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「食ショック2010」身体の警告

 読売新聞の好評連載「食ショック」。2010年最初のテーマは「身体の警告」です。「料理がおいしく感じない」「体が重い」…。食生活の乱れなどでダメージを受けた体は、「変調」という名のシグナルを発します。一体、何を訴えようとしているのでしょうか。

まるでゲーム!楽しく鍛える「かむ力」

7月3日 
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「かみかみセンサー」をつけて給食を食べる児童(長野県喬木村で)=谷之口昭撮影

 レトルト食品の普及などで、軟らかい食への嗜好(しこう)が強まっている現代の食生活。子供や大人の間でかむ力の衰えが指摘されている。

 そんな中、子供たちのかむ力を鍛えるユニークな取り組みをしている小学校があると聞き、今春、長野県下伊那郡喬木村の喬木第二小学校を訪ねた。

 出迎えてくれたのが、同校養護教諭の安富和子さん(55)だ。安富さんが早速、取り出したのが「かみかみセンサー」(1万1550円)と呼ばれる装置。「子供たちにかむことを意識させたい」と安富さんらが開発、精密機器製造・販売の「日陶科学」(名古屋市)が2年前に商品化したもの。魚型のデザインがかわいらしい。

かんだ回数、センサーがチェック

 装置を取り付けてあごを上下に動かすとセンサーが反応して、かんだ回数を液晶画面に表示するという。

 そこで記者も試しに装置を利用してみた。あごを動かし続けて数分後にはあごの疲れとだるさを感じた。記者は昼食や夕食を5分前後で早食いすることが多い。「ふだん食べ物をよくかまずに流し込んでいるせいか」と考えさせられた。

 同校では月2回、「かみかみデー」と称して、給食の時間に全児童がこの装置を取り付け、食後にかんだ回数や食事時間を用紙に記録しているという。

 記者が訪れた日は「かみかみデー」ではなかったが、特別に3年生(当時)の児童8人にこの装置を使って給食を食べてもらった。給食のメニューは、ごはんとけんちん汁、チーズ豚肉巻きフライ、ホウレン草のサラダ。かみ応えがあるよう、けんちん汁の具(イモやニンジンなど)は大きく切り、キャベツなどの野菜はさっとゆでてある。

平均1170回、標準の2倍に

 児童が給食を食べ始めて約10分後、児童2人のかんだ回数が目標の1000回を超えた。回数に応じて電子音やメロディーが鳴り響き、何だかにぎやかな雰囲気。結局、8人のかんだ回数は平均約1170回、最も多い児童で1699回。食事時間は平均約21・6分だった。

 現代人の1回の食事でかむ回数は600回あまり、食事時間も10分あまりといわれている。児童のかんだ回数の多さや食事時間の長さに驚かされた。児童に感想を聞くと、「ゲームみたいで面白い」「よくかむとごはんが甘くなっておいしい」との答えが返ってきた。

 安富さんは「よくかむことが楽しみながら習慣づけられ、以前に比べて、児童のかむ回数が増え給食に時間をかけるようになった。早食いの解消や肥満防止にも役立っています」と話す。

 子供の範となるべき大人の間では、よくかまない食生活が長年続いた影響などで、顎関節症の病気や、歯の不正交合といった健康上の問題が起きている。よくかむことであごの骨や筋肉が発達し、唾液(だえき)の分泌量が増えて消化を促すなど健康維持にも役立つ。が、その効用は意外と知られていないのではないか。喬木第二小の取り組みを通して、「かむ」ことの大切さを教える食育を幼少期から実践する必要性を肌で感じた。(生活情報部 岩浅憲史)

「本物の料理」に3歳児が挑戦!

