【国防利権】(下)商社任せ 危うい調達米同時テロ後の2001年10月8日、航空自衛隊のC130輸送機が、パキスタン・イスラマバード西方の空軍基地への着陸態勢に入った。アフガニスタンからの難民流出に備え、毛布やテントなどを空輸してきたのだ。だが前日の7日、米英軍がアフガン空爆を開始、国境に近い同基地周辺も戦闘状態に陥っていた。「操縦席から戦火が見えた。防御装備の貧弱なC130は、急降下して着陸した」と空自幹部は明かす。 防衛庁(現防衛省)は直後の12月補正予算で、C130にミサイル回避装置を緊急調達することを決定。入札したのは山田洋行(東京・港区)だけだった。他の商社から調達の提案はなく、同庁は、3機分を約1億6000万円で契約した。空自幹部は「対応が早く、結果的に、03年末からのイラク空輸活動に回避装置を備えたC130を飛ばすことができた」と話す。 だが翌年、空自が改めて回避装置を調達するため、別の商社から見積もりを取ったところ、金額は山田洋行の半分以下だった。4機目以降、同庁は別の商社と契約。現在、山田洋行が絡む3機分の契約について、水増し請求の有無を調べているが、ここに商社契約の落とし穴が見える。 ◎ 貿易手続きの煩雑さなどから、防衛省は1970年以降、米軍の許可がないと調達できない有償援助(FMS)方式を除き、一般輸入品は、すべて商社から調達している。昨年度の調達額は1158億円。調達全体の5・5%だが、「装備品の種類、開発状況など最新情報の一切が、商社任せだ」(同省幹部)と打ち明ける。 ミサイル回避装置も、空自がC130の装備品をきちんと把握していれば、緊急調達でも言い値にならず、海外メーカーとの直接契約も可能だった。だが、ここにも問題がある。2、3万人を擁する欧米の調達部門に比べ、同省の装備施設本部はわずか600人。商社に代わって装備品の情報を集め、契約内容を精査できる体制にはほど遠い。 ◎ 全調達額の9割をしめる国内調達はさらに複雑だ。三菱重工や川崎重工など大手は、営業、契約、納入などの部門を持ち、防衛省と直接契約するが、同省は、町工場など中小企業に装備品製造の多くを委ねているのが現実だ。 例えば、1台の戦車を作るのにかかわる企業は、現在1065社。「戦車は千社」と言われる理由だが、このうち、60%強が従業員100人以下。これらを束ね、同省と契約するのが商社で、技術はあっても原材料などの購入資金の乏しい町工場に代わり、銀行から融資を受けるのも商社だ。 一方、防衛省が業者に無理を言って調達を頼み込むケースもある。国際協力活動はその典型だ。04年のイラク支援の場合、政府の派遣決定は活動開始の1か月前。高温、砂嵐という環境下に必要な装備をそろえるには3か月が必要だった。 陸自の調達担当者は「予算の裏付けもなく、防弾チョッキや戦闘服など個人装備品2000人分を事前に発注した。派遣が中止になれば、業者には泣いてもらうしかないが、我々の足元を見て、調達価格は言い値に近くなる」と話す。 防衛装備品は年間2兆円を超す巨大市場だ。官業の癒着を生む調達制度の構造的な問題点を総括しなければ、不祥事を根絶やしにすることはできない。 (2007年12月1日 読売新聞)
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