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「変わる文化と習慣」…第4部スタート

 11月15日の読売新聞朝刊1面で、連載「食ショック第4部」が始まりました。食の安全の崩壊や食料品値上げなどで、家庭の食卓が不安にさらされる一方、食習慣や食文化の変化も進んでいます。第4部ではこうした変化を追い、背後にある食の簡便化や、家族とライフスタイルの変化などを描きます。

 発言小町でも、「ウチの食事、変わってきた?」のトピックで、ご意見を募集中です。ぜひご参加ください。
 ※紙面掲載記事は、新聞をご購読ください。掲載日の翌日以降は、「ヨミダス文書館」でも読めます。

どう食べる

2008年11月22日更新

少ない量をよくかんで

 飽食の時代といわれる現代、何を食べるかは重要だが、どれぐらい、どう食べるかが今、注目されている。適量、あるいは少量を食べて摂取カロリーを制限すると、健康によいこともわかってきた。ある食習慣を100年近く続け、今も教育分野で現役で活躍する「健康老人」を取材した。

「一口30回」が長寿の秘訣

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しっかりかむ食事法を100年近く続けている昇地さん=吉川綾美撮影

 「一口30回かむのはもう習慣。僕は羊羹(ようかん)でも30回かむんだ。よくかめば味が出る。虎屋の羊羹なのか、丁稚(でっち)羊羹なのか、30回かめばすぐわかるよ」――。そう言って破顔一笑、茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。

 福岡市の社会福祉法人「しいのみ学園」園長、昇地(しょうち)三郎さんは、今年102歳。自らを「百二歳児」と呼ぶ通り、子供のような好奇心とエネルギーを今も維持し、世界中で障害児教育や幼児教育に関する講演を続けている。

 「99歳までは助走、100歳からが本番」をモットーとする元気の秘密とは? 昇地さんの答えは、1)60年間続ける冷水摩擦 2)20年間欠かさない棒体操、そして 3)「一口30回かむ」食習慣なのだという。

かむ回数は成人平均の2倍以上

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「教師には笑顔が必要」がモットー。食事も笑顔で=吉川綾美撮影

 取材したのは、40日間12か国にわたる講演旅行から帰国した翌日、滞在先の東京のホテルでだった。だが長旅の疲れも見せず、昇地さんはホテルの部屋で、久しぶりの和食を静かに食べていた。

 1回に口に入れるご飯やおかずの量はごく少ないが、口に入れた後、モグモグと実にたんねんにかむ。試しに数えてみると、カマボコを飲み込むまでに45回、柔らかな半熟卵も30回かんでいた。一度、咀しゃく計を使って測定したところ、朝1200回、昼1000回、夜1600回の計3800回もかんでいたという。これは、成人の平均咀しゃく回数の2倍以上だ。

「僕はほおでも味わうんだ」という昇地さん、下アゴを動かす咬筋(こうきん)が発達しているのか、確かにほおに張りとつやがある。「教師には笑顔が必要」というモットー通り、自らの笑顔にも、かむことが一役かっているのかも知れない。

母の教え99年間守り、健康老人に

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自ら考案した棒体操の決めのポーズ

 昇地さんは北海道・釧路市で生まれた。生後半年で牛乳の中毒を起こし、虚弱体質となったため、心配した母親が、「あなたは一口食べるたびに、30回かみなさい」と厳しくしつけたという。そのため、昇地さんが覚えている母の最初のイメージは、「30回かめ、30回かめ」と繰り返す姿だという。

 3歳ごろにはその食習慣が定着し、今に至る。「僕は母の教えを99年守ったおかげで、世界一の健康老人になれたんだ」と感謝を込めて語る。

 「一口分が小さいし、よくかむので食事も遅い。僕が一生で食べる量は、ふつうの人の半分でしょう」という昇地さん。好き嫌いはなく、海外で肉料理が続いても負担ではないというが、「少量をよくかんで」という食習慣は変えないという。

「食の格差」で取材した三浦俊彦さんを念頭に、「サプリメントは飲まないんですか?」とたずねてみた。すると、「『わかもと』以外は特に飲まないね。何を食べるかではなく、いかに食べるかが最も重要」との返答。「僕の食習慣は、目的学ではなくメソドロジー・方法学なんだ」と強調した。

 よくかむことは、消化に良いだけでなく、脳の満腹中枢が刺激されて少量の食事でも満足でき、摂取カロリーが低くなる。こうした食事は最近、老化防止に及ぼす効果があるとして注目されている。また、脳の働きを活発にしたり、ストレス軽減にも効果的だとされる。

自ら考案の棒体操で1日がスタート

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パーティーの余興で黒田節を踊る昇地さん。拍手喝采を浴びた

 昇地さんが続ける健康習慣はほかにも、毎朝水に濡らしたタオルで体をふく冷水摩擦と、自ら考案した棒体操がある。棒体操には、ラップフィルムの芯にビー玉などを入れ、赤・黄・青の3色に塗った手作りの「やる気棒」を使う。全身をゆるやかに動かしたり、指先で棒を回したり、投げ上げて取ったりと、高齢者に配慮した動きが組み合わされている。

 「寝たきりでも、腕の運動から少しずつできる上、棒から出る音が脳を刺激する」といい、こちらも1日の始まりに欠かせないという。

 「人は余興を持たなくてはならない」も持論。取材した日の夕方、出版社の記念パーティーに招かれ、「黒田節」の舞を披露した。司会が「先生は世界一周講演旅行から昨日帰国したばかり」と紹介すると、会場からどよめきと喝采が起きた。

 充実した人生を送る昇地さんだが、実は「僕は意志が弱い人間。でも意地っ張りだから、冷水摩擦も『どうせ三日坊主』と家内から言われ、悔しくて続けた」とも。「人生は自分自身との戦い。ファイト、スピリッツを失ったらおしまいだよ」と、100歳からの本番人生を疾走する気迫を、最後に感じさせてくれた。(メディア戦略局IT事業部・松井正)

 
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「崩れる一汁三菜」の関連企画
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「食ショック」紙面連載一覧 「序章 縮む胃袋」
(全6回 経済面)
1) もの食わぬ人々(1月7日)
2) 消えゆく「一家団らん」(1月8日)
3) ユーロ高、欧州に競り負け(1月9日)
4) 安心軽視のツケ 信用に傷(1月10日)
5) 産直取引や通信販売拡大(1月12日)
6) 日本食新興国に活路(1月13日)
「農薬汚染」
(全3回 社会面)
上) 「生協 信用してたのに」(2月2日)
中) 中国食品の安全、内外に格差(2月3日)
下) 「安全にはコスト必要」(2月4日)
第1部「細る自給率」
(全5回 1面)
1) 3食国産…「質」「量」落第(2月5日)
2) 世界の胃袋が争奪戦(2月6日)
3) 「米どころ」も耕作放棄(2月7日)
4) 備蓄は安全保障策(2月8日)
5) 「食べる人」意識改革を(2月9日)
完全自給食実験
(経済面)
記者が体験 自給食「2日が限界」(2月5日)
識者インタビュー
(全4回 経済面)
1) 丸紅経済研究所長・柴田明夫氏(2月6日)
2) JA全中会長・宮田勇氏(2月7日)
3) 東京大学教授・鈴木宣弘氏(2月8日)
4) 横浜市立大学木原生物学研究所長・駒嶺穆氏(2月9日)
「お答えします」
(全5回 経済面)
1) タマゴの自給率、なぜ10%(2月19日)
2) 凶作に備え食料どう確保(2月20日)
3) 荒れた田んぼ なぜ放っておくの(2月21日)
4) 中国が食料輸入国に 日本は平気か(2月23日)
5) 株式会社で農業効率化できないか(2月25日)
読者の声特集
(特集面)
「農と食」に危機感(2月27日)
第2部「揺らぐ安全」
(全5回 1面、社会面)
1) 中国産不信、中国でも(3月18日)
自衛策は管理農場(3月18日)
2) 春巻き材料、27か国原産(3月19日)
「黄身が濃い」実は添加物(3月19日)
3) レバ刺しに「加熱用」(3月21日)
4) 卵に印字、安心のしるし(3月22日)
5) 危機管理、縦割りの弊害(3月23日)
第3部「飽食のコスト」
(全5回 1面、社会面)
1) 食品の25%が無駄に(6月19日)
売れ残りをえさに再加工(6月19日)
2) 「安易に回収」廃棄の山(6月20日)
嫌われる不ぞろいの魚(6月20日)
3) 行き過ぎた鮮度信仰(6月21日)
期限間近、アウトレットで(6月21日)
4) 25年前の缶詰、試食した(6月23日)
5) ゴミ「まだ食べられる」(6月24日)
飲食店、持ち帰り歓迎(6月24日)
第4部「変わる文化と習慣」
(全5回 1面、2面)
1) 崩れる「一汁三菜」(11月15日)
熊倉功夫氏 食事の「核」見失う(11月15日)
2) 金と時間、かけたくない(11月16日)
山極寿一氏 共に食べ、育む社会性(11月16日)
3) 「あの味」データで残す(11月18日)
畑江敬子氏 おいしさの知恵、継承を(11月18日)
4) 「私が楽しむ」食事作り(11月21日)
赤堀博美氏 「家庭料理」絶やさない(11月21日)
5) 「よくかむ」102歳で現役(11月22日)
あん・まくどなるど氏 地産地消意識を(11月22日)
第5部「コメ異変」
(全3回 1面、2面)
1) 日本狙う中国産米(12月14日)
2) 千葉産あきたこまち(12月16日)
3) 今や温暖化との戦い(12月17日)
過去の紙面掲載記事は「ヨミダス文書館」で読むことができます。
関連リンク:
農水省・食料自給率の部屋
JA・全国農業協同組合中央会
gooリサーチ

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