7月2日 

 この春、京都市伏見区の睦美幼稚園で開かれた3歳児クラスの料理教室を取材した。

 同園では2006年度から、神戸市の料理研究家、坂本廣子さんに依頼して、3〜5歳児のすべてのクラスで、年に数回の料理教室「キッチン・ラボ」を行っている。「ままごとが大好きな子どもたちに、本物の料理を体験させたかった」と、理事長の井上雅道さんは話す。

ママ顔負け?の包丁さばき

 「3歳の子が料理なんて出来るの?」――。最初は半信半疑だったが、カラフルな三角きんとエプロンを身に着けた子どもたちは、小さな手で子供用の包丁を握って野菜や肉を切り、電磁調理器で煮炊きもこなす。手のひらの上で豆腐を切るという高等技術まで披露してくれた。

 昨春、入園したての頃には、慣れない園生活の不安や、苦手な食材も食べなければならない緊張から、泣き出す子もいたという。が、計7回の教室を重ねるうちに、食材や料理に少しずつ親しみ、昆布やいりこ、レンコン、絹さやなどの食材の名前も、3歳児とは思えないほどよく知っている。

 昼前に料理が完成し、皆で「いただきます」。自分が食べられる量だけよそい、よそったものは残さず食べる決まりだ。この日のメニューは、筑前煮、菜飯と梅干しのお握り、豆腐のみそ汁。決して現代っ子好みのメニューとは思えないが、たくさんよそってぱくぱく食べている子もいた。

食べ物との“ふれあい”が大事

 一方で、少ししかよそわない子もいる。4歳の男の子は、野菜が大の苦手。以前は食べるのが嫌で泣き出すことが多かったが、この日はニンジンやゴボウも時間をかけて一生懸命食べている。

 この男の子の母親(41)は、「家では食べたことのないエノキダケを見て『これエノキや、幼稚園で食べた』と言うのでびっくりしました」と話す。

 料理教室で使う野菜の一部は、子どもたち自身が畑で栽培している。「栄養があるから食べなさい」と大人が口を酸っぱくして言うよりも、五感を駆使して食べ物を自ら育て、収穫し、料理する「本物の体験」が、子どもたちの食への関心を引き出すのかもしれない。(生活情報部 森谷直子)

子どもの飲み物で「まさか…」

7月2日 

哺乳瓶でイオン飲料、虫歯の原因に


前歯が溶けてなくなってしまった3歳男児。イオン飲料を毎日飲んでいたという(東京医科歯科大・三輪全三講師提供)

 東京医科歯科大小児歯科の高木裕三教授によると、乳幼児の虫歯は全体的に減少傾向にあるが、まだ離乳も完了しないような早い時期から前歯が虫歯になっている子ども(乳幼児)が目立つという。その主要な原因の一つがイオン飲料だ。

 「哺乳瓶でイオン飲料をだらだらと飲ませると、哺乳瓶の吸い口があたる前歯を中心に、歯全体に虫歯が広がりやすい」と指摘する。

 イオン飲料による虫歯の増加を受けて、医療従事者や業界も対応に乗り出している。

 小児科医や小児歯科医らで組織する「小児科と小児歯科の保健検討委員会」は2004年に、乳幼児のイオン飲料と虫歯について見解をまとめた。昨年11月、日常的に親子に接する保健師や保育士らに向けたガイド本「子どもの歯と口の保健ガイド」を出版した。

「注意表記を」メーカーに通知

 日本ベビーフード協議会はすでに06年、乳幼児用のイオン飲料を発売する加入メーカー6社に、だらだら飲みや就寝前の哺乳瓶での飲用への注意を、商品に表記するよう通知した。協議会は「イオン飲料は水替わりに飲ませるものではない。健全な市場を形成したい」と話す。

 しかし、赤ちゃん用品専門店には今も、乳幼児用のイオン飲料が水や麦茶と一緒に並び、まとめ買いできる段ボールも積んである。薬局でも健康ドリンクなどと一緒に売られている。虫歯や酸蝕症のイメージとはなかなか結びつかない。

血糖値10倍以上「ペットボトル症候群」

 飲料が子供の体をむしばむケースは、ほかにもある。

 ある男児(13)が、父親と2人で都内の小児科外来を訪ねてきた。意識はもうろうとし、受け答えもできなかった。

 検査をすると血糖値は1300r/dl。正常値の10倍以上、昏睡の一歩手前だった。 原因は毎日、1・8リットル以上は飲んでいたペットボトルの清涼飲料水。一度に飲みきれない量の飲料でも、ペットボトルなら小分けにして飲み続けることができる。こうして知らぬ間に糖分を取り過ぎ、糖尿病になっていた。

 糖尿病になると無性にのどが乾く。糖尿病に気づかず、さらに清涼飲料水をたくさん飲んで血糖値が急上昇し、昏睡(こんすい)や生命の危機が生じる状態は、「ペットボトル症候群」と呼ばれている。

 子どもの生活習慣病が専門の原光彦・東京都立広尾病院小児科部長は「3歳までに身についた食習慣は、途中で変えることはとても難しい。子どもが甘い飲料を欲しがっても、水やお茶で満足できるようにしつけることはとても重要です」と指摘する。(医療情報部・中島久美子)

ニッポンの味覚が危ない!

