北朝鮮とどう向き合うか」との議論が真剣に取りざたされようとしている。 (おわり)

 「核の脅威」第7部は、国際部・宮崎健雄、浅野好春、佐伯聡士、黒瀬悦成、石黒穣、政治部・松永宏朗が担当しました。

2007年10月18日  読売新聞)

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