(下)中露の戦略揺らぐ北朝鮮情勢が緊迫の度を高める中、中国は11日、胡錦濤国家主席の特使として唐家セン・国務委員をワシントンへ送り込んだ。唐氏はライス国務長官らと会談した後、ロシアに向かう。中国はこれまで北朝鮮問題では、戴秉国外務次官が各国を回る役回りだった。 中国外交を統括する唐氏自らの米露連続訪問は、中国が今回の事態に対し、いかに強い危機感を持っているかを映し出している。 中国は今回、北朝鮮の暴挙に怒り、10日にはニューヨークの国連本部で、王光亜・国連大使が「懲罰的な措置が必要だ」と踏み込んだ。「懲罰」との表現は、1979年にベトナムが中国寄りのカンボジアに侵攻した時、中国が懲罰として武力攻撃を加えた中越戦争を想起させる重い言葉だ。 中国は、6か国協議の議長国として核問題の調整役を担ってきた。「朝鮮半島の非核化」を目標に米朝双方の間で落としどころを忍耐強く探ってきた。自国の経済発展を最優先課題とする中国にとって、「朝鮮半島の不安定化」は絶対容認できないからだ。 ところが、北朝鮮は核実験に踏み切ったと表明した。中国にすれば、これは、朝鮮半島の「非核化」と「安定化」の同時達成を目指す自国の戦略に対する挑戦にほかならなかった。 中国は、だからといって、日米に完全に同調して北朝鮮に「強い制裁」を加える選択肢は取りたくない。自国が本格制裁に加わると、北朝鮮経済は破たんする。その時、金正日政権は滅亡覚悟で暴発しかねない。中国にとっては、これこそ悪夢だ。 米国が求める「強い制裁」を抑えて暴発を防ぎ、米朝双方に金融制裁問題の対話解決を促して6か国協議再開につなげる――。中国としては、やはりこの穏健なシナリオを何としても実現したいのだ。 ロシアの動きも中国と似ている。ロシアはこれまでイラク、イラン、北朝鮮への国連制裁にはことごとく反対してきたが、プーチン大統領は核実験発表直後から非難を繰り返し、10日には制裁を容認する姿勢に転じた。しかし、中国と同様、「強い制裁」までは進みたくない。 北朝鮮の核武装は、ロシアにとっても大きな脅威だ。その一方で、「強い制裁」で北朝鮮が混乱した場合、それはロシア国境地帯にも波及する。また、金正日体制が崩壊すると、ロシアがこれまで北朝鮮に持っていた権益は失われ、東アジアにおける存在感は一気に低下する。 これは、米国と肩を並べ得る「大国ロシアの復活」を目指すプーチン大統領にとっても大きな痛手だ。 北朝鮮に対する制裁容認に踏み込みつつも、「強い制裁」までは避けたい二つの大国。制裁に向けた流れが加速する中で、「非核化」と「安定」を同時に求める中露の戦略はいま、大きく揺らいでいる。 ◇ この連載は、政治部 伊藤俊行、ワシントン 坂元隆、ソウル 平野真一、北京 末続哲也、モスクワ 緒方賢一が担当しました。 (2006年10月13日  読売新聞)
|
PR情報今週のPICK UPPR
|
| ▲この画面の上へ |
|
会社案内|
サイトポリシー|
個人情報|
著作権|
リンクポリシー|
お問い合わせ| YOMIURI ONLINE広告ガイド| 新聞広告ガイド| 気流・時事川柳(東京本社版)への投稿| 見出し、記事、写真の無断転載を禁じます Copyright © The Yomiuri Shimbun. |