7月1日 

 味覚の衰えは、どんな食生活の人に現れるのだろうか。それを知るために、食育活動に力を入れる東京ガスの協力を得て、東京・銀座のキッチンスタジオなどで、味覚実験をすることになった。

 「苦味」「甘味」「塩味」「酸味」の4つの溶液を、判別してもらうという簡単な実験だ。溶液は人間がギリギリ味を感知できる程度の薄味にした。東京医療保健大学などの大学生と、東京ガスを退職された高齢者の合計116人が味覚テストに協力してくれた。

 小さなカップに透明な液体が次々と配られる。そして一つ一つ、舌の上に溶液を流し込み、味を確かめていく。「えっ?これって味がないよ」というような戸惑いや驚きの表情を見せながら、学生たちは真剣な表情で自分なりに感じた答えを回答用紙に答えを記入していく。私も挑戦してみたが、意外に分かりやすいのが苦味と酸味だった。かすかに感じる味と、その記憶を手がかりに、答えを頭の中で巡らせていく。私の結果は苦味は分かりにくく、当てることができなかった。

お年よりは甘味に敏感

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 116人の実験結果を集計すると、面白い結果が出てきた。参加者を学生と高齢者に分けて考えた場合、お年寄りは「苦味」「塩味」「酸味」の3つについては、若い人たちよりも正解率が低かった。高齢者の味覚は、持病薬の服用や食欲の衰えなどから、一般的に鈍化していくので、ここまでの結果はある程度予想通りだった。しかし「甘味」だけは若い学生(47・3%)よりも高齢者(77・0%)の方が、正答率が高かった。

 東京ガス「食」情報センターの小西雅子さん(学術博士)は「若い人たちの方が、甘さの強い炭酸飲料などに偏った食生活をしていることが一因ではないか」と分析してくれた。

 日本人が作り出した味の文化は、繊細な日本人独特の感性によって守り育てられてきたのは言うまでもない。子どものころ、アメリカ旅行から帰ってきた知人のお土産が、キャンディだった時、「なんだこの濃い味は」と、うんざりした経験がある。アメリカに限らず、海外の食材の味付けが大味であることに失望するという話は、よく耳にする。多少お世辞もあると思うが、学生時代にブラジル人留学生から「日本のケーキは世界一おいしい」と言われたこともある。薄味の日本食が、ヘルシー食として海外で評価されているという話も聞く。しかし、「濃い味」に包囲されつつある今の食生活で我々日本人が、繊細な味覚を維持できるかどうか。ちょっと心配になってきた。

シェフも実感「繊細さ失われつつある」

 この疑問を、フランス料理の第一人者として知られる星野リゾートの梶川俊一シェフにぶつけてみた。すると「日本人は味に繊細な民族ではあるが、その繊細さは急速に失われつつあるという印象だ。海外のものなどを貪欲に取り入れてしまっていることが一因なのかもしれない。日本人の食事のベースのようなものが、崩れかけているからだろうか。ご飯とみそ汁、納豆というような、素朴な日本食をベースにしながら洋食も加えて、生活に彩りを添えるというような形がもっとも望ましいように思う」との答えが返ってきた。

 フランス料理の巨匠が、日本食をベースにした食生活の重要性を訴える言葉に、重みを感じた。(経済部・栗原守)

驚き、反省…学生たちの声

 実験の結果を、若い学生たちがどのように受け止めたのか。実験後に、感想を寄せていただいた。意外にと言っては失礼だが、若い人たちは危機感を感じていることが分かった。そこで実験に参加した東京医療保健大学の学生たちの感想を紹介させていただくことにした(学年は今年2月現在)。


「調味料にごまかされている」頼高穂波さん(2年)
「甘味が識別できなかった。甘いものを日常的に食べているのと、化学調味料が原因だと思う。舌がごまかされてしまうことに戸惑いを感じる」

「自信なくしました」諏佐大志さん(2年)
「味覚テストの結果はよくなかった。予想外だった。自分の味覚に自信がなくなった。普段から薄味にして、味覚を慣らしていこうと思った」

「正解半分でイマイチ」鈴木聖さん(2年)
「テスト結果は正解半分でイマイチだった。しかし、前回挑戦したときはもっと悪かったので、味覚は改善するものだと実感した。薄味を心がけていきたい」

「全問正解!味覚に自信」酒井悠司さん(2年)
「テスト結果は全部当たったので、味覚に自信を持てた。テストを通じて感じやすい味覚、感じにくい味覚が分かった。感じにくい味覚には気をつけたい」

「批評しながら食べる習慣」遠藤彩花さん(2年)
「友人と外食するときには、材料に何が使われているかなどを想像し、意見を言い合いながら食べている。味覚を磨くには、よく噛んで食べることも重要だと思う」

「健康のためにも味覚維持を」山川舞子さん(2年)
「甘味と苦味を間違ってしまった。逆の味なのに分からなかったことに自信を少し無くした。自分の健康を保つためにも、味覚を衰えさせてはならないと思った」

「生きる上で欠かせぬ感覚」山本優美さん(2年)
「正解5割で自信を失った。味覚を磨くために、幅広く様々な料理を知り、食べに出かけたいと思う。私にとって味覚は、生きていく上で絶対に欠かせない感覚だ」

「味覚を磨きたい」鈴木嘉容さん(2年)
「味覚は大事なモノであると改めて気づいた。色々な味の経験で味覚は磨けると思うので、未知の料理を臆することなく食べていきたい」

「味覚以外も大切に」高橋亜弓さん(2年)
「私にとって、味覚とは大好きな食事をするために必要なモノだ。だが、管理栄養士を目指す上で、味覚以外でも食事を楽しめるように考ないといけないと思った」

「外食の濃い味が影響」斉藤清香さん(2年)
「現在の日本人は外食の濃い味に慣れてしまっている。将来、管理栄養士を目指す自分としては、どんなに忙しくても食事を味わうことを忘れない生活が大切だと思う」

「素材の味生かした料理を」加藤朋美さん(3年)
「正解は半分。外食が多く、味の濃いものを食べていることが原因だと思う。味覚を磨くために良く味わい、素材の味を生かした料理をしていきたい」

「もし味覚がなくなったら…」十時由希子さん(2年)
「味覚テストは楽しく感じた。自分の味覚を考えるきっかけになるので、多くの人に体験してほしい。もし、味覚が衰えてしまったら、食欲もなくなってしまうだろう」

「テストは全問正解。だけど…」高橋麗佳さん(2年)
「全問正解だった。私は食事の時に香辛料を周りが『ドン引き』するくらい入れたりする。テストの結果は良くても、実際にきちんと味わえているかは分からないと思った」

ママたちの“スリム願望”

6月30日 

「太るとカワイイ服着られないでしょ」

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ギャルママサークル「mama IS beauty」の会合に参加した若い母親たち(さいたま市で)

 細い手足。ティーン雑誌から抜け出してきたような“カワイイ”洋服――。

 早春のある日の午後、さいたま市内の公園に、19〜20歳の子連れ女性4人が集まった。「ギャルママ」たちの全国サークル「mama IS beauty」のメンバー。この日は埼玉県での「ミーツ」と呼ばれる初会合だった。

 サークルのモットーは、「ママになってもおしゃれでいたい でも育児家事は手抜きしない」。

 体重(キロ・グラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数BMIは、2人が18R5以下の「やせ」。第二子を妊娠中の2人も、妊娠前は「やせ」に該当した。1人は産後、ダイエットで20キロ減量し、4人とも「もっとやせたい」と思う。

 「太るとカワイイ服が着られないでしょ。子どもにも、『ママきれい』って言われたい」。代表の井町しほりさん(19)は言う。

“やせすぎ妊婦”の赤ちゃんは…

 「生活習慣病(成人病)胎児期発症説」。妊娠中の胎児の栄養不足が、成人後に高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす、という学説だ。

 そのメカニズムは、胎児が低栄養にさらされると、(1)脳に優先的に栄養が行き、腎臓など他の臓器の機能が低下する(2)少ない栄養で生きられる「倹約型」の体質になり、生まれた後に豊富な栄養を摂取すると体が適応できない――ため、とされている。

 冒頭のギャルママ4人は、妊娠中は10キロ以上太り、みな3000グラム前後の元気な赤ちゃんを産んだ。

 メンバーの宮内凪日(なび)さん(19)は「やせたいのはもちろんだけど、妊娠中に太るのは仕方ないと割り切ってる。子どもに栄養を与えるのが第一です。生んだら、またダイエットに頑張ればいい」。しかし周りには、妊娠中も「太りたくない」と食事制限している母親がいるという。

ギャルママたちへのアドバイス

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おしゃれなギャルママたち。「でも育児家事は手抜きしない」がモットー

 メンバーの4人とも、予想以上に「しっかりしているママたちだな」という印象を受けた。ただ、一つ覚えておいた方がいい知識がある。

 胎児への低栄養の影響は、すでに受精の時から始まるという。つまり、「妊娠が分かってから栄養をたくさんとろう」では遅いのだ。普段からバランスのいい食事を心がけること。たとえダイエットをしていても、そろそろ子どもが欲しいな、と思ったら、その時からしっかり栄養をとるようにしたい。

 では、低出生体重児が生まれた場合、成人後の生活習慣病の危険性を下げる方法はあるのだろうか。

 早稲田大学の胎生期エピジェネティック制御研究所教授の福岡秀興さんのアドバイスは、以下の通り。

1・栄養バランスのとれた食事を心がけ、ゆっくりと標準体重に近づくよう育てる(「小さく産んで大きく育てる」は間違い。早く体重を増やそうと、焦ってたくさん食べさせては、かえって生活習慣病の危険性を高めてしまう)。
2・できるだけ母乳で育てる
3・愛情たっぷりにスキンシップをはかる。
4・規則正しい生活をさせる。
5・運動習慣を身につけさせる。

 やせすぎ妊婦の問題について、福岡さんは「母親個人の問題にしてはいけない。“やせ=美徳”という風潮を社会全体が改め、国は女性の食の重要性に関する調査や教育に力を入れるべきだ」と訴えている。(医療情報部・山口博弥)

 2008年にスタートした長期連載「食ショック」は今回、食生活が引き起こす様々な身体の異変を取り上げる。

食べ物依存症?

6月29日 

最後の手段は「減量手術」

 極端な肥満で、食事制限や運動療法の効果が上がらない。糖尿病などの合併症もある。そんな人が最後に頼る手段が「減量手術」。海外で広まり、国内でも少数ながら実施されている。

 その約8割、50件前後の減量手術を毎年行っているのが、四谷メディカルキューブ(東京・千代田区)。手術方法はいくつかあるが、最も多いのが、胃の上端を小袋にして、そこに小腸をバイパスする方法だ。胃が小さくなり、少量の食事で満腹感を得られる。

 毎週、手術前や手術後の患者が集まり、互いの状況を話し合う会も開かれている。同じ境遇の仲間で励まし合うことで、健康管理への強い動機付けになるという。

 ある日の会を見学させてもらうと、手術後の患者3人が参加していた。まだ3人とも肥満ではあるが、手術前に比べて30〜60`・c減っている。26歳の女性は138`・cから100`・c。38歳の男性は162`・cから132`・c。アメリカ人の女性は158`・cから89`・cになった。

深夜のスナック菓子、コンビニ弁当…

 26歳の女性は、もともと料理を作ることも食べることも大好きだが、受験のたびに急激に太った。小学生時代は肥満ではなく、中学ではバレー部に所属していたが、高校受験の勉強を始めたころから太りだした。

 「夜遅くまで勉強するため、眠らないように砂糖入りのコーヒーやスナック菓子を食べて口を動かしていた」

 高校入学前に95`・cに到達。その後、80キロ台に減ったが、大学受験でまた太り、大学入学時には110`・cもあった。

 大学では独り暮らし。友人との飲み会が多いうえ、アルバイトで帰宅が遅い日は、コンビニ弁当を食べていた。そして大学院受験のための勉強中は、料理の時間も惜しみ、ほとんどコンビニ弁当で済ませた結果、130キロの大台に乗ってしまった。これまでダイエットに挑んだことは何度もあるが、油断すると元に戻ってしまう。

 「他の人にはたいしたことがない減量でも、胃が大きいのか、自分にはとてもつらかった」

 両親は「手術までしなくてもいいよ」と心配したが、思い切って手術を受けて満足している。以前は歩くだけでも息が切れたが、今は週4回スポーツジムに通い、ランニングマシンで2`・b走れるほどになった。

牛丼6杯、回転寿司30皿

 38歳の男性の場合も、食べることが大好きで、以前は牛丼を6杯食べたり、回転寿司で30皿食べたりしたこともあった。よく友人と食べ放題の店に行き、暴飲暴食をしたという。小学生時代も肥満ではあったが、柔道で体を動かしていた。運動をしなくなってから肥満が加速し、糖尿病になってから、手術を受けることを決めた。

 強制的に食べられなくなったが、以前の感覚はなかなか抜けない。コンビニに行くと、つい以前のように、弁当だけでなく、おにぎりまで買ってしまうという。

 アメリカ人の女性は「手術まで受けるような人は、自分で食を管理しきれない人。私も胃が痛くなるほど食べていた。アルコール依存の人と同じで、私の場合は食べ物に依存があったと思う」と自分を客観的に分析する。

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肥満患者を診察する宮崎さん(東京・千代田区の東京逓信病院で)

 肥満に詳しい東京逓信病院副院長の宮崎滋さんは「肥満要因として、運動不足はさほど影響はない。現代は過食こそが問題。コンビニで簡単に買える生活環境、油こってりの食事、間食の多さなど。超肥満の人は、パスタを2〜3人前食べたり、ファストフードをおやつにしたりと、普通の人の2倍にあたる4000〜5000`・iぐらい毎日とっている」と指摘する。

 「30代のころは、毎日3万`・i摂取していた。今は当時の食事の10分の1です」。こう話すのは、東京都国分寺市で飲食業コンサルタント会社を経営する斎藤和彦さん(50)。30代のころは150`・cを超えていたが、45歳で糖尿病になってから、減量に取り組んだ。

油を飲み、バターほおばる夢

 斎藤さんの場合、貧困肥満と正反対の環境に育ったが、「油が大好き」という点は多くの肥満患者と共通する。実家が産科を経営し、妊婦向けにおいしい洋食を出していた。

 当時は、まだ日本では珍しかったクリームコロッケやグラタン、ビーフシチュー、ステーキなどを、自分も毎日のように食べているうちに早々と食に目覚めてしまった。小学生時代から、お年玉で自分の部屋に換気扇やコンロ、冷蔵庫を買いそろえ、料理を楽しんでいたという。

 米国で作曲を学び、プロとして活動した時期もあったが、日本に帰ってからは、趣味と仕事が一致する飲食業のコンサルタントとして活躍。料理や酒に関する3000冊以上の本を所有し、メニュー開発のために自分で料理もする。30種類以上もの油を集め、どんな料理にどんな油が合うか、試しては味見したこともあった。仕事がうまくいった時は、社員を連れて夜から朝まで4〜5店回り、フルコースを食べ続けたこともあった。

 「いくら太っても、おいしさを追究したいという誘惑に負けてしまった」

 さすがに今は、そんなに食べられないが、毎日80品目以上は食べないと満足できないというグルメぶりは変わらない。食事制限中によく見る夢は、ショットグラスでコップ一杯の油を飲みほしたり、四角いバターを丸ごとほおばったりする夢だ。油には味がないが、舌ではなく、脳が直接おいしさを感じるといわれている。(医療情報部・藤田勝)

 2008年にスタートした長期連載「食ショック」は今回、食生活が引き起こす様々な身体の異変を取り上げる。

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「食ショック2010」紙面連載一覧
「身体の警告」 (くらし面)
1) 肥満 低所得ほど高率(6月29日)
2) 朝食抜く やせ妊婦(6月30日)
3) 添加物 舌の感覚鈍る(7月1日)
4) 「体に良い」飲料で虫歯に(7月2日)
5) かむ力 養成センサー(7月3日)
食ショック09:
「テクノロジーの表裏」
「農地崩壊」

食ショック08:
第1部:二階堂記者の「完全自給食」体験記
第2部:「揺らぐ安全」
第3部:「飽食のコスト」
第4部:「変わる文化と習慣」
過去の紙面掲載日

関連リンク:
農水省・食料自給率の部屋
JA・全国農業協同組合中央会
食と地域を考えるフォーラム